緊急事態!
コズ君達からの尊敬を奪われた屈辱の日から、早1か月。あの後も孤児院へ行くと変わらず仲良くしてくれている。嬉しい。
あの冒険者は変な事を吹き込まなかったようだ。
今度ちゃんとお礼言っておこう…。
今日もコズ君達と冒険者ギルドへ来ている。今日はアレク君とシロガネも一緒だ。
慣れてきたようなので今日は魔獣の討伐依頼を受けてみる事になった。
僕は手を出さず見守り係。
ギルドへ行くとあの時の冒険者パーティーがいた。
クラシコの絆っていうBランクパーティーだ。口と態度が悪くて誤解されやすいけど男気があって評判の良いパーティーらしい。
あの時も僕に絡んだんじゃなくて、知らない子達を連れてるから心配して声掛けてくれたらしい。
あれで悪意がなかったの?!分かりづらいなぁ…。もう…。
「こんにちは、クラシコさん達。今日は休息日ですか?」
「何だよ、クラシコさん達って…。俺はリーダーのサイ、こいつはリヤ、でこっちがランだ。向こうで職員と話をしてるのがディーだ。
今日魔獣討伐へ行くのか?
森がいつもと違うから今日は止めておいた方が良いかも知れないぞ。」
「森が違うって?何かあったんですか?」
「ああ。森が静か過ぎる。魔獣が出てこないんだ。まるで何かに怯えているように…。
こんな時の森には初心者は近付かないほうが良いぞ。」
へぇ…、冒険者と仲良くしてると色々教えてもらえるんだなぁ。
でも何があったんだろう…。
今日も一緒に来てくれているラス君に聞いてみる。
「ラス君、何があったか分かる?」
「ちょっと待ってて!聞いてくる!」
ラス君は外へと飛び出して行った。
う〜ん…、そういう事なら今日は中止した方が良いかもなぁ。
「コズ君達、今日は止めよう。先輩冒険者がこう言うって事は何かがあるんだと思う。先輩達の勘を信じてまた今度にしよう。また付き合うから。」
コズ君達はクラシコさん達に懐いてるのもあってか素直に聞き入れてくれた。
皆で一旦孤児院へと帰る。
「あっ!コズ!!ミナを見なかった?いないのよ!!」
「どういう事だ?あいつはいつも畑にいるだろ?」
「いないの!昨日からアンが熱を出してて熱冷ましの薬草を探しに行ったのかも知れない!!
薬草園の熱冷ましはまだ使えないから…。」
ザワザワと胸が騒ぐ。もしかして…、まさか…。
「メルちゃん!この辺りを探してもらえる?」
「分かったわ!待ってて!」
少し経つとメルちゃんが戻って来た。
「この辺りにはいないわ。畑の精霊に聞いたらやっぱり熱冷ましの薬草を探しに行ったみたい。」
アレク君の顔が強張る。
「アル兄ちゃん!俺、森に行ってくる!
もしかしたらいるかも知れない!」
コズ君が走り出そうとするがダメだ!!
「ダメだよ!さっきの話を忘れたのか?森がおかしいって、近づくなって言われていただろう?」
「なら、どうするんだよ!放っとくのか?魔獣に襲われるかも知れないのに?
俺、嫌だよ!あいつも家族だ!」
コズ君が僕を睨む。
「どういう事?森がおかしいって何?」
コズ君が先程聞いた話を聞かせると、悲鳴を上げて狼狽える。
「先生に言ってくる!!」
少しするとラス君が戻って来た。
「アル、森に逸れの高位魔獣が出たらしい。他の魔獣達はそいつに怯えて息を潜めているらしい。」
コズ君がハッとしてこちらを見て、覚悟を決めた顔をした。
「ダメだってば!君は皆を守るんだろう?
僕が行って連れ帰ってくるから君達はここで待っていて。」
「でも!…でも…、強いんだろう…?アル君がケガしたらどうするんだよ…。」
本当にこの子は優しい子だ。
この子が動くのはいつも人の為だ。
「大丈夫。僕だって先輩冒険者だよ。そして君より強いんだ。
必ずとは言えない。でも無事に連れ帰って来れるよう頑張るよ。
だから君達は待っていて。」
頷いてくれたのを見届けてから後ろを振り返る。
「アレク君、申し訳ないけどそういう事だから今日は一緒には居れない。帰ってクレイス様に報告してくれるかい?そちらには被害がいかないとは思うけど注意するに越したことはないからね。」
アレク君は少し考えてから頷いてくれた。
「シロガネ、君もハクエンの元へ行っておくれ。
念の為聖獣さん達にも警告してもらえると助かるよ。」
シロガネは静かな目をこちらに向けて、
「分かった。僕は一度帰るね。ケガしちゃダメだよ!
アレク、早く!早く行くよ!!」
アレク君を連れて帰ってくれた。
良かったぁ〜。これで誰もケガしなくて済む。
じゃあ僕は今から行くとするか!




