第11話 結界の儀式2
そしてハチマキを頭に巻きつけ縛りあげると
ハチマキをずらして目隠しにして刀を持ち車から降りてきました。
「式さん、私を護摩壇の前まで連れて行ってください」
そういうと手を差し出した。
なんだか式は、その手を握るとき恐れ多い気持ちになった。
『失礼いたします』
声は和華なのですが空気感が違います。
それに、さっきまでは『アキラおじさん』と呼ばれていましたから…
『言葉遣いも・・・静華さんでもない?・・・
やはり説明にあった和華さんの、おじい様が乗り移って、いらっしゃるのか・・・』
脇道には副署長、茂木と西条先生が心配そうにこちらを見守っていた。
和華は式の手を握り一緒に護摩壇の前まで歩いた。
現場の照明の前を通ると和華は眩しそうに手で目を覆いながら
歩いていた。
護摩壇の所に来ると和華の指示でCDラジカセをかけた。
スイッチを入れ深夜だが大音響で御神楽の音楽が流れはじました。
「ぴぃーーーーどん、どん・・・」
独特の笛と太鼓の音が周囲に響いた。
ラジカセには両面テープで式が護符を貼った。
音楽はエンドレスでリピート再生される。
奥にアパートを見据える位置に護摩壇と護摩灯明が左右に立てられていて
背後には問題の木が3本立っていた。
木は頭のてっぺんから下まで太い枝も細い枝も切り落とされて
3本の柱が間隔を少しおいて立っているように見た目が変貌していた。
「式さん、尾形さん、護摩壇の基礎に空気が通りやすいよう木を交互に
うまく積み置いてください、できればお焚き上げ用の護符で包むように
枝を包んで置いてください、10本ほど置きましたら油をかけて
やけどしないように火をつけてください」
油は火をつけると勢いよく燃え出した。
もう数本、大きめの木を追加で投げ入れた。
続けて灯明も火が入れられ和華が言った。
「後ろの木のところに行きましょう、塩と聖水を持って来てください」
「ハイ」
「はい」
式と尾形で荷物の中にあった
『御祈祷塩』と『御聖水』と書かれたペットボトルを持って3本の木のところへ向かった。
和華は目隠しをしたままなのに、もう一人で歩けるようだった。
和華が木の周辺に塩を撒いて根元に聖水をかけ、さらに塩を撒くと
木の先端あたりから
「バキッ」
と木が爆ぜるような音を出した。
そして・・・風が吹いてきた。
「では戻りましょう」
護摩壇の前で、これから式と尾形に仕事の説明がされた。
「キャリーケースの中に結界を張るための刀が99本入っています。
それを台車か一輪車でもかまいません。
載せて土地の外輪を歩き、
この音楽の太鼓に合わせ立ち止まり、そちらの木槌で一本一本地面に
刀を打ち込んでいただきたいのです。
その間、私は祝詞を上げ魂散華、抜刀演舞の儀式に入ります」
「はい」
「その間は和華の父、政一郎が作業員の皆様の安全のため
守護の法力を持って、お守りいたします。
式さん、尾形さん、これ、ここをずっと・・・ぐるっと回りながら
太鼓の音が鳴ったところで立ち止まり、地面に刀を打ち込むのですよ」
「はい、わかりました」式と尾形は覚悟を決めた。
空港で和華が、ふざけて座っていた大きなキャリーケースの中身は、結界用の刀が、ぎっしりと入っていた。
長さ50センチ程の刀だった。
しかし刃は研がれていない合金製の模造刀だ。
だとしても別途ケースに入っていた刀は真剣で刃渡りは一メートルほど正確には何尺何寸と表すのが正しいらしい。
結界用の刀、持ち手の部分には何か呪文?が書かれていますが
漢字でも日本語でもなく読めなかった。
そんな刀を平然と飛行機に積んできた榊原一族とは
どんな特権があるのか、見たことも聞いたこともない。
とりあえず30本ほどの刀を工事現場で『ねこ』と呼ばれる一輪車に載せて歩き回る準備をした。
地面はデコボコで不安定でしたが、しょうがない。
尾形がねこを押して私が刀を木槌で打ち込むことにした。
「あなた達、素手はいけません、軍手くらい履きなさい、護符が施されたヘルメットもありますね?お二人」
和華は目隠しをされているのに見えているようだ。
「あ、ハイ」尾形がヘルメットと軍手を取りに行った。
今、着用している作業服も先日、荷物で一緒に送られてきたものだ。
声は和華だが、やっぱり中身は違うようだった。
造園業の方たちは公園の方で、まだ草刈をしていた。
草刈カッターの音が聞こえてきた。
尾形の会社の作業員達も、これから建てるプレハブの下準備などで
走り回っていた。
尾形が戻ってきた。
「式さん、離れてみたら、やっぱり式さんも光っていましたよ」
言われて周囲を見ると関係者は皆、光を発し、包まれ作業していました。
スゴイ光景だった。
和華が言った。
「式さん、先日、血で汚れた革ジャン、今、車から取ってきて下さい。
一緒に、お焚き上げします」
「あ、ハイ」あわてて授かった革ジャン取りに行ってビニール袋のまま
渡した、もったいないが仕方ない…
和華は何でもお見通しです。
式は自分が愚かな人間だと思い知らされる気持ちだった。
「では、始めますよ」




