いけるか?いける!
コズ君にはギルドへ行って報告してもらう。高位魔獣が出たかもしれない事、孤児院の子供が1人森へ入ったかも知れない事、僕が森へ行った事。
よろしくね。
僕は1人、もといラス君、メルちゃん、モル君、テル君、ルルちゃん、クウちゃんと共に森へと入った。
確かにいつもの森とは違う。空気が重い。
虫の鳴き声もなく動物の動く草ずれの音もない。
まるで僕しかこの世にいないかのようだ。森の精霊さん達に協力してもらってミナちゃんの居場所を探して貰っている。
ルルちゃんに精霊さんから報告があったようだ。
「1人、女の子があっちにいるって!!」
足に身体強化をかけて走る。スピードを上げて一刻でも速くたどり着くように…。
間に合え!間に合え!
祈るような気持ちで無心で森を駆け抜ける。
いた!!
「ミナちゃん!!」
「アル君?どうしたの?凄い汗!」
「ミナちゃんこそ!こんな森の深い所に1人で入っちゃダメだよ!」
「ごめんなさい。熱冷ましの薬草を探してたらいつの間にか迷っちゃったの。」
「今日はこの森には入らない方が良いよ。さあ、帰ろう。危ないから僕と手を繋ごう。決して1人で走ってはいけないよ。」
僕はミナちゃんが怖がらないように優しく話す。
早く…、早くここから出なければ。
嫌な予感がする。首の後ろがザワザワと警告を発している。
クウちゃんにミナちゃんの護りをお願いして手を繋いで歩き出す。
「ミナちゃん、クウちゃんが護ってくれるから一緒にいてね。」
「うん。クウちゃんよろしくね。」
しばらく歩いていると後方から物凄い圧を感じる。木々が踏み倒される音が聞こえる。
来たか!
僕はミナちゃんを抱きかかえ、足に身体強化をかけて走り出す。
間に合わない!このままミナちゃんを連れて戦えるか?!ミナちゃんを抱えたまま結界を発動すると同時に左側へと飛ぶ。。
先程までいた所の植物がドロドロに腐っている。
何だ?あれは!強い穢れを纏った魔獣か?
視線を上に上げると、そこにいたのは黒い穢れを纏い、吐く息、自身に触れた者全てが穢れ腐り落ちる呪いの獣だった。
でかい…。ハクエンと同じ位の大きさだ。
ミナちゃんは衝撃のあまり声も出せず身動きも出来ないようだ。
良かった。申し訳ないがパニックになり暴れられるよりやりやすい。
「ミナちゃん、クウちゃんがミナちゃんを護ってくれる。決して大きな声を出さないで。必ず護るから。」
声にならず返事も出来ないようだ。
僕を掴む手がカタカタ震えている。
だよねぇ…、いきなりこんなのと出くわしたらこうなるよね…。
予備動作もなく獣が襲いかかるが、僕の結界に阻まれその爪は届かない。しかし結界にヒビが入る。
クソッ!ミナちゃんを抱き抱えているため片手しか使えない。
結界を張り直し右手を上げる。周りに無数の青い炎が出現する。炎を極限まで圧縮し殺傷能力を高めたものだ。
「くらえ!」
無数の炎が獣を貫き焼き尽くすように飛んでいく。
「グォォォォ!!」
何発かが獣を貫くと獣は雄叫びを上げ身をよじる。
身に纏わりつく炎を体を震わせ弾き飛ばす。
…、赤い血?やはり魔獣ではない?
僕らは再び後ろへ飛び去る。穢れを含んだ獣の血が辺りを腐らせる。
どうする?殺せるか?
「兄上!!」
後ろからギルの声がする。
…え?なんでいるの?
「来ちゃダメだよ!!危ないから来ちゃダメだ!」
僕の願いは届かず、隣にギルとウィル君とアレク君が並ぶ。さらに後ろには漆黒の風とクラシコの絆のメンバーが走り込んで来た。
「なんで…?危ないのに!」
「そんな危ない所に兄上だけ行かせる訳ないでしょう!っていうか行かないで下さい!誰かに声を掛けて下さい!!」
ギルに怒られる。
「そうだぞ!コザの坊主に話を聞いて驚いたぞ!
こうゆう時は誰かに声を掛けかけるもんだ。」
サイさんにも怒られる。
ミナちゃんをエルさんに預け後方へ待機してもらう。
「あれは何だ?魔獣か?」
ダンさんが聞いてくる。
「いいえ、魔獣ではないようです。血が赤い。
穢れを纏った獣のようですが体に触れたり、体液に触れたりすると腐り落ちるようです。あれを見て下さい。」
獣の周りの木々がドロドロと腐っている。
息を荒くした獣がこちらを向く。
さて、どうするか…。
頭上に影がかかり、直後ハクエンが降り立つ。
「アル、あれは聖獣だ。永きに渡り穢れに触れ続け穢れに取り込まれた聖獣だ。何とか穢れを祓えないか?あれにはまだ役割が残っておるのだ。」
う〜ん…、ならば殺さない方向で行こう。ギリギリまで弱らせてから穢れを祓って回復させれば良いよね…?
この人数ならば、いける!!




