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そしてこの日々は永遠に

「んあー」


 食事が終わってから数十分、遥はルベウスの部屋でルベウスと翠に挟まれて。

なんとも気の抜けた声を発していた。

それというのも全て、ルベウスと翠の二人が延々と肌蹴られた遥の腹部を摩っているからだ。

腹部と言っても勿論へそより上で、どちらかと言えば鳩尾に近い方であるが。

適度な運動と適切な食事によって程よく脂肪が乗った女性らしい薄い筋肉の上を、ひたすらに摩る二人。


 そんな、くすぐったい状態が遥に声を上げさせるのだ。

こんな具合に無防備な遥の両頬には時折思い出したように左右から。

バラバラのタイミングでキスが落とされる。

その度に遥は、んふふ、と鼻から笑いを漏らしてくすぐったそうにするのだが。

そういった姿も遥の腹部を撫で回す夫と妻は楽しみらしく、それが止む気配は無い。


「二人ともずっとこれ続けてるけど、んあ、楽しいの?」

「ハルのお腹はいつまでも触っていたいですよ」

「遥ちゃん、遥ちゃん、遥ちゃん……」

「あ、ダメだー。翠ちゃん完全にトリップしてるー」


 とうとう撫でるだけで足りずに、遥の腹部に頬ずりを始めた翠の頭を、遥は撫でながら言った。

そんな遥にルベウスは問いかける。


「ミドリのこれはどういう事ですか?」

「んー、えっと、私を触るのに夢中になって我を忘れているって言うかー。その内普通に戻るから」

「そうですか。では遠慮なく私も続けますね」

「あっ。ルベウス様も頬ずり……」


 胸と臍の狭間を柔らかな頬肉で擦られて、遥の顔に紅が差す。

そして、時折その部位から水音がし始める。


「ル、ルベウス様。お腹キスはダメ。ダメだよー」

「いいではないですか。もしその気になったらミドリと二人でたっぷり可愛がってあげますよ」

「うっ、うぅー」


 紅く染まった頬を両手で抑えて隠す遥を、ルベウスと翠の二人は存分に味わう。

それが終わる頃には遥のお腹にはいくつもキスマークが付けられ、遥はちょっとぐったりしてしまった。


 遥のそんな様子を見て今度はルベウスと翠が示し合わせて、遥の身体の下に自分達の半身を入れて持ち上げる。


「ほあー!」


 その結果、遥の顔は自分を持ち上げるルベウスと翠の柔らかいものに挟まれる。


「はふー……極楽だよー」


 ぽよんぽよおんと弾む柔い物体の間で顔をぺちぺち動かす遥。

彼女の顔がふんわり触れるたびに、ルベウスと翠は遥の頭を撫でた。

数十秒、それを繰り返してからほんわかと目を瞑っていた遥は眼を見開いて叫んだ。


「はっ!なんか今、私女じゃなくておやじになっていたような気がするー!」

「そんな事ないですよ」

「大丈夫よ遥ちゃん。遥ちゃんは可愛いから」

「そうそう、可愛いですよハル」

「可愛い可愛い」

「可愛い可愛い」

「むぁー!可愛いコールやめてー!20歳前の女にするコールじゃないよー!」

「ふふ」

「うふふ」


 柔らかい体の上で苦悶にのたうつ遥の姿をルベウスと翠は楽しむ。

身悶える姿もまた可愛いと感じているのだから。

自分達の身体の上でジタバタ暴れる遥の重み。

身体的に優れているルベウスはともかく、翠は結構辛いはずだが、彼女の顔には笑顔がある。

彼女の愛は身体を潰そうとする重みですら、遥との触れ合いという喜びに変換しているようだ。


「遥ちゃん重いわ」

「お、重い?どいた方が良い?」

「嘘。本当はこの重さがいいの。遥ちゃんに潰されてると、なんだか遥ちゃんの物になったみたいで……」

「ちょっと倒錯気味だねー翠ちゃん」

「私をおかしくしたのは遥ちゃんなんだから、責任取ってね?」

「はーい」


 翠と遥がじゃれあい、遥が翠の胸の上に頭を置いたのを確認してから。

ルベウスもそっと動き出す。


「翠にばかり構っていないで私にも構ってくださいハル」

「へっ、いや無視してたわけじゃ……」

「いえ、いいんです。ハルが振り向いてくれないなら振り向かせるだけですから」

「ちょっとルベウス、何をするつもりなの?」

「まぁ、その。ハルも触れているわけですから私もですね」


 そういいながら、そっと空いている左手で遥の太ももに触れ始めるルベウス。

初めの内は外側を摩るだけだったその手は、徐々に位置を内側へと移していく。


「あっ、ルベウス様ー?」


 思わずルベウスの顔を見る遥のリアクションに、ルベウスはくつくつと笑う。


「ふふ、良い感触ですよハル」

「そうじゃなくてー。そういう所へのタッチは……」

「何か問題ありますか?無いですよね、ミドリ」

「そうね、何も問題ないわ。だから、私の太もも触って遥ちゃん」

「翠ちゃんまで!」

「今日のハルは私達に遊ばれるんですよ」

「そうだよ遥ちゃん。遊ぼう」

「ふわぁ……」


 ルベウスと翠の執拗ないたずら、ルベウスの手はきわどい所まで入り込んでいて、翠の手は遥の手を自分の足の付け根に導く。

その行為に徐々に遥の顔に赤みが差していく。

そしてちらりと遥が二人の顔を見ると、そのいたずらは潮が引くように止んでしまった。


「あー。なんで……はっ」


 つい残念そうな声を出してしまった遥に、ルベウスと翠は満面の笑みで囁く。

それは迂闊な行動を取ってしまった若い鹿を追い込んだ狼のようなチームプレイだった。


「どうしましたハル。今、何かを催促されたような気がするのですが」

「遥ちゃん。我慢できないなら良いんだよ?」

「が、ががが、我慢とかわかんないし!私はなんともないしー!」


 大人の女とはとても言えないリアクションで跳ね起きた遥は、ルベウスの上を横切って二人の上から降りようとする。

だが、まあまあとルベウスと翠に身体を押さえられて再び二人の間に挟まる。

今度は翠が上、遥が中、ルベウスが下、というサンドイッチ状態で。


「うー!苦しいー!」

「遥ちゃん。重いかしら」

「そ、それは言わない。苦しいー」

「それは言っているも同然ではありませんか?ハル」

「ぐ、ぐむー!」


 ぎゅうぎゅうと柔らかい身体に挟まれながら遥はなんとか抜け出そうともがく。

しかし、ルベウスと翠は遥の身体をつかんで放さない。

こうなるとさすがに遥も少しイラっと来たのか、声を上げる。


「もー!怒るよ二人とも!」


 すると二人はパッと態度を翻して遥を開放した。

そして揃って遥の頭を撫でながら宥めにかかったのだ。


「ごめんね遥ちゃん。ちょっと調子に乗りすぎたわ」

「すいませんハル。そんなに辛かったですか?どこか痛い所は?」


 こんな風に幼い子供をあやすようにされてしまえば、一応大人の女に近づきつつある、と本人は思っている遥は強く出られない。

ぐむむ、と思いつつも胸を張ってこういうのだ。


「だいじょーぶ。私、気にしてないから。ちょっと苦しかっただけ」


 そんな精一杯の虚勢を張る遥が、また二人にもみくちゃにされるのにそうは掛からなかった。

遥はそんな生活がずっと続くと信じていたし、実際その通りになった。

3人、遥と翠が寿命という生物ならば逃れられないものに捕まるまで、確かにその日々は続いたのだ。




 後は少し世界の事を記そう。

2457年、異世界への渡航船の完成によりアウターワールドアドベンチャーの機運は最高潮に達した。

各種企業が我先にと異世界へと乗り出し、その先にある利益を得ようとした。

無論、政府もこの流れに乗り、様々な黒い噂を作ったりもしたし、その内のいくつかはジャーナリストによって事実として暴かれたりもした。


 まず、ゲームの世界での能力を引き継ぐ事を夢見たアウターワールドドリーマーだが、実際に異世界に渡航することが出来るようになると一時的に数を増やした。

だがその現象の引き潮も速やかなものだった。

単純に異世界に渡航しただけでは遥のようなゲーム内能力の獲得は行われなかったのだ。

一時はルベウスのような力ある存在が神に供物を捧げて召喚を行う事でそれができるのでは、という説が有力になり、自らを被召喚者にしようとする者も現れた。

しかし、そういった世界にはまさに神なる者が存在するのだ。

そういった世界では遥達の世界の人間が横暴を働こうとすれば、科学を超えた理で罰を与え、酷くなれば科学で超えられるはずの世界の壁を超常的な力で閉ざした。


 そういった経緯で学習したこの世界の人々は、なるべく温和な異世界との接触を覚えて行った。

それは異世界の人々の生活によくも悪くも影響を与え、宇宙空間以上に人間の生活の場を広げていった。

今では異世界渡航船の定期便で、あちらからもこちらからも人と物資が活発にやりとりされるようになった。

旧来のゲームにおけるモンスターと呼ばれるような存在のペット化も行われた。

その危険性から、異世界生物の飼育に関する法案がまとまるまでは表向きにはそんな物は無い扱い扱いだったが、世界外外来生物問題が起きたりもした。


更に2598年。

ルベウスは自らの出身世界へと向かった。

既に現世に遥はおらず、彼女の遺した小説の全ても読み終わった。

ルベウスに150年近く、たっぷりと楽しみを与えた書物の中で楽しんでいる間に彼女の故郷も見付かったのと、すでに自分と遥、そして遥と翠の子孫も自立している事が彼女にその旅路を選ばせた。


 彼女が故郷に戻るのは最後の祈りを創造神に捧げる為だ。

ルベウスは最後に残った心臓を供物に来世という巡り来る次代での遥との再会を願った。

彼女の寿命はまだ残っていたが、遥と翠いう2つもの替えの効かない歯車が抜け落ちてしまった。

ルベウスはそれを克服しようとした。

祈祷魔法で最後の心臓を捧げ、残った遺体を美しいまま創造神に召し上げられる供物とすることによって。

どんな世界で、どんな環境かも分からない、あるいは知的生命体ですらないものに生まれるかも知れない、先の見えぬ道を歩もうとするルベウス。

そんな彼女の魂の一途さを彼女の世界の創造神は愛した。

故に、その請願は聞き届けられた。

これが、遥とルベウス、そして翠の物語の生と死を超えた交わりの始まりの終わり。


 こうして、一人の少女は異世界との奇跡と邂逅を果たした。

1人の少女と、1人の竜人のゲームを介した交差を経て、少女の現実で1人を加えて3人は出会いと別れを繰り返し、幾たびも出会い続けていく事になる。

それが異なる世界を知らしめ、静かに現世を去った彼女達の物語。

世界など関係ない、彼女達だけの物語。

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