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9.名前決まる

2024/2/12 リサーチ不足でおかしなところがあったので、前話に修正を加えました。話の内容はほとんど変更なしです。それに伴って、6話と8話の間に7話を追加しました。

 私の競走馬としての名前が決まりました!私の名前なんだから話し合いに私も呼んでくれたらよかったのにと思わなくもないけど、まぁしょうがない。

 そんながっかりも私の新しい名前を教えてもらって、綺麗にふきとびました。

 なんでも小早川の奥さんが考えてくれたらしい。失礼ながらちょっと変わった人だと思ってたけれど(ごめんなさい!)、名づけのセンスはなかなかです。教えてもらったときは小躍りしちゃった。

 そのせいでまたみんなをびっくりさせちゃったんだけど。


 ではでは!私の新しい名前を発表します!

 なんと~!

 それは~~!

 だららららららららららららららら……だん!


 イバラヒメ


 です!

 眠れる森の美女から名前を付けてもらえるなんて、嬉しすぎる……。やったぜ。ねぇ、この名前、おしゃれすぎない?

 レースではこの名前をしょって走ることになるらしい。いや~女の子らしい名前で嬉しい。

 イバラヒメ速い!イバラヒメすごい!イバラヒメ可愛い!ってアナウンサーが私の名前を呼ぶわけね。いいじゃないいいじゃない。

 ほんとのところ競走馬の名前って結構すごい名前が多いみたいで、私はどんな名前がつけられるか不安だったんだよね。

 ハシリマクリとか、ウマウマプリンセスとか、タナカスペシャルとか呼ばれてる他の馬をみちゃったたから……。馬鹿にするわけじゃないんだよ。きっと一生懸命考えて付けた名前なんだと思う……。うん。もし、私がそういう名前に決まったら受け入れるけど、ね……。

 もちろんカッコいいのもいっぱいあるんだけど、女の子だからカッコよさみたいなのは求めてないんだよね、個人的に。

 そんなときにイバラヒメだもん。テンション爆上げよ!



 さて、白雪姫から茨姫となった私は初レースに向けて訓練の毎日です。

 とは言っても、全然楽!びっくりするくらいホワイト。

 怒られたり、突き放されたり、ぐちぐち言われたりがないから。部活の顧問は、期待通りの走りができなかったり、ダメだししたところが改善されなかったりするともうめちゃめちゃ怖かった記憶がある。それに加えて、ことあるごとに校庭10周ランニングとかさせられたのを思い出して……。

 だけど、調教師の人たちはそんなことは一切なくて。まぁもちろん、言葉が通じない馬相手だからってとこはあると思うけど。


 私が競走馬として勝っていくためには、たぶんだけど、私の世話をしてくれる人や騎手の人と協力していくことが必要不可欠な気がする。そうでもしないと勝てなそうな気がする。ネガティブすぎるかな?たぶんだけど、馬としてあまりすごい才能があるとは思えない。理由はわかんないけどみんなが白い馬にあまり期待していない感じなのよ、やっぱり。もしかしたら他の馬と比べて一歩も二歩も劣っている可能性さえある。その差を埋められるのはきっと私の頭なんじゃないかって気がする。

 だから、これから教えてもらうことは細大漏らさず覚えていかなければいけない。一度習ったことは必ずモノにする!くらいの気持ちでやっていかないと。顧問の先生が自分で考えて行動できないやつは才能があってもダメだって言ってたしね。ただ程度ってものがあるから、やりすぎないようにしないといけないけど。

 初日の訓練は、よくわからないけど私の適正を確認してたみたい。調教用の鞍を怖がらないかとか、人の指示に従うかとか他の馬と仲良くできるかとか、そんな感じ。

「良い感じですね。牧場の方でしっかり馴致が済んでいる。これなら明日から調教にすんなり入れそうです」

 遠藤さんから太鼓判をもらった。私の様子を見ていた金森さんも小松さんも頷く。でへへ、そうでしょそうでしょ。私にとっては、こんなの幼稚園のお遊戯会みたいなもんですよ。

 私が褒められるということは笹森牧場が褒められるということ。恥ずかしくないようにしないと。


 翌日から普通の訓練が開始したけど、まぁやることは笹森さんたちとやってたことの厳しい版って感じ。一定の距離を一定のタイムで走るとか、長距離を走るとか、坂道を走るだとかそういうの。牧場でこっそり?体力づくりしてなかったらちょっと厳しかったかも……。

 思ったよりも良い感じですねぇって言われたけど、今後徐々に想定タイムを挙げて行ったり、走行距離を伸ばしていったりするらしい。恐ろしい。

 運動量とかもそうだけど、指示の細かさとかも色々大変になってる。小学校から中学・高校にレベルアップしたみたいな感じ。わかる?この問題を解きましょうだったのが、急に解きなさいに変わったみたいな。

 訓練の仕方も指示の仕方もその内容も随分違うから、他の馬は大変だろうなって思っちゃう。私は人間の言葉分かるから大丈夫。そう思うと、競走馬ってすごいみんな頑張ってるんだなって思った。

 そう言えば、私と同じくらいに生まれた子たちはどうなったんだろう。こっちにいるかな?でもたぶん見分けつかないだろうな……。名前も変わっちゃってるだろうし。てか、たぶん向こうが私を覚えてないな。

 足の速さとスタミナは凡だけど、飲みこみの速さがすごいってみんなべた褒めしてくれる。まぁ中身は元女子高生ですからね。それにみんなの指示自体はめちゃめちゃシンプルだからね。指示に従えなかったら私の頭のできの悪さに絶望してしまうよ。

 ほんとはもう少し馬らしく振舞ったほうがよかったかも?って思わなくもないんだけど、同じこんなことを何日もやりたくないのと、できるだけ新しいことをどんどんやっていきたくて……。

 私は元人間だから馬がどの程度のスピードでどの程度の距離を走れないといけないのかとか、全くわからないし、自分がどの程度走れてどういうところが得意・苦手なのかもまだよくわかっていない。そういうのをきちんと把握しないとレースでは勝てないってわかってる。これも顧問が良く言ってたこと。だから、レースまでに何度でも時間の許す限り同じことを繰り返して体に叩き込んでいかないといけない。

 逆にきっと、そっち方面の訓練は他の馬よりも時間がかかっちゃうんじゃないかと思う……。なんか馬ってそういうの本能でやっちゃいそうじゃない?

 で、想定よりも早く訓練のレベルが上がっていくのでした!

 いやー筋肉痛がきついっす!毎度疲労困憊で馬房に戻ってくる。高校1年生のとき、高校の部活の運動量にやられて毎日くたくただったことを思い出したぜ……。テストが悲惨なことに……。

 私の世話をしてくれる人はやっぱりプロなんだよね。私の筋肉痛だとか疲労の様子はすぐわかっちゃうみたいで、そういうときは翌日運動量や訓練の内容を調整してくれているって途中で気付いた。

 馬は繊細な動物だから、無理させすぎると怪我の原因にもなるので、本当に本当に慎重に訓練を進めているのが分かる。毎日毎日怪我がないかのチェックが念入りに入るのを見ると、思った以上に怪我は気を付けないといけないようだ。牧場を闇雲に走り回ってた私よく大丈夫だったなって思ったけど、そういえば笹森さんとか安藤さんとかがいつも適当なところで止めさせに来てたわ。思い出した。


 冬が終わって春になって、また夏が来ました。

 最初は楽勝楽勝と思っていた訓練も、予想通り徐々にきついものになってきて、一人で走ったり他の馬と並走したり、実際のレースと同じように走ったりと、忙しい。

 坂道の訓練とか全力疾走の訓練とかはまーじできついんだけど、小松さんも遠藤さんも優しいの。できるとめっちゃ褒めてくれる。賢い子だなぁ!すごいなぁって!だから頑張ろうって気持ちになっちゃう。金森さんは毎日はこない。忙しいんだろうね。金森さんが来るとき、小松さんも遠藤さんもちょっと緊張してるから、えらい人なんだろうなぁ。

 ほめて伸ばす教育、いいですねぇ!私に合ってる。あまり良くない結果のときでも、明日頑張ろうなって。いや~いいところに来たなぁ。

 訓練が終わって馬房に戻るときにはすれ違うみんながお疲れ~って言ってくれるのもグッドポイント。


 私は外見はともかく意識は人間なので、普通の馬と比べると神経が太いと言われるくらいに落ち着いていて、好奇心旺盛と評価されているみたい。そのせいで、最近は他の馬の並走訓練?にお呼ばれすることもある。そのおかげもあって、たくさんの人とお知り合いになれたのだ。

 しかも、白い毛並みで愛想が良くてしかもかわいい!ということで、目下のところ私はトレーニングセンターのアイドルの地位を獲得しつつあるのだ。まいっちゃうなぁ~。でへへ。もしレースでも活躍したら私のグッズとかでちゃったりして。

 そんなわけで、人と馬の両方の知り合いがどんどん増えていってる。残念ながら他の馬とは何度顔を会わせても意思疎通ができない。ノリも合わない。

 こんなに愛想が良いのに馬には塩対応なのかと、みんなから不思議がられる。まぁでも、こちらから問題を起こすことは全くないので、そこは高く買ってもらってる。


 やっぱりこっちの夏は青森よりもずっと暑くてしんどい。夏バテにならないようみんなが気を使ってくれてるから、ちょっと食欲なくても頑張って食べるようにしている。走る才能があるかどうかわかんないから、体力だけは充実させておかないとね。

 びっくりなことにプールでの訓練もあるみたい。楽しみすぎる……。

 そういえば私の初レースっていつなんだろ。レースで大活躍する私を笹森さん一家にはテレビで見てもらうという目標があるんだけど!そろそろ調教師さんたちの会話に上がったりするかもしれないから、聞き逃さないようにしないと。

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