23話 解呪の素材
その冒険者(バリーさんって言うんだって)はその後、あちこちの村や町を巡り教会やマジナイ師に話しを聞いて回ったと言った。その結果呪いの類いだと言う事がわかり、このままにしておくと早くて一月で死んでしまうらしい。あるマジナイ師がスリーピーの魔法で娘の時間を止めてくれているから呪いも今は止まっているんだって。
エミーレ湖近くの村のマジナイ師が解呪の材料を占ったところ赤い大ムカデの脚、青いマーマンの髭、緑の水草グルコンの3つが素材になるとの事。
あれっ? そういえばグルコンって子供たちとドライブした時に採ったような…ちょっと確認してみるとやっぱりあったよ。グルコンについて聞いてみると、時期が外れていて今は茶色くなっていたとか…なので、収納からグルコンを取りだして渡したよ。
皆で話し合いバリーさんの材料集めを手伝う事になった。だって話しを聞いちゃうとね…先ずは赤い大ムカデの脚だね。車の中から外の様子を伺っていたけど、大ムカデは戻って来なかった。夜は行動しないのかな? 仮眠のつもりだったけど、疲れていたから朝までグッスリと寝てしまった。
テムさんとバリーさんが外の様子が変だぞ! って起こしてくれた。車の外に出た私は…
「あぁ…またか…またこんな事になるなんて…」
とため息をつく。糸のドームの外からは何やら音がしている。
「一体コレは何なんだ? この音は?」
「コレは…ブラックポイズンスパイダーの糸ですよ。この森にもいたんだね…音は…何だろう?」
前の時と違って色々と出来る様になっているので、助けを求めなくても大丈夫なのだ! という訳で火で燃やす事にしたよ。糸のドームはチリチリと音をたて燃えた。
聞こえていた音は…大ムカデと蜘蛛が戦っている音だったよ。
「えっ? どういう事? 何でこの2匹が…」
「多分、大ムカデの縄張りにブラックポイズンスパイダーが入っちゃったって事だホッ! この中は安全だから暫く見ているといいホッ」
「そうだよね。2匹を相手にするんじゃなくて、勝った方を退治すればどっちも手に入れる事が出来るね。って言うか、大ムカデを倒した後にあの蜘蛛が何処かに行ってくれるのが一番いいんだけどなぁ…」
車の中から見ていると、蜘蛛が大量の糸で大ムカデを巻こうとしている。大ムカデは暴れて蜘蛛に毒液を吐いた。続いて巻き付いている糸にも毒液だ。糸は煙を出して溶けたけど、大ムカデの身体も少し溶けてる。あぁ…蜘蛛の脚も溶けてるよ……。
私の愛車は大丈夫だよね…? 多分大丈夫だろうけど、心配なのでエンジンをかけて少し離れた所に車を走らせる。蜘蛛は残った脚で追いかけて来る。
大ムカデは蜘蛛の背後から毒液を吐き出して…ブラックポイズンスパイダーは溶けた…このままだと私たちは延々と溶け行く蜘蛛を見ていなければならないのか…それは拷問だよね……。
私は車を走らせその場を離れ、車から降りた。大ムカデは溶けた脚と身体といまだ巻き付いている糸で動きが遅い。このチャンスを逃す訳にはいかない。
右手に剣、左手に火…やっぱりやりづらかった。何の気なしに火のあがっているまま剣を両手で持つと、火が剣先に走り思いもよらない火の剣が出来ていた。こんな事が出来るなんて…大ムカデを斬りつけると、切り口から炎が燃え盛り、大ムカデを倒す事ができた。
やった! 結局大ムカデの身体は半分しか残らなかったけど、半身でも脚はたくさんあるから大丈夫。火の消えた剣で脚を切り落としバリーさんに渡す。不思議とオルも欲しがったので、オル専用の箱をつくり収納する。私も今後の為に取って置こうっと。
2つの材料が手に入ったので、最後の1つ青いマーマンの髭を探しますか。髭、髭かぁ…これは、青い色をしたマーマンの髭なのか、マーマンの青い色の髭なのか?
ところでマーマンって…多分だけど半魚人的なものだよね…何処にいるんだろう? 聞いてみたけどみんなも解らないって…。オルが知っているみたいなので早速教えてもらったよ。
マーマンはシブーチの町から見て北東の方面にあるケントス湖に生息しているらしい。マーマン族は温厚な一族で緑色の皮膚をしているとの事なので、青いマーマンの髭と聞いて疑問に思ったと言った。取り敢えず行ってみて話しを聞いてみるか…
そうと決まればリカエン村のラボットさんに報告して報酬を貰い、シブーチの町に帰ってギルドにも報告。それから準備をしてケントス湖に出発だ!
リカエン村に戻りラボットさんに大ムカデを退治した事を話し、赤い大ムカデの脚を渡した。ついでに何のマジナイの為に赤い大ムカデの脚が必要なのかを聞いてみると、マジナイの素材は滅多に手に入れる事が出来ないので、必要になった時の為に保管しておくとの事。
呪われている人はここには居なかったよ。少しだけホッとした私たちはシブーチの町に戻ったのだった。




