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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
37/688

22

「私が何か?」


 美姫さんが突然現れたので、びっくりした。


「あれ?美姫さん?」

「ジュースを買いに食堂まできたら、樹君と百合子さんがお話しているから私も混ぜてもらおうと思ったんだけど、お邪魔だったかしら?」

「そんなこと――――」

「えぇ、お邪魔ね。折角樹君といい雰囲気でお話していたのに。」

「今までのどこにいい雰囲気なんかありましたっけ?」


「で、私がキレると何ですって?」


 美姫さんがドスンと僕の隣に座った。


「お邪魔だ、って言ったのが聞こえなかったのかしら?」

「樹君はそうじゃないみたいですけど?」

「まぁ、いいわ。樹君とは、美姫さんも巻き込まれた件で麗華さんたちを沈黙させたのが誰なのか、という話をしていたのよ。」


 今の美姫さんを見て動じないなんて、さすが百合子さん。


「それが私だと?」

「樹君にも言ったんだけれど、状況から考えると美姫さん以外に考えられないのよね。」

「私も気を失っていたのに、ですか?」

「そこなのよ。人間って体を守るために過度な負荷がかからないよう無意識のうちに出せる力を抑えてる、って言われてるから、あの時は美姫さんがキレて抑えられていた力を開放できた。それで力を出し尽くして気を失たのではないかと考えたのよ。」


(百合子さんって勘がするどい。)

(ありがちな考えだと思うけど。)

(それでも抑えられていた力がエレナ様を指しているなら、正解に少し掠ってはいるんじゃない?)

(力を出し尽くした、って言ってるからそれはないと思うよ。)


(ワレが抑えられていた力、とか、中二病っぽい感じでいいのう。)

(小説に書かれている、そう言った力の大半は邪神の力ですけどね。)

(ワレは邪神などではないのじゃ!失礼なことを言うにも程があることを知るべきじゃのう。)

(でも、美姫さんがラノベを読むとは思えないし、エレナ様はどこから中二病なんて言葉を知ったんですか?)

(私に隠れて変なことはしないで下さいね。)

(大丈夫じゃ。樹の記憶を見た時に得られた知識じゃから、変なことはしておらんのじゃ。)

(最悪だ。。。)

(樹君って、ラノベ読むのね。私は読んだことないから、いいのがあったら今度貸して。)

(了解。というか、話がずれてない?)


 気を取り直して百合子さんと話をする。


「それに、私がキレて抑えられていた力が開放されたんだとすると、体に過度な負荷がかかって入院しているはずですけど?」

「そうなのよ。私もそう思って、この考えを修正してみたの。」

「修正ですか?」

「美姫さんは多重人格者で、あの時は麗華さんの攻撃が引き金となって、身を守るために分裂した人格のうちで攻撃的な人格に変わったんじゃないかしら。その人格は美姫さんの能力を引き出すことに長けていて、体に負荷をかけずに麗華さんたちを沈黙させるだけの能力をもっていた。」


「私は多重人格者ではないですし、まだ話に無理がある気がします。」

「そんなことはないわ。美姫さんが龍野家分家筋ということを鑑みると、麗華さんたちを沈黙させるだけの能力はあるはずだから、この考えはあながち間違いでないと思っているの。それに、人格が変わるとその間のことは覚えていない、というのもよくあることらしいから。どう?」

「どう、と言われても、、、」

「いい考えだと思うんだけど。」


(最初のはカマかけってわけね。百合子さんって性格悪い。)

(でも、百合子さんって本当に勘がするどい。半分くらいは当たってるんじゃないかな?)

(全然当たってないよ。エレナ様は私の分裂した人格の1つ、なんて絶対ないから。)

(エレナ様の力は人間の限界なんて遥かに超えているし、美姫さんは性格が悪くないから、僕は美姫さんが言っていることが正しいことが分かるけど、百合子さんには分からないと思うよ。)

(誰が性格が悪いじゃと?)

(エレナ様の性格が悪いなんて一言も言ってないじゃないですか。)

(暗に言っておったと思うがのう。)


(でも、百合子さんは興味が引かれたことに夢中になるようだから、上手く回答しないと私まで樹君みたいに百合子さんに付きまとわれることになってしまうのは嫌かも。)

(美姫よ、ワレを無視して会話を進めないでほしいのじゃ。)


(美姫さんの言うとおりだと思うし、百合子さんだったら正解にたどり着かないとも限らないから。)

(神様と魂を結合させているなんて思い至らないと思うけど、話をそらしたほうが無難ね。)


「そういえば、百合子さんって”大砲系”なのに六条家本家筋の麗華さんに従わなくて大丈夫なんですか?」

「東京にいる限りは大丈夫じゃないかもしれないわね。でも世界は広いわ。私のやりたい研究は海外の方が研究環境が整っているから、麗華さんに従う必要性を全然感じないのよね。」

「百合子さんは東京を出ていくつもりだし、海外まで六条家の影響力は及ばないから問題ないと。」

「そういう事。麗華さんは井の中の蛙みたいなものだし、私には守るべき家系なんてないしね。それで、できれば大学から世界的に著名な教授のいるヒューストン大学で学びたいと考えて、留学に向けて準備をしているところなの。」


 話を逸らすことに成功したようだ。


「すごいですね。百合子さんのことを見直しました。」

「樹君の中で、これまでの私の評価はどういうものだったの。。。」

「頭が残念な生徒会長じゃないですか?」

「美姫さん、上級生に向かってなんてことを言うのよ。」

「百合子さんがそうさせてるんです。」


「そうだ!樹君も私と一緒に来ない?ヒューストンでの生活はちょっとしんどいかもしれないけど、不自由はさせないわよ。それに見分を広める意味でも海外生活は樹君のためになると思うの。」

「何を言っているんですか。樹君は私と東京でやることがあるんです!」

「やることって何?」


 百合子さんがニヤニヤした笑顔を浮かべていた。


「いやらしい目で見ないで下さい。それに百合子さんには関係ないことだから言いません。」

「美姫さんはああいっているけど、樹君はどうなの?」

「詳細は言えないのですが、僕は美姫さんの手伝いをすると決めているので。」

「あら、そう。振られちゃったわね。まぁ、いいわ。最初はたまに私のところに遊びに来てくれる程度で。」

「ダメです。」

「美姫さんには聞いてないんだけど。樹君、その美姫さんのお手伝いとやらが終わったら、私の研究も手伝ってくれると嬉しいわ。」

「私と樹君がやらないといけないことはそんなに早くは終わりません。」

「そんなに長く続けないといけないことって何?教えて。」

「さっきも言ったように百合子さんには関係ないことだから言いません。」


 美姫さんと百合子さんの間に剣呑な空気が漂いだしたとき、ちょうど予鈴が鳴ったので、美姫さんを促して教室に向かった。

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