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僕が夏の東京大会決勝のマウンドに立っていた時、父は死んでいた。
その事実を、僕はあとになってから知った。
僕の優勝を知り、父のアパートに駆けつけた父の友人が、遺体を発見した。
死因は心不全。布団の中で亡くなっていたため、昨夜から今朝にかけてのことらしい。
その知らせを受けても、僕にはどうにも実感が湧かなかった。
悲しいとも、つらいとも、はっきりした感情は浮かばなかった。
ただ、父が死んだという事実だけが、他人事のようにそこにあった。
数日後、父の部屋を母と二人で片づけていたとき、ノートパソコンを開くと、父の書いた小説が残っているのに気づいた。
いくつかあったが、その中でひとつだけ、書き終えられていないものがあった。
題名は――
『スライダー』
途中まで書かれたまま、そこで止まっていた。まるで、作者の帰りを待っているみたいに。




