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51自分の家で目覚めた愛理

「あれ、私は。白亜が目をつむれって言っていて。それから……」


 目を開けた愛理がいたのは、見覚えのある自分の部屋だった。あたりを見渡すが、愛理以外に人はおらず、しんとしていた。


「愛理、具合はどうかしら?お菓子とお茶を持ってきたけど」


 愛理の疑問を解決する手がかりを持った人物が、部屋に入ってきた。愛理の母親だった。母親は、愛理が目覚めているのを見るや否や、愛理を抱きしめてきた。頭からぎゅうぎゅうと胸に押し付けられて苦しいほどだ。


「お、お母さん、く、くるしい」


 愛理が何とか声を出して訴えると、ぱっと解放する。ぐったりとした愛理を見ながらも。母親はどこか安心した様子だった。


「お、お母さん、私がここに居るのって……。美夏や大河は?」


「あなたたち、田辺先生に感謝しなさいよ。田辺先生があなたたちの迎えに来るように頼まれなかったら、大変なことになっていたかもしれないのよ!」


 母親から解放された愛理が、自分たちが置かれている状況を確認する質問をすると、母親が興奮したように話し出した。どうやらあの後、田辺が母親に連絡をして、母親が愛理たちを自分の家に運んだらしい。


「美夏は自分の部屋にいるし、大河君も自分の家に戻ったから心配いらないわ」


 母親は二人が無事に家にいることを説明してくれた。そのことにほっとし、愛理は母親の話を聞くことにした。




 計胡は、愛理たちが最近起きている、児童連続不審死の被害者にならないかと、ひやひやしながら毎日を過ごしていた。嫌な予感がしたのだ。被害者の遺体の様子が自分の従妹が亡くなった時とよく似ていた。まったくの偶然とは思えなかったので、事件についての情報を集めて、どうにか被害に遭わないように気をつけようとした。


『この事件って、なんか、被害者の子たち、老化していたんだって』


『マジか。それって、もしかして、時間売買が原因だったりして。なわけないか。時間売買は未成年禁止だっけ』


『時間を取られすぎたから老化って、安直すぎかも。でも案外それが原因だったりして(笑))』


 事件のことを調べていくうちに、SNSである書き込みを見つけた。学生か社会人か、誰かもわからないが、彼女たちがつぶやいていた内容に思い当たる節があった。


「従妹も、今回の被害者も、どちらも死因は時間を取られすぎての急激な老化が原因だとしたら……」



「プルルルル」


 そんなことを考えていると、自宅の電話が着信を告げた。慌てて受話器を取ると、電話の相手は、愛理たちが通う塾講師の田辺からだった。ひどく慌てた声で、計胡に指示を出す。


「もしもし、朱鷺ですけど」


「今すぐ、公園に来ていただけますか。愛理さんたちを迎えに来て欲しいのですが」


「わかりました。すぐ向かいます!」


 愛理たちの身に何かあったのだろうか。公園に娘たちを迎えに来るように指示をすると、田辺からかけてきた電話にも関わらず、あっさりと切られてしまった。詳しい状況を知らされないまま、ただ迎えに来いという謎の電話。それでも、田辺の切羽詰まった声を聞いて、行かない理由がない。計胡は愛理たちを迎えに行くために、車を公園まで走らせた。


「こ、これは一体……」


 公園の駐車場に車をとめて急いで中に入ると、目をそむけたくなるような光景が目に入った。公園の中央には、二つの塊が横たわっていた。人型を取ったものが二つ、折り重なっていた。塊はひどく損傷していて、片方にはナイフが刺さっていた。周りには赤黒い液体が広がっていた。そこから漂うにおいは鉄くさく、それはまるで。


『ああ、やっと来たか。遅いぞ。待ちくたびれて、僕自ら迎えに行こうかと思っていたよ!』


『この女にお前の興味が惹かれたのか?こいつも普通そうに、いや、違うな。お前の周りの空気は……』


「白亜と、あなたは?」


 目の前の塊について考えることを拒否した計胡は、白亜の隣にいる少年について尋ねる。もっと尋ねなければならないことはあるが、脳がそれを拒否した。


『目の前のこのやばい状況より、オレのことが気になるとか、だいぶ頭いかれてるな。オレの名前は黒曜。白亜の兄弟みたいなものだな』


「白亜と同じ存在……」


『それで、今の状況を優しいオレが説明してやると、目の前のこれは、推測通り、人間の遺体だ。見てわかる通り、二人は争って互いを傷つけ合い、最終的に殺し合いになって双方、共倒れだ』


 計胡は黒曜の説明を聞きつつも、一番大事なことを考えていた。自分は愛理たちを迎えにやってきたのだ。それなのに、目の前には殺し合いをしていたという元人間の塊と、白亜と黒曜の人外の存在しか見当たらない。


「田辺という男から電話があったんだけど、彼はどうしたの?愛理は無事なの?」


 自分がどうしてこの場所に来たのか、当初の目的を思い出す。途端に不安でいっぱいになる。急に蒼くなった計胡の様子に白亜がにやりと笑った。


『愛理が心配なのはわかるけど、面白いよね。人間はほんと、いろいろな表情をする。ああ、怒らないで。ちゃんと無事だよ。言ったでしょう?僕は君の娘を守るって。その証拠にほら』


 白亜が指さす方向に目を向けると、そこには三人の子供がベンチで眠っていた。ベンチに座って三人仲良く肩を寄せ合って、すやすやと寝息を立てている。


「よ、かった」


 娘たちの無事な様子に、緊張の糸が切れてしまったようで、計胡はへなへなと全身の力が抜けてしまい、その場に座り込んでしまった。

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