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竜の女王  作者: M.D
2170年春
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26

「でも、何故エレナ様が美姫さんと魂の結合をしたのか、美姫さんは知ってるのかしら?」

「エレナ様にもいろいろ事情があるようなのですが、私は詳しくは知りません。」

「そう。八竜王様のなされることは我々のような下々の者には分からないこともあるから、何か深い理由があるのかもしれないわね。」


(美姫さんはエレナ様の事情を知ってるんじゃなかったっけ?)

(必要であれば、エレナ様さまから説明されるはずだから、私は知らないことにしておいた方がいいと思ったのよ。)

(ワレの事情はあまり知られたくないから、美姫が機転を利かせてくれて助かったのじゃ。)

(僕にはすぐ教えてくれのに?)

(樹君はエレナ様にとって特別だからじゃない?)

(そうじゃ、樹はワレと魂の絆を結ぶことのできる希少な存在じゃからのう。それに、樹程度じゃったらワレの事情を漏らそうとしても即行で消滅させられるしのう。)

(さっきは何も言わなくて助かった。。。)


「ピアリスさんは融合者なのにどうして寮長なんかしているんですか?」

「治安維持軍にいたこともあるそうですし、夜に寮の見回りをしていたときにザグレドを見つけた、ということは寮の警備員を兼ねているとか?」

「ほぼ正解ね。この学校は魔法使いの卵を温める孵卵器みたいな役割でしょ。だから、卵を割ろうとする良からぬ輩が侵入してきても撃退できるように、戦闘能力の高い私みたいな融合者が警備員を兼ねて寮長をしている、というわけ。」

「確かにこの学校はお掃除兼警備ロボットがいる程度で、普通の学校とあまり変わらないと思っていましたが、そういう理由だったんですね。」

「それに、この学校には普通科の生徒もいるから、物々しい警備体制だと委縮してしまうかもしれないじゃない。その点、私みたいな普通のおばさんだったら、そんなこともないしね。」

「確かに、寮長が融合者で警備員を兼ねているなんて、誰も思いませんから。」


「しかし、ピアリスさんが警備員とは過剰戦力では?」

「魔法使いの子供たちは精神エネルギーが大きい割に戦闘能力は低いから、精神エネルギーを奪いたいと思っている融合者や魔獣にとっては格好の獲物なのよ。だから、対抗するためには私のような融合者が必要というわけ。」

「成程。」

「これまでは、私がいることを知って、融合者や魔獣が襲ってくるなんてことは一回もなかったけど、私ももう年だから、私だけだと対処できないことがあるかもしれないし、グレンさんも協力してくれると助かるわ。」

「美姫さんや樹君が高校に通っている間は、ワシも協力を惜しみません。」

「助かります。」


「ピアリスさんとグレンさんがいれば万全ですね。」

「そんなことはないわ。私が融合した人間は楯系の魔法使いだったから、この体だと攻撃魔法の威力が少し弱くなるのよ。だから、強力な個に対しては私たちは適切なのかもしれないけど、数が多いと周りに被害を出さないよう襲撃者を沈黙させるのにそれなりの時間がかかるから、その間に犠牲者がでないとも限らないわ。」

「そんな事が起こるのでしょうか?」

「滅多なことでは起こらないと思うから、あくまで仮定の話よ。」

「そうですよね。ちょっと安心しました。」


「今まで聞きそびれていたことがあるんだが、ピアリスはなんで人間に協力しているんだ?」

「ザグレドと違って悪魔の私が主人格を取ったから気になるの?」

「その話はもういいんだよ。」

「私が人間に協力しているのは、魔法使いの精神エネルギーの大きさにつられて壁の中に入ったまでは良かったんだけど、人間に囲まれてエネルギーの集中砲火を受けて、弱っているところを捕らえれたからね。こんなことなら、残り少なくなっていたとはいえ、壁の外側にいる人間を刈っておけばよかったわ。」

「それにはオレも賛同するな。」

「私は人間の研究者に捕らえられたから研究用に生かしておいてもらえたけど、そうじゃなかったら恨みをぶつけられて消滅させられていたところよ。悪魔が運を語るのはどうかと思うけど、運が良かったのかもしれないわね。」

「オレもグレンを見つけられなかったら消滅していただろうけど、ピアリスは人間に捕らえられるなんて、オレよりも情けねぇな。」

「人間に主人格を奪われるよりは情けなくないわよ。それに、何らかの枷ははめられていると思うし、監視者もいるようだけど、消滅するよりはましだから。」


 あたりを見回すが、当然のように誰も見つからない。


「研究用、って穏やかな響きではないですね。」

「切り刻まれる、とかだったら私も抵抗しただろうけど、人間と融合した後の経過を観測してデータをとりたい、ということで、それだったら私にも利があるから協力することにしたのよ。」

「ピリアスさんと融合した人はどういった人なんでしょうか?」

「もしかして犯罪者とかが強制的に悪魔と融合させられたとか?」

「大戦終了初期においてはそうだったと聞いたけれど、私の時には違っていたわね。魔法使いって血統を重要視しすぎるあまり、血が濃くなりがちでしょ。そのせいで自分が発生させた精神エネルギーの大きさに体が耐えられなくて死んでしまう子供もいるのよ。でも、そういう子供を救いたい、と考えた研究者がいて、私はそういう子供と融合したの。」

「過剰な精神エネルギーを悪魔に消費させることで子供を救おう、ということですか?」

「そういうこと。私は1回肉体を乗り換えているから、今は2人目ね。」

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