第2部 2.5章 あと卯月
記号に囲まれた記憶のなかで、ハジの最後の後ろ姿が眼の前に浮かんでは消えた。諭旨退職という言葉をむやみに検索する俺。記号のメッセージの残響に理解が追いつけない。届きそうなぼんやりした輪郭の姿の奴の手から四角に折りたたまれた紙がみえてきた。「痛っ」頭に軽い衝動を感じる。
折りたたまれた何か。記号がゆっくりと変容していく、もう一度、処分説明書を頭から繰り返し眺める。 何かの姿は顕れてくる。それは言葉になってくる「いかさまじゃん、・・・これ」一瞬息が詰まり、ためらいがちに再度言葉にした。
「このことは、」と、頭に、心に文字が囁き始め、「諭旨退職となる事態」軽いめまい。
「が生じた一因と・・・なった」
俺はボロボロの紙が示しているその記号をでたらめなメッセージとして飲み込んだ。で、嘔吐もひとつ。
鼻から空気がゆるやかに流れ込んできて、頭の靄がじょじょに薄れてきた。その処分説明書は、俺をはめるための記号が細工されている紙・・・そんな思いが沸き起こる。「た、確かめてみるしかない。」
法律相談をしようと思うと妻に告げると、しばらく考えてからこう言った。
「そうね、減給分の半額でも戻ってくれば安月給の足しになるのかしら」
俺が違和感を感じた思いも、案外と、そんなものなのかもしれなかった。
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