風魔法と重力操作、2つあれば無敵ッポイ
飛行機で旅に出たくなった。
「ユンカー、あたしとあなた。
2人の乗った馬車を高さ100メートルくらいまで持ち上げて頂戴。
そこであたしは得意の風魔法を使って”動かない”この馬車を動かしてみましょう。」
「頼んだわ、ユンカー、上昇スタート。」
エスカイヤと2人、空の馬車に乗り込みエスカイヤの合図の元、ユンカーは心に馬車の上昇を念ずる。
2人を乗せた馬車が垂直に上昇を開始、経つこと2分。
「ギルドマスター、ほぼ100メートルです。」
ユンカーが言う。
「ユ、ユンカー、タ、高すぎるわよ、死んじゃうよ!!」
はるか下方に伯爵様が豆のよう。
遠くの景色まできれいに見える。
「ゆ、ユンカー。落ちたら死んじゃう,死んじゃう!!」
絶景を見る余裕もなくパニくるエスカイヤ。
『イヤン、ユンカー。逝っちゃう、逝っちゃう!死んじゃう、死んじゃう!!』
昨晩のレイミ(カノジョ)の悶えっぷりを思わず思い出すユンカー。
何発ヤッタか思い出せない(若い、っていいな!)
脳内ピンクモード、気のせいか少し前かがみ(笑)。
「大丈夫ですよ、昨日は2000メートルまでテストしましたから(棒)。」
ユンカーが上の空、で答える。
部下に余裕をこかれて(実際には違うが)負けず嫌いのエスカイヤ、ムラムラと対抗心に着火した。
「よ、よーし!風で海まで行っちゃうわよ!」
エスカイヤが魔力の発動で体が輝く。
そして、今まで風でフラフラと無制御に流されるままだった馬車が意思を持ったかのように北へと風を切って進み始める。
「ウ、ウワっ、すごい!」
ユンカーとエスカイヤは同時に感嘆を漏らす(ユンカーも正気に戻ったらしい)。
標高300メートルほどのアルフレッド牧場から100メートル浮上した馬車はそのままの高度で標高の低いホリデーの町へとすごい速さ(と、2人は感じた)で向かって行き、瞬く間に町を過ぎて海の上へと空中ランデブー。
つまり海面より400メートル上空をお散歩中。
はるか眼下では白い波が横一筋の等間隔に、真っ青な海面をホリデー海岸に向けて規則正しく打ちよせるのが見える。
「すごい、すごいわ。ユンカー!
もっと、もっと高さを上げてよ!」
エスカイヤさん、遊園地モード突入。
「今の重量が400キロ程なので100メートル上昇するのに2分ほどかかります。」
ユンカーがそう言って目を閉じて念ずる。
同時に馬車に発生する緩やかな上昇G。
「で、どうですかギルドマスター。
重力魔法を併用しないで、”風”だけで浮遊物を操る労力は?」
「”ラ・ク”の一言、歩いているより快適すぎ!」
高さを楽しむ余裕が出てきたエスカイヤ、ノリノリで馬車を加速する。
「ギルドマスター、いまの平行移動速度が時速48キロ、2時間で約100キロを飛びますが、直感的には一日で何時間くらい可能ですか?」
ユンカーが問う。
「そうね、ちょっとはしゃぎ過ぎた感あるけど、この半分のペースなら一日10時間、3日間くらいなら楽勝ね!」
エスカイヤが下方の海を見下ろしながら答える。
それをメモするユンカー。
「すいませんギルドマスター。方向を逆に変えてアルフレッド牧場に引き返してください。
お父様もお待ちですし、実験データも思ったより良いものが取れました。」
「ウワーッ、もっと飛びたいのに、って、それやったら次が無いことくらいあたしには分かるんだから。
ユンカーより偉いし、お姉さんなんだからねー。」
訳の分からないことを言いながら滑らかに”風”の魔法で進路を真逆に変えるエスカイヤ。
真っ青な海の上からの戻り道、はるか向こうにホリデーの町。
ホリデー川をはさんで、右手に伯爵様のお屋敷。
町の上にアルフレッド牧場、その上にミケローネ樹林。
そしてはるかかなたに、雪で白く輝くカミサマ山脈の4000メートル級の山々。
「なんて美しいんでしょ。」
エスカイヤーが思わぶつぶやきを漏らす。
「ボクは実験で必死だったので景色どころじゃなかったけど素晴らしいですね!」
ユンカーも感動している。
やがて、ユンカーたちはアルフレッド牧場で待っていた伯爵様の元に無事帰還。
ユンカーたちの帰りを待っていた伯爵様、
「ユンカー君、キミが言う通りで5000メートルの高さまで馬車が上昇出来て、エスカイヤがその馬車を横方向に移動させることが出来たら、大陸の真ん中を横切って『カミサマ山脈』の上を飛び越えて大陸の反対側、王都へ数日で着くことが可能かもしれない。」
「何点かの条件付きながら、大陸の真ん中を突っ切ることができれば、それは未知の大陸の内部を知ることにもなる。」
「ところでユンカー君、的確に距離や高さ、方角を認識しながら飛行していたようだが何かカラクリがあるのかね、それとも新しいキミの能力かい?」
馬車から降りてきたユンカーに伯爵様は問う。
あ、ユンカーのスイッチを入れちゃいました(笑)。
( -> スタート )
「ン~、魔石を動力とした電波発信機という物を冒険者ギルドの屋根とアルフレッド牧場の休憩所の屋根に取り付けてあります。」
「1つで白金貨2枚くらい(200万円くらい)、魔石込みでしますがマル優大魔石を組み込めば2年は楽勝でもちます。」
「それをボクが持っている受信機で3次元的に解析して、設定した場所からの相対的な距離と高度を認識できますので、相対的な速度もデジタル表示で知ることができる?らしい、魔道具?です。」
「ちなみにデータ分析がかなり多機能でできまして、設定(出発)時刻より帰着まで48分32秒。
全移動距離(平面)が37キロ248メートル。
海面を0メートルとして現在の高度が321メートル、飛翔最高高度が今回は764メートル。
最高移動速度が瞬間値で時速52.4キロ、平均移動速度が41キロです。」
「昨日のデータも呼び出せますよ。
伯爵様のお屋敷まではここから水平距離で7247メートル。
ギルドマスターの風魔法能力ですと、時速43キロ、10分でお屋敷まで駆けつけることが可能です。」
「失礼ながら有事のために、伯爵様のお屋敷もこちらより周辺警備可能か?も、含めまして調査させていただきました。」
「ちなみに、昨日は空中での制御がボク一人ではできませんので伯爵様のお屋敷まで歩いてデータをとらせていただきました。
気分は伊能忠敬か、マルコ・ポーロか、と言ったところですね。」
「・・・,」 (伯爵様)
「・・・、」 (エスカイヤ)
「つまりユンカー君とエスカイヤの能力を持つ人間がいたら、我が家の上空は無条件で通行可能、ということか!」
伯爵様がうなる。
「ウワ、着替え覗かれるジャン!」
そこか!ギルマス。
「仕立て屋におニューの下着、注文しとこ!」
『ずれまくってる、…』
「爆撃されちゃうジャン!」
そこだよ!伯爵様(笑)。
「エスカイヤ、魔術は君の方が私より詳しいはずだ。
問うが、ユンカー君のように浮上に特化して空中を浮遊する能力というのは実際あるのかね?」
「父様、大魔導士様でもせいぜいが父さまの3倍程度、浮遊時間にしたら5分?くらい?」
エスカイヤも当惑気味。
「何より、ユンカーは多分、魔力ないですよ。」
エスカイヤにはユンカーの魔力が全く感じられない。
「えー、ギルドマスターの言う通り。
ボクには全く魔力はないですよ。」
「大妖精様のお墨付きです。」
ユンカーが、さも当たり前のように言う。
『こいつ、また新しい引き出し(大妖精様、ってなんだよ?)開けやがった!』 (エスカイヤ)
外出制限です、今はおとなしく(今はな!)




