第6話 もう夢は見ない
式は腹が減ったので買い置きの袋ラーメンを2個作った。
すると彼が動き回ったのと食べ物の匂いにつられたのか
寝ていた彼女は目を覚ました。
「おじさん、歯ブラシかして…」
「あー洗面台の引き出しに使い捨ての歯ブラシあるから使いなよ」
「はい…」
まだ寝ぼけた様子の女子は顔を洗って鼻かんだりしながら
応接セットのソファーに座った。
先ほど頂いた菓子折りはバームクーヘンで、しかも式の好きなチョコ味だった。
「これ、よかったら食べなよ」彼女にバームクーヘンと、お茶を出した。
「ラーメンあるけど食べる?」
「あー一応いただきます・・・あのー、すいませんでした迷惑かけて」
「ああ、まぁね、いつもこんななの君は?」
「いーえ初めてだす、これイタダキマース、む・おいしいこれ」
「あははダスってなんだよ」
孤独な毎日が続いていたせいもあって式は少し浮かれていた。
「おじさんシキって名前なんだよね?」
「ああ、なんで?」
「あのー私、市立病院の看護士なんです、シキさんって、まさか身内の方、最近、亡くなったりしてませんか」
「えっ?・・・おふくろ死んだけど・・・」ラーメンもテーブルに置きました、卵をとじた函館一番・塩ラーメン・海苔・ゴマ入りです。
「えーっ!あの式さん?」
「なに、まさか知ってるのズズッ…モグモグ…」ラーメンがうまい。
「あ、じゃコレもイタダキマース、クピッ、ズルズル…これおいしい」
「だろコツがあるんだよインスタントは」突然の、お客に式は嬉しそうだった
。
彼女は偶然にも母が入院していた病棟勤務の看護士さんで、よく母の状況確認などしていた方で式が珍しい苗字なので覚えていた。
「こんな偶然あるんだねー」
「偶然じゃないかもしれませんよ」と彼女は言いました。
病院で彼女はマスクをしていたので当時、顔はわかりませんでしたが彼女の方は私に見覚えがあったらしく
「それで酔っ払って、ついて来てきてしまったと思う」と話した。
あれこれ話すうちにローカル冊子の怖い話コラムが話題になった。
「いつも楽しみに読んでたんだ、そっか式さんって、こんな人だったんだ」
「ん、がっかりした?」
「別にぃ・・・」
「看護士さんだったら仕事柄、不思議な体験とか、あるんじゃない?教えてよ今度ハンバーガーくらいしか御礼できないけど」
「あのさぁ・・・怒らないで聞いて欲しいんだけど…」
「なに?怒んないよ常識のない若者にはクラブで慣れてるから」
「んー私、若者じゃないんだけど、もう26、来年27歳」
「へぇー若く見えるね」
「髪の色と服装のせいよ、おじさんもいくつか知らないけど若いジャン」
「お世辞はいいよ馬鹿な落ちこぼれの大人だよ、ただ寒い大人にだけはなりたくないよ・・・今、言いかけた怒らないでって話は何なの?」
「式さんのお母様の病室に黒い人影が、いつも立ってたんですよ、たまに病院ではあることなんですよ、私たちは『お迎えさん』って呼んでます」
「そうか、そうなんだ、じゃ迷わず成仏してくれるかな」
中身のない強がった軽口を言った。
「ごちそうさまでした」
「今度ゆっくりオバケ取材させてよ」
「いいですよ今度は私がゴハンおごりますね迷惑おかけしましたし本当にすいませんでした、あの女の人には誤解されたんじゃないですか私、会って説明しましょうか?」
「いらないよ返ってごちゃごちゃしそうだし、これくらいの事で誤解して怒ってるんじゃ俺のタイプの女じゃないよ心の大きい人じゃないとね、恋人でもないし」
「そうかなぁー男に関して心の大きい女なんて存在しませんよ」
「おー言うねぇー」
式は名刺を渡して電話番号も交換した。
彼女の名前は『アサミ』と言いました。
式は彼女を家の近くまで車で送って行った。




