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JOLENEジョリーン・Y字路の女神  作者: オブチアスマ
最終章 大団円へ

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第29話 旅立ち

 作業が終わって榊原一族の方々が順番に帰って行きました。

最後に私(しき)と尾形君とで和華さんと静華さんを空港に送りに行きました。


 従業員用の出入り口から搭乗するので、ちょっと影になっているところでの、

お別れとなりました。


 その時の会話が私にとって一生忘れられないものになりました。


白いコートに身を包み気品ある静華さんが言いました。


「例のお返事が、まだです」


「あれ、本気なんですか」


「あなたは、いつも頼りないけど、私が危なくなった時に勇気を出してくれたわ、

また、あなたの、あの勇気が必要なの・・・

アキラさん私たちのところに来てください」


「はい、遅くならないうちに、お参りに行きます」


「そうではなくて、私と一緒に暮らすのです」

気のせいか静華さんの瞳が潤んでいました。


「えっ!それは・・・少し・・・」

考えさて下さいと言葉を続けようとしましたが

目にも見えない速さで静華さんは私の左の頬を思いっきり叩きました。


―パァーン!

痛い・・・耳がキーンとなって・・・


 彼女が心を読める事、忘れていました・・・


静華さんは私を思い切りひっぱたいてから無言で刀を肩に掛け、ひらりとコートをひる返し警備員さんと出口に向かってスタスタと歩いて行ってしまいました。


 彼女の背中が、どんどん遠くへ離れていきます。


『うわぁー何て最悪な、お別れだ・・・ありがとうも、サヨナラも言えなかった・・・また・・・やったんだな俺・・・やっちまった・・・

一緒に暮らすって・・・私とって言ってたな・・・それは・・・』


お別れの挨拶すらできず痛い頬を左手でさすりながら茫然としていると和華さんが私の右袖を握ってグングンと2回引っ張りました。


 見ると和華さんが寂しそうに立っていました。


「アキラおじさん、尾形お兄さん、大変お世話になりました。

榊原一族を代表して、あらためて御礼申し上げます。

ありがとうございました、さよなら」


そう言ってペコリと、お辞儀をしました。


「あぁうん、和華さんも元気でね」急に涙が出そうになりました。


「はい、じゃあね尾形兄ちゃん」


「うん、いろいろありがとう和華ちゃん」


和華さんも刀を肩に掛け警備員さんと一緒に行ってしまいました。


背中を見ていれば振り返って手でも振ってくれるかと思いましたが

和華さんも振り返らずドアの向こうに消えて行きました。


 尾形君に事務所まで送ってもらう間、何か話しかけられましたが

私の耳にも頭にも何も入ってきません。


 事務所で独りTVを見ても楽しくなく映画をかけてもストーリーが何も頭に入ってこなくなりました。


 スマホ片手に繁華街に行って酒を飲んでいても、誰からも連絡はありませんでした。


 次の日も次の日も誰からも連絡はありません。


武藤さんや尾形君も仕事が忙しいらしく連絡すらありません。


先日までの忙しさが嘘のように感じます。


 テーブルが『コンコン』と音を立てる事もなくなりました。


念願だったプラモデルを、ゆっくり作ってみても楽しくなく他にやる事も無い、そしてボランティア連載や探偵ごっこを再開する気にもなれない。


「ゆっくり考えるか・・・あーあ・・・あのオーケストラの一員になりたかったなあー」


いつか、武藤さんに言われた言葉なんか思い出していました。


「それは良くない生き方だぞ、わかるか、式・・・遠慮なんかいらないんだ」


 理由がない訳でもないのです。

仲の良い兄弟や家族、その前に出ると血の繋がらない自分の入る余地など無いと感じてしまうのです。


 あの・・・手のひらを返す人々を見るたびに残念な気持ちになります。


それに、だらしない自分が祭師の生活に、ついていけるだろうかと・・・

いつも覚悟の足りない自分。


強がって目上の人に生意気で偉そうな態度を取ったり

目下の人間に悟ったような事を言ったりしていた自分がつまらない人間に思えてきました。


それでも女性に恥をかかせるのは男のすることでは、ありません。


 後(・)悔(・)していました。


 

 昼過ぎまで眠っているとスマホが鳴りました、知らない番号でした。

「はい」

「こちらシキ・アキラさんの携帯でしょうか」

「はい」

「私、空港の特別配送便の者ですが荷物が届いております。

これから伺いたいのですが都合はよろしかったでしょうか」

「はい」

「国土交通省、菅原様より御依頼の荷物です、受け取りの印鑑とサインいただきたいので御用意して、お待ちください、それでは今から伺います」


5分も経たぬうちにドアがノックされました。

配達員さんはスマホを片手に私の顔を確かめているようでした。


「ありがとうございます、それでは失礼いたします」


『なんだろう・・・』

寝ぼけ眼で荷物を開けてみると一番上に菅原さんの走り書きの手紙が入っていました。


「静華様が、お待ちです すぐに国土交通省・保安部・特務課に大至急!出頭してください わからない事は私の携帯に連絡いただいて構いません010・・・」

と書いてありました。


 私の胸はドキドキして息が苦しくなってきました。

『また静華さんに逢える・・・』


 荷物の下には黒い革カバーの身分証と名刺が入っていました。


身分証は、ふたつ折りになっていて上部に私の顔写真付き身分証と

下部に警察官の身分証バッチのように菊の御紋を型どった金色のバッチが収められています。


同封の名刺には私の名前があり肩書きが書かれていました。



 国土交通省 保安部 特務課


 調査・執行部


 執行官 式 亮

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