その後の顛末。
今回後ろで糸を引いていた貴族は王国の中でも真面目な中堅貴族と言われていた貴族だった。
先代の当主の頃から犯罪組織と繋がりを持ち、拐った子を奴隷として他の貴族や他国に売り渡していたり、麻薬を精製して一部貴族やスラムの住人に渡し売り捌いて巨額の利益を得ていたのを、警邏のトップや第三騎士団所属の貴族達が隠蔽してきたらしい。
まあ、宰相さん大激怒だよね。真面目に国の為に働いているのに影でそんな事をされていたらね…。
「小さな必要悪と言うのはあるんです。それまで潰してしまうと生きづらくなってしまうから。
でも今回の事件はその範疇を超えましたので、徹底的な処分を断行致しました。」
…きっと本当に徹底的にやったんだろうなぁ…。
目が全然笑ってなかったもん。震える…。
そんな訳で警邏はトップ交代、関わっていた人は懲戒処分でしばらくは国の監視下に置かれるそうだ。
第三騎士団は団長、副団長に勧告処分。他関わりのあった騎士さん達は懲戒処分。実家の貴族達も当主が関わっていれば当主交代の上蟄居、財産の一部没収。当主の預かり知れない所であれば賠償金を支払う事で処分が決まったらしい。
被害者救済も既に売られている場合、居場所の特定出来ている人達は解放され然るべき所へ。病んでしまっている人達は病院へ、身寄りの無い子供達は孤児院へ。賠償金はそこに使われるそうだ。
他国へ売られた子達は他国と協力の下居場所を突き止めるとの事。
こうして僕達が巻き込まれた事件は幕を閉じた。
「いやぁ〜、アル君。君、牢屋をメルヘンに改造してたんだって?私も見たかったよ!
報告書を読んでついシュナイダー君を呼び出して聞いちゃったよ!」
「陛下、そんな事言うと精霊さん達が悲しみますよ。精霊さん達がやってくれたんですから。
だって酷かったんですよ。
寒いし暗いし、地面は剥き出しでジメジメしてるし、血の匂いはするしで。
あんな所に子供達を置いてはおけませんよ。
アレク君も汚れてしまいますし…。」
あの事件から1ヶ月、調査も処分もある程度決まり、スピード解決となった。
僕もあれからは大変だった。ジルには転移して報告しなかったことを怒られ、ギルとウィル君にものんびり寝てた事(さっさと転移して逃げろ)を怒られ、ロバート様とクレイス様にはウィル君やアレク君を巻き込んだ事を正式に謝罪しに行き、騎士団の調査に協力したり、あの時知り合った子達のお見舞いに行ったり、精霊さん達にお礼にお菓子を作りで感謝を伝えたり、ラス君を慰めたり、シロガネとハクエンへのお礼に魔獣狩りに行ったり、ラス君を慰めたり、黒幕貴族さんに会いに行ってざまあしてきたり、ラス君を慰めたりと色々動いた。
いやぁ〜、疲れたぁ…。
お陰でラス君は復活したよ!もう大丈夫!
一段落してホッとした所に陛下からお誘いが来て今、お茶してる所です。
ホッとした所にまだ終わってないぞ的な、最後の難関が残ってたぞ的な、陛下達を巻き込んだ事を忘れてたぞ的な感じで気を引き締めて今日を迎えました。
むふぅ〜…。
あれからアレク君がクレイス様に訴えてくれた結果、クレイス様とロバート様によりスラムや孤児院の子供達を国として保護するように直訴された。
この辺りはきっと簡単な事ではないから大人たちがこれから色々と決めて行くのだろう。
子供達に幸せな未来がありますように…。
今日も美味しいお菓子を僕と精霊さん達とでうまうまと頂き、お城のお庭ではシロガネと精霊さん達が走り回って遊んでいる。
平和だなぁ〜。これで本当に一件落着だ。
今日は皆であの時知り合ったスラムの子供達が保護されている孤児院に来ていた。
国の方針はあるだろうけどやっぱり知り合ったからには心配だしね。
「こんにちは〜、皆元気してた〜?」
「あっ!アル兄ちゃん!ギル君もウィル君もアレク君もシロガネもまた来たのか?全く、お貴族様は暇なのかよ。」
出迎えてくれたのはあの時皆を庇って殴られてたコズ君。口は悪いけど優しい子だ。天邪鬼っていうの?嬉しいのについつい悪く言っちゃうってやつ。そして後悔してバツが悪そうな顔をするところまでがセットです。
今日も言っちゃった…、って顔をしてあわあわしている。これはこれで可愛いもんです。
「うん。元気そうで安心したよ。皆も何事もないかい?」
ホッとした顔をしてコズ君が続ける。
「おぅ!皆元気だ。ここならご飯は食べられるし、殴られない、夜は安心して眠れるしで天国みたいだ。」
…待って…、いきなりのぶっちゃけで泣きそう…。
そんな過酷な中生きてきたんだ、この子達は。
僕が死んだ時もいきなり襲われたからなぁ…。僕は生き延びれなかったけどこの子達はあの環境で生きてきた子達なんだ。凄いなぁ…。偉いよ。
自分の不甲斐なさとこの子達への尊敬で胸が熱い。
全ての人を救う事は出来ないけど、せめて子供達が幸せに暮らせる様に僕は何が出来るだろう…。




