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09話 マヤナさんの母

 村長の家で話していると、扉を激しく叩く音が聞こえる。村長が扉を開けると、一人の若者が勢いよく入ってきた。


「姉さん! 来てくれたのか。ずいぶんと早いね……間に合わないかと思ったよ。良かった…」


「アシット…。元気にしてた? 母さんならもう大丈夫よ」


どうやらマヤナさんの弟らしい。


「ありさ、紹介するわね。私の弟のアシットよ」


「アシット。こちらはありさ、今はうちに住んでいるのだけど、早く来れたのも、母さんの熱が下がったのもありさのおかげなの。いろいろとお世話になっているのよ」


アシットは姿勢を正して


「マヤナの弟のアシットです。母と姉がお世話になってます」


「いえ、お世話になっているのは私の方ですよ。いろいろとね」


アシットさんと言い合っていると、マヤナさんが笑いだした。


「それより、母の看病を隣のウラルさんに任せて何処に行っていたの?」


「あぁ仕事だよ。エミーレ湖畔にカウリットを捕りにね」


「あら、そうだったのね。それで捕れたの? ありさ、アシットは魔物狩りなのよ。カウリットって言うのはね、比較的大人しい魔物で焼いたり煮たりして食べたりするの。村で育てたりもするわ。美味しい乳も取れるのよ」


ひょっとして牛みたいな感じなのかな? 味わってみたいかも。


「うん? 今回は罠を仕掛けて来ただけだよ。母さんが心配だしね。ところで、村の外にある見慣れない大きな物って……ひょっとしてありささんの物ですか」


「ええそうよ。あれは物凄く速い乗り物なのよ。私もお願いしてここまで乗せて来てもらったの。本当にすごいんだから」


「えぇ~いいなぁ。俺も乗ってみたい。ありささん。俺も乗せてもらえませんか…」


ワクワクしている感じで聞いてきた。私は、カウリットと罠に興味があるから、そこまで一緒に行けばどっちも願いがかなう訳で…いいじゃない!


「じゃあ、カウリットの罠までご一緒しましょうか。私はカウリットと罠が気になって…」


エミーレ湖畔までは歩いて1日くらいだって。それなら、1日で往復できるね。マヤナさんが


「ありさ、私は母の看病に戻るわね。アシットをよろしく」


と、言って看病に戻って行った。アシットさんと話していると村長が


「私も是非とも一緒に…」


と言い出したので、明日は3人でエミーレ湖畔に向かう事が決まった。


 アシットさんも家に戻って行ったので、村長にオレント村では、どんな物を食べているのか聞いてみると、エミーレ湖に網を仕掛けて捕れる魚とか、ソランの実を混ぜたパン。あとは、カウリットなどの湖畔にいる魔物との事だった。


 湖畔にはいろいろな魔物が居て、比較的大人しい魔物なんだって。たくさん捕れるといいなぁ。魚も釣ってみるかな。ちなみに今頂いているハーブティーは村の近くに生えているオレントフラワーと言ってこの村の特産品で、少し前まで綺麗な淡い紫色の花が咲いて、辺り一面に甘~い香が漂っていたって。もう少し早く来たかったなぁ~。今はもう枯れてしまっていたよ。残念…。


 村長と話していると、奥様が温泉に誘ってくれたよ、この近くにもあるんだね。奥様と一緒に向かうと途中マヤナさんと会った。他にも村の奥様方がちらほらと…はぁ~生き返るなぁ~やっぱり温泉っていいよね~。


 昨日の疲れも取れたところで、マレッカさんの様子を聞いてみた。熱も下がってもうだいぶ良くなってきたらしい。私にお礼が言いたいってさ。なので少しお邪魔する事にしたよ。マレッカさんがベッドの上で私の手を握って


「ありがとうございます。マヤナもお世話になっているようで」


「いえいえ、私もマヤナさんにお世話になっていますから…」


「お礼にあなたの事を占わせて頂戴」


 えっ? 有名なまじない師に占って貰えるの…嬉しいけど大丈夫かな。早速占ってもらうと、マレッカさんが私の手を握ったまま目を閉じる。すぐに目を開けて絶句した。マヤナさんが心配そうに近づいて来た。えっ何……?


 マレッカさんはマヤナさんとアシットさんに少しのあいだ他の部屋に行っているように告げると私に


「さっきあなたの手を握った時に感じたのだけど、凄く神のご加護を受けているわね。普通の加護ではないわ。私なんかよりも神様に近いように見えるわ。すごいわね、どうなっているのかしら」


 そうか…神様の加護は確かに受けている。愛車とスマホと…あっ魔法を使えるんだから私自身にも加護を授かっていたっけ。そのうちスマホで連絡? ご神託を受けられたりするのかな? 今のところ私には解らないけどね。とりあえずマレッカさんには私自身、どうしてこうなっているか解らないって誤魔化しておいた。


 本当の事は誰にも言ってはいけない様な気がしたから…マレッカさんは、微笑んで


「何か困った事があったら何時でも相談にいらっしゃい。私では力にならないかも知れないけど…。それと、あなたに頂いたお粥?とても美味しかったわ。ありがとうございました」


って言ってくれたよ。村長の家に戻り、夕飯を頂いて明日の事を考える。カウリットってどんな魔物なのかな…楽しみだなぁ!

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