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竜の女王  作者: M.D
2170年春
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27

「でも、そうだとすると、人間を依り代にするだけでも過剰な精神エネルギーを消費することができるのに、どうしてその研究者は融合の方を選んだんでしょうか?」

「悪魔にとっては人間を依り代にするより融合したほうが多くの精神エネルギーを得られるから、人間を依り代にできる、ということを私を含めてどの悪魔も人間に教えなかったから、だと思うわ。」

「ひどい話のようだけど、救いもあるような、複雑な気分です。」

「みんなそんな顔をするわ。それに、今は私にも子供がいるのだけれど、自分の子供を死なせたくないという気持ちが分かるようになるなんて、人間と2回も融合したから私も変わったのかもしれないわね。」


「ピアリスさんって、お子さんがおられたんですね。」

「これでも3人の母親よ。週末のほんのわずかな時間しか会えないけど、子供たちと過ごす時間は何よりも楽しいわ。」

「寮長をされていて平日はずっと寮におられるから、普段はお子さんと会えなくて寂しくないですか?」

「会えないのは寂しいけれど、子供に会えないのは私が寮長をしているからじゃないわ。子供が魔人専用施設の寮に入っているからよ。」


「魔人専用施設ですか?」

「魔人は好戦的な性格を持つことが多いから、人間社会の中で騒動を起こすことなく生きていけるよう教育するために、小さい頃から魔人専用施設で育てられるの。」

「教育というと綺麗に聞こえますが、一種の刷り込み、もしくは洗脳でしょうな。」

「グレンさんの言うとおりよ。魔人専用施設では、人間に対して好感を抱くよう教育がなされるわ。そして、高校に相当する教育を受けた後は、大半が魔物討伐隊に組み込まれることになるから、戦闘訓練も行われるのよ。」

「そのような方法で魔人を魔物討伐隊に加えていたなんて。」

「人間に害をなす融合者や魔人と戦うのだから、魔物討伐隊は必然的に消耗率が高くなってしまうのよ。私も子供たちを死地に送り込むようなことはしたくないけど、今はまだ魔人の地位が低いからあきらめるしかないわ。いつの時代か、魔人が人間と同等に付き合えるようになるといいのだけれど。」


 そう言ったピアリスさんの表情は愁いを帯びていた。


「魔人は融合者からしか生まれないのでしょうか?」

「そんなことないわよ。魔人同士であればほぼ確実に、母親が魔人であれば血の濃さによって魔人になる確率が変わるみたいね。魔法使いと同じで、魔人の性質も母親から受け継がれるようよ。」

「魔人と魔法使いは似た者同士ってことですか。」

「違いもあるわよ。魔人は人間と比べて強靭な肉体を持っているし、全ての魔法系統の魔法が使用できるの。悪魔には魔法系統なんてないのから当然と言えば当然だけど、魔法の腕輪が必要なところは人間と同じね。」


「魔人も魔法の腕輪がないと魔法が使えない、ということは魔法の腕輪がなければ肉体が強靭な以外は普通の人間と同じなんですね。」

「そうとも言えないわ。実戦で使える強い魔法が使えないだけで、平均的な中学生程度の魔法であれば、魔法の腕輪がなくても魔法の発動が可能よ。それに、魔人は念動力も使用可能なの。」

「またオカルトちっくな能力ですね。」

「念動力はあなたたちの言うところの魔導力を操ることで物質に影響を及ぼす能力だから、悪魔なら手足を使うように意識せずに使えるけれど、才能があれば人間にも使用可能よ。」


 ここで、美姫さんがハッと何かに気が付いたようにピアリスさんに問うた。


「ピアリスさんが融合者だということを知っている人は少ないんですよね?」

「えぇ、そうよ。」

「だとしたら、ピアリスさんのお子さんが魔人になるのはおかしいと思われたりしないのでしょうか?」

「それなら大丈夫よ。私は研究所で人間と融合しているのだけれど、悪魔の力を使って過剰な精神エネルギー発生を抑制する研究の一環、という名目なの。だから、悪魔の力が卵巣にも影響を及ぼす副作用が出てしまっていることになっているのよ。」

「上手い言い訳ですね。」

「でしょ。時々悪魔のような小狡い考えをひねり出すのが上手い人間がいるのは面白いわよね。まぁ、それを考えたのは私の旦那の祖父なんだけれど。」


「ん?ということは、ピアリスさんの旦那さんも研究者なのですか?」

「違うわよ。私の旦那はいたって普通の魔法軍の職員よ。」

「??」

「旦那が小さい頃、祖父について研究所に来ていた時に私と出会って一目惚れしたらしいの。旦那の祖父や両親は私との結婚に反対したらしいんだけど、頑として聞き入れなかったらしいわ。」

「うむ。ワシも親をしたことがありますから、ピアリスの義理の両親の気持ちは分からんでもないですな。」

「でしょ。誰だって悪魔との融合者と結婚しようなんて思わないもの。私も1回目の融合の時は生涯独身で、人工授精での出産だったくらいだし。」

「そう言われると、そうな気もします。」

「だから、私が魔人の子供を産んでも、旦那は当り前のように受け入れてくれたわ。」

「そうだったのですか。」


 それから少し情報交換を行い、この秘密の会合は終了した。

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