殺意高めのようです。
ブラックウルフの討伐が一段落すると、ダンさんが引き攣った顔で、
「ア…、アル君?君、さっきまで誰と話してたの?」
「シロガネ?」
「うん…、シロガネ君の他は?」
「ラス君?」
「ラス君?ラス君って誰?何処にいるの?」
「ラス君は風の精霊さんで、ここにいるよ。」
僕の肩にいるラス君を指さす。
ラス君もご挨拶に…、とダンさんの前髪を風で飛ばす。
ダンさんはしばらくフリーズした後で、長い溜息をついた。
「…、分かった。ちょっと休憩しようか…。」
僕達は一旦森を出て休憩できる場所へ移動。
見通しの良い所に着く。
僕は早速休憩の準備。
魔獣除けの結界作動させて、収納袋からイス出してテーブル出してお茶とお菓子の準備して。シロガネとラス君にもお水を出してあげて…。
よし!休憩しますか!
振り向くとダンさんが頭を抱えてた。
曰く、休憩でこんなに優雅にくつろぐ人はいないと…。
紅茶も菓子もクソウメェ!!とちょっとキレ気味に言われた。
良かった。ジルが用意してくれたやつだからね。
僕の執事は完璧なのですよ、ダンさん!
それは一旦置いといて…。
精霊の存在は知られていないそうだ。うん。僕も知らなかったし…。
でも、知ってる人は居るんじゃない?ハクエンも知ってたし。
そして、シロガネもラス君も魔法の威力が半端ないって。
僕の収納袋も持ってる人見たことないし、結界があんなに強固なのも滅多に見ないって。えへ。
結果、僕はDランク冒険者としてはあり得ない存在らしい。多分ソロでもBランク位行けるんじゃないかって。
やったね!
でも一般常識がなさ過ぎる…らしい。
しょんぼり…。
このままだと、良いように使われたり、騙されるかもしれないからしばらく一緒に行動しないかと誘われた。
「でも僕たまにしかギルドに顔出さないから、一緒は難しいかも…。」
「う〜ん、手紙とか遣り取り出来れば良いんだけどなぁ。」
あっ!手紙用の陣を作ればいけるんじゃないかな?
「待ってて!やってみる!」
ダンさんはキョトン顔。
僕は収納袋の中をガサゴソ。何か使えるのあるかなぁ…。メモ帳発見。
取りあえずこの紙に陣を刻んで、ダンさんに渡す。
陣に魔力を通して貰って…、来た!届いたぞ!
これで手紙の遣り取りして、都合の合う時に連れて行って貰おう!!
よろしく!ダンさん!あれ?疲れた顔?
ダンさんに頭をグリグリされて怒られた。
そういう所だぞ…て。
魔法陣魔法もダメ?
「ダメじゃないが誰彼構わず見せるなよ。」
「分かった。ダンさん、疲れた?もう帰ろうか?」
「いや…、もう何を言えばいいか…。疲れ…てるのか?」
ダンさんは項垂れ、
「こらだから…、これだから…。」
ブツブツ繰り返している。
「アル君、君ね!ホント気をつけて!監禁されて搾り取られるよ?!」
恐ろしい事言われた。
ギルドに帰るまで僕は一般的な魔法について教わった。
魔法陣魔法も収納袋も精霊さんも、全部内緒にしておく事になった。
なんか、スミマセン…。
夕方、ギルドに戻ると漆黒の風のメンバーさんがダンさんの事をお酒を飲みながら待っていた。
明日、少し遠出になるが日帰りでレッドサーペントの群れの討伐をするらしい。
ダンさんに行けるか聞かれるが、遅くなるとジルが心配するからなぁ…、と考えていると周りが静かな事に気が付いた。
「アル様。」
後ろから声をかけられる。
振り向くと、ジルがいた。ビックリ。
遅くなったから迎えに来てくれたらしい。
心配かけてごめんね。でもお迎えが嬉しくて、ニコッと笑う。
明日の討伐はジルが経験だから是非連れて行って貰うように、と許可が出た。
やったぁ!
「アル様。先に依頼達成の報告をされて来てはいかがですか?」
そうだった!待っててね!
僕はカウンターに行き、報告する。魔獣討伐の買い取りも頼む。数が多いので袋ごとおじちゃんに預ける。
明日取りに来るね!!
ジルの所に戻ると、ダンさんと話をしていた。
「ダンさん、明日はよろしくお願いしますね。」
漆黒の風のメンバーは青い顔をして頷いた。
やっぱり疲れたのかなぁ?
ジルがギルマスの所で既にホーエンの森の魔獣のお金と収納袋を回収してくれていた。
後、あのギルド員の顛末も聞いたらしい。
後で報告してくれるって。
…ん〜…あまり聞きたくないけど聞いておいた方がいいんだよね?
出回っている噂を聞く限り、噂の元が彼女なら反省もしてないだろうし…。
ジルと一緒に家に帰った。
翌朝、まだ早い時間。
シロガネもラス君も一緒に行く事になった。
そうしたら火の精霊さんも心配だから一緒してくれるって!よろしくね!
名前はメルちゃん。
「何かあったら焼き殺してあげるから安心して!」
可愛く笑ってたけど、殺意高めぇ…。
色々準備もしたし、では、出発〜!!
漆黒の風さん、よろしくね!!
ジルはきっちりギルマスと漆黒の風メンバーにご挨拶をしております。




