第8話 探偵の恋
式は、まだ見ぬ祭師・榊原静華は、どんな方なのか想像しながら
眠りにつくと生々しい夢を見た。
美しい見知らぬ女性が式の事務所に入ってきた。
夢の中で式は思う。
『まさか幽霊?あっ、この人が静華様かな?』
「私に見憶えありませんか?」
「はぁ榊原さんでしょうか?」
「そうですか、記憶を消されて生まれたのですね」
「それはどういう意味ですか」
「やがて貴方の封印が解けて覚醒するはずです」
「覚醒ですか」
「はい、ようやく見つけました、アキラ」
「え?」
「探しても見つからなかったハズです、私が避けていた函館に居たなんて皮肉な事、それでは始めましょう」
「え?何をですか」
「遠隔による除霊と守護の儀式です」
女神のような美しい顔が式の顔に近づいてくる。
式は体に腕を回されていたが
生々しい感触が伝わってきた。
『これは夢だ、エエイッ』
式は近づく顔に対して自分も目を閉じ
無ざまな唇をタコのように突き出した。
『んーーー』
夢の中の女性は式を夜の営みへと誘い込んだ…
翌朝、式は目を覚ました。
『あんなの・・・なんて夢見てんだオレ・・・まいったな…』
式は昨日の仕事の続きをと考えアポを取って例のアパートの所有者である銀行へと向かった。
支店長さんなどに御挨拶をして、あちこち御札を貼って帰ろうとしたが色々と怖がっていらっしゃる方もいたので車に護符と希望される方に御守りを渡した。
お守りは綺麗な袋に入っており表面には只『御守』とだけ刺繍されていた。
首から下げることも可能なように紐も付いていた。
「気が付くたびに護符、御札、御守りには手を合わせて、お願いを、ちゃんとしてください」とだけ、みなさんに説明した。
精神的なものもあると思うのですが、だるいとか体調不良を訴える従業員さんもいらしゃって真剣な様子だった。
中でも、ある女性従業員の、お子さんが夜中に泣き出して
「こわい、こわい」と繰り返していらっしゃる方などは、ご自宅住所を伺ったので式が夜にでも、お邪魔することになった。
静華からも連絡が来てリモートで見てもらうことにした。
その時、式の目と耳と鼻が役に経つのだそうだ。
そして夜、例のお子さんが夜泣きされている従業員さん宅に、お邪魔して早速、事情を聞いて家の中を見て回っていると静華から式に電話が来た。
聞くと静華には見えているらしく2階寝室に瘴気が溜まっていて、
その原因が階下の洗濯などを行う場所の地面に昔の井戸の跡があって、
それが原因だと判明した。
「水脈溜まりの影響で未成仏の霊が通りすがりに集まってきている」と
静華は言ったが式は適当な事を家の方に言って、そのまま伝えることはしなかった。
とにかく一度、床板をはがして井戸跡のガス抜きを行い、祝詞をあげる儀式が必要なので、
それは後日、行うことになり応急的に護符と御札を効果がありそうなところに設置して式は家を後にした。
結局お子さんの夜泣きは、あのアパートとは無関係と思われた。
二日後、式の携帯に、その銀行従業員さんから、お子さんの夜泣きが収まったと連絡があった。
「ありがとうございました」と
御礼を言われたが式は釘を刺すように
「まだ何も終わってないかもしれませんので油断しないでくださいね」
と、お母さんと自分自身に言い聞かせた。




