第1話 運命の依頼1
式は翌日まだパンダの顔のまま事務所で安静にしていた。
とにかく首と表面の皮膚が痛くて湿布を首に貼り、その上から
ラップをぐるりと巻いていた。
『これで症状が改善しないようなら明日病院に行こう』
何にもしないで首を冷やしたりしながら好きな映画を何本か見た。
そして夜7時、約束していた尾形が、お父様と一緒に事務所に訪ねてきた。
ふたりは式の顔や首のあざを見て驚いた。
「いったい、どうしました」初対面のお父様が式に聞いてきた。
式は包み隠さず事実を、そのまま話した。
お父様も尾形さんも腕を組んで
「うーん・・・なるほど・・・」と感嘆していた。
『お父さん何しに来たんだろ・・・』式の考えを察したように尾形のお父さんが口を開いた。
「実は式さんに折り入って、お願いしたい仕事があるんですが」
「はぁなんでしょうか」
話を聞くと尾形のお父さんは街で大きく事業をされていてバックには
大手銀行がついていた。
その大手銀行とは、なんと、あのアパートを差し押さえた現在の所有者だった。
そして、お父さんは、その銀行の函館支店で役員もされていて
『あのアパート』の件で仕事を受けたのだという。
それはアパートを解体し更地にして浄化しなければならず色々と探偵・式に、お願いしたいことがあるという。
「はぁ、でも畑違いじゃないですか?わたし只の不良中年ですし」
「いやーそれが頼める人も受けてもらえそうな人も、いないんですよ
式さんならと思ったのは他にも理由があるんです」
「理由ですか・・・」
「はい、式さん弁護士の堀之内先生、ご存知でしょ?」
「えぇ、あの先生が若い時から知ってます」
「私もあの先生には色々お世話になっておりまして、
それで今回、私が銀行の代理人として、あのアパート解体に関して周辺の土地に関する法律なんか相談に行ってたんですが
色々難しい面がありまして、あの土地のことを式さんに調べていただきたいのです内密に…」
弁護士先生は調べものと言っても特殊な内容になるので
「瑕疵物件を調べるなら得って付けの男がいます」と式の名前が出たという。
それだけではなく成田さんの不法侵入騒ぎの時に警察から
現在のアパート所有者である銀行に事件の事実確認等の要請があり
警察でも、やはり式の名前が出ており大手銀行の方からも式に依頼したいと言ってきたらしい。
「ありゃー銀行さんも私の事知ってるんですか?」
「はい、なんでも警察で事情説明の時に名前が出まして、
その時に式さんは探偵さんだと警察から伺っているのだそうです、
それで私、息子に聞きましたら息子も賛成していまして」
尾形が笑っています・・・何がおかしいのか式の顔か?
式は深刻な話の最中だったが二人のどこか、にやけている顔が気に入らなくなってきた。
「そうですか・・・私、ちょっと、ご近所さんなんかに人探し頼まれてやってたことがあるだけでして、いやーでも昨日も私、危なかったんで、あんまり乗り気になれないです」
「しかしですね・・・実は銀行が、あのアパートに関わってから銀行の社員たちが、たくさん事故りまして、今、大問題になっておりまして・・・
それと特殊な仕事を請け負って頂ける祈祷師さんだか神主さんだかが、
下調べを式さんに頼むように言っているらしいのです」
「はぁ、どこの誰ですか?」
「それが私も、まだ詳しく聞いてないのですが確か関西の神職の方で位の高い方らしいです。式さん御存知なんでしょ?」
「ハァー?いーえ、思い当たりませんが」
「そうですかぁ、おかしいな、お話もされた事あるらしいのですが」
「えっ誰がです?」
「いやその神職さんと式さんが・・・」
『知らん知らんぞ、そんな人・・・しかも、そんな離れたところの人・・・』
「式さん、どうか、この仕事、受けて頂けませんでしょうか」
『お父さん顔笑ってますよ・・・・ま、パンダだもんな・・・』
尾形、いや尾形君に至っては
「ぶっあははっはは、いやーはぁーあははははひゃひゃひゃーっ!」
とうとう式の顔を見て爆笑しだした。
「こ、コラッ失礼だぞっ、やめないかっ!ぶっふ!」
『いやいや、お父さん、あなたも笑ってますけど?何しに来たんだコイツら・・・』
「だあてぇー俺こんな人、アハハッこんな人みたことないよーあははぁあーっきゃーーハハハハハハッ」
二人は今にも転げまわりそうだった。
式がふくれっ面した。
『お歓び頂けて何よりですよ、
尾形君・・・いい加減にせぇよ・・・あんたら笑い上戸の家系か』




