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25家に戻ったはいいが

 白亜は、家にたどりつくまでずっと三人の周りをうろついていた。愛理の家の前に三人がたどりつくと、今度は術の解き方を教えてくれた。


『解き方は簡単。また目をつむって、時間が戻ることを想像したらいい。想像が終わって目を開ければ、元通りの世界だよ』


 そんな簡単に時間が戻せるのかと疑問に思ったが、時間を止めるのも簡単だったので、戻し方も簡単なのだろうと思うことにした。愛理は再び目をつむり、時間が戻った時のことを想像した。目をつむった瞬間、愛理の身体はまた白く光り始めた。愛理が移動中、ずっと身体は光っていたが、目をつむった瞬間、光は一層まぶしくなった。


「これでいいかな」


 ゆっくり目を開けると、光は徐々に薄くなり、愛理があたりを見渡す頃にはすっかり消えていた。




「美夏、大丈夫だった?学校に迎えに行こうかと思っていたのよ。またあなたに何かあったらと思うと心配で」


 ばたんと玄関のドアが開かれて、血相を変えた母親が飛び出してきた。美夏の姿を一目見るなり、安心したのか涙をこぼし、美夏に抱き着いた。


「お母さん!」


「本当によかった。学校から電話があったときは、美夏が事件に巻き込まれていないか心配で心臓が止まるかもしれないと思ったわ」


 美夏も学校の異常な雰囲気から解放されて安心したのだろう。ほっとして気が緩んだのか、涙を流して母親の抱擁を受け止めた。



「あのう、俺たちもいるのですが」



「あら、大河君。あなたもいたのね。愛理もいたの」


 大河が恐る恐る愛理の母親に声をかける。その声で初めて美夏以外の人間がこの場にいることを認識したようだ。大河の顔を見て、愛理の顔を見る。愛理の顔を見るなり、母親は急に怒り出す。


「愛理、あなたは美夏のお姉さんでしょう。どうして、学校が危険だってわかった時点で戻らなかったの。美夏は記憶がないから、私たち家族が気にかけなければいけないの。わかるでしょう!」


 愛理が学校の異変に気付いたのは、すでに学校に着いた後だった。携帯電話を持たない愛理に、どうやって学校の異変にすぐに気づけというのだろうか。理不尽にもほどがある。母親と愛理の会話に文句を言おうとした大河を止めたのは、新たな人物だった。


「愛理のお母さん、それはいいす」


「すいません、うちの大河が迷惑をおかけしましたか」


「母さん!」


「大河、様子が見たいからって、勝手に学校に行くなんて。すいません。うちの子にはしっかり言い聞かせますので、今日はこの辺で」


 大河の母親は、大河を自分の家まで引きずっていった。残された愛理たちも家に入ろうかという母親の提案に従い、家の中に入った。母親が出てくる直前に白亜は姿を消したので、母親に白亜の姿を見られることはなかった。




 大河と別れ、愛理たちは家の中に入ったが、母親はよほど妹の美夏の様子が心配だったのか、リビングに着くまでずっと美夏に寄り添っていた。そんな様子はすでに慣れたもので、愛理は特に気にすることはなかった。


『事件にあったとはいえ、身体の傷も跡が残らずに治った。記憶の方はまだ戻らないが、それでもそこまで妹を心配する必要はあるのか?』


 愛理の頭の中に白亜の声が響く。その理由を愛理は知っているが、白亜にはあいまいに答えを濁していた。


「さあ、私よりもかわいいからじゃない?ほら、私って、年の割にかわいくないじゃない。その点、美夏は年相応か、それ以下の精神年齢だから、手のかかる子の方がかわいいとか言うでしょう」


『そんなものか。人間とはわからないものだね』


 小声で白亜と会話しながら、愛理は学校が今どんな状況か知りたくて、リビングにあるテレビに電源を入れた。




「速報です。小学校で児童が不審死しているのを、登校中の児童が発見しました」


 さっそく、テレビでは愛理の学校ことがニュースとして取り上げられていた。大河には、結局詳しい話は聞けなかったが、テレビで詳細を知ることができた。テレビにくぎ付けになっていた愛理は、背後の母親の存在を忘れていた。


「プツン」


「なっ」


「テレビなんてつけないで頂戴。美夏に悪影響を与えてしまうでしょう。さっさと自分の部屋に戻って勉強でもしていなさい!」


 母親がいきなりテレビの電源を切ってしまった。突然の母親の行動に、つい、愛理は怒鳴ってしまった。


「どうして私の邪魔をするの!」


 愛理に急に怒鳴られた母親は一瞬、何を言われたのかわからず、ぽかんとしていたが、意味を理解すると、負けじと怒鳴り返す。


「邪魔なんかしていないわ。さっさと美夏のためにも部屋に戻りなさい!」


「そんなに私が嫌なら、こんな家、出て行ってやる!」



 怒りがたまっていた愛理は、無意識に家から飛び出した。家を飛び出して、道路を歩きながら徐々に冷静になるが、愛理は家に戻るつもりはなかった。さすがに夜には家に帰らなければとは思ったが、なるべくなら家に居る時間を減らしたかった。


『愛理も怒ることがあるんだね。ちょうどいい。現場に行って事実を確認してみる?』


 愛理の周りに誰もいないことを確認したのか、白亜が愛理の前に姿を現した。


「そういえば」


 愛理はふと、ポケットから塩の入ったお守り袋を取り出す。母親からいつも持っているよう言われているものだ。ランドセルにいつも入れているのだが、何かあったらと思って、家を出るときに持ち出したのだった。これも無意識に行っていた行動で、自分の行動に笑ってしまった。


「白亜はなぜ、私のそばにいるの?塩の管理は全てお母さんがやっているのは知っているでしょ。私は塩に手を付けたことがない。それなのに」


『母親には力があるが、塩を清らかにするだけだ。それだけなら、興味の対象にはならない。その点、愛理はそばにいると面白い。それで、現場に行くのか行かないのか」


 白亜は、愛理の質問にあいまいに答えると、この機会に学校に戻らないかと提案する。


「家を出てきてやることがないし、真実を知りたいから、行きたいのはやまやまだけど、あれから時間が経っているから、学校に行っても、もう片づけられていると思うよ」


『ふむ、それならこれからどこに行く?』



 愛理はどうすれば今朝、学校で起きた事件の真相を知ることができるのか考える。学校はすでに片づけられていて、マスコミでいっぱいで近づくこともできないだろう。だとすると、警察か。しかし、警察に行ったところで、事件のことを詳しく聞いても教えてもらえないだろう。子供に教えるような内容でもないはずだ。



「百乃木さんの会社に行こうかな」


 ぽつりとつぶやいた言葉だが、愛理は自分で発した言葉にいいアイデアだと思った。昨日の塾で、田辺からもらった紙切れに百乃木に関係するようなことが書かれていた。会社の場所は知っている。ちらと白亜を見ると、白亜も彼のもとに行く頃に異論はなさそうだった。


「でも、今までは車で行っていたんだよね。私はどう見ても小学生で、そんな私が昼間に外をうろうろしていたら不審がられる」


『だったら、電話してこちらに来てももらったらどうだ?』


「電話がないよ、ああ、確か公園に公衆電話はあったかも」


 愛理は自分のスマホを持たされていなかった。両親が買い与えてくれなかった。愛理は別段不便を感じていなかったが、美夏は欲しがっていた。


 さっそく、公衆電話がある公園に向かう愛理たち。その様子をじっと物陰から観察している姿があることに愛理は気づかなかった。


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