13/13
13
左足をプレートからすっと引き、深く振りかぶった。腰のひねりとともに膝を高く上げ、鷹の爪のようにその足を土にめりこませながら力をため、喉の奥から唸り声を上げ、全力で腕を振り下ろした――。
ピンチの中、僕が全身全霊で投げた一球、それは父から教えてもらったスライダー。
いや、スライダーG7!
僕の手から放たれたボールはバッターの手前でぶんという音をたて左に曲がり、近藤のバットが空を切った。
ミットに目をやると、真珠貝のなかの真珠のように光るものが見え、父の顔がいつまでも消えずに、声も耳についてはなれなかった。
終わり




