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運命の人  作者: K-ey
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~二人の行く先~

『達矢さん、今から行くからね…』

私はかじかむ手をこすり合わせながら息を弾ませて車へと急いだ。

途中、肩にかかっていたストールがすっと滑り落ちそうになり、慌てて掴むと

首にしっかり巻き直した。

『達矢さん待ってて…』

私は車に乗り込むと、この場から逃げ出すように車を出した。

「待ってて…」

1秒でも早く逢いたくて夢中で車を飛ばした。



待ち合わせ場所に着くと達矢さんはすぐにクラクションを鳴らして私に合図を

した。私はエンジンをかけたまま外へ飛び出すと、達矢さんの元へと走り、

車の外に出て私を待ってくれている達矢さんの首に抱きついた。

「ごめんなさい‥あの時は、あんな風にあなたを傷つけて…」

達矢さんは私を抱きしめると

「いいんだよ、僕の方こそごめん…」と呟いた。

“この温もりが私の本当の居場所、それを忘れちゃいけないの。”

私は目を閉じながら自分によく言い聞かせた。


「…達矢さん、私ね、あなたにプレゼントがあるの。」

私は達矢さんの手を引いて自分の車へと連れて行くと

「はい、これ。まだ少し早いけどクリスマスプレゼント。」と

座席に置いてあった紙袋を手に取り、達矢さんに差し出した。

「何?」

達矢さんは嬉しそうに、私の顔を一旦見ると

「開けてもいい?」

と子供みたいに目を輝かせた。

「うん。開けてみて‥」

私は笑いながら頷くと達矢さんは

「あ、でも中に入ってもいい?寒いから‥」

と言って車の方を見た。

「ええ。」

私を車に乗り込むとルームライトをつけた。彼は助手席に乗り込むと早速包みを

開け始め

「んっ?ブーツ…あはは赤いのカッコイイね。ありがと。」

と目を細めた。

「達矢さん赤なんて自分では買わないでしょ。それにこの赤すごくいい色なの

だから目にした途端気に入って‥」

「うん、嬉しいよ。ありがとう。」

彼は嬉しそうに私を見た。

「あれっ涼子さん、髪型変えた?髪の毛染めたの?」

「ええ、どう?似合う?ちょっとイメチェンしようと思って‥」



俺はその時、何かが違っていると感じた。

座席の位置がいつもとは違っていたし、何より車の中に入ってすぐ、いつもは

するはずのないタバコの残り香がそこにあったからだった。

ここ最近、確かに誰かを乗せた気配がまだそこに残されていた。

『まさか…いや、きっとそうだ。あいつをここに乗せたな‥』


俺は彼女を試してみることにした。

「涼子さん、最近誰かをここに乗せた?」

「‥えっ、どうして?」

「‥ん…なんかタバコの匂いが…」

彼女は明らかに動揺していた。

「あ、えっと、タバコ…会社で匂いがついたのかな…今日お客さんがタバコ

吸ってたから、それでかな…」

「そう‥なら、そうかもね…」

彼女は俺の目をきちんと見なかった、目が合うとすぐに目を逸して…

『乗せたんだね…』


「あの…達矢さん忘年会楽しかった?」

彼女は慌てて話題を切り替えた。

「ん…ああ楽しかったよ、」

「カラオケ行きたいね‥今度。あ、そういえば私、今週の金曜日忘年会なの…」

「金曜日?何時から始まるの?」

「えーと19時半よ」

「そう…楽しんできて‥」

「ええ‥」


俺は後をつけるつもりでいた。会社の行事だからもちろんあいつも一緒、

そして正々堂々と家を出られるわけだから…忘年会が終わったら二人きりになる

こともできる。よし…

俺はこの後、彼女に忘年会の会場を聞き出し、頭の中で計画を練っていた。



「このブーツ気に入ったよ、ありがとう。」

俺は彼女に礼を言うと車から降りた。窓越しに手を振りながら彼女を見送ると

自分の車に戻ってから大きく息を吸い込んだ。

「香水も新しくしたんだね…」

暖房の風が、彼女の香りが移った自分の服を撫でて車内にその存在を残した。






今日は涼子さんの会社の忘年会の日。

俺は計画通り、会場となっている店に行って二人を見張ることにした。

開始予定時刻の5分前になると彼女は姿を見せ、車を停めると小走りで店の中へ

入って行った。

「彼女らしいな…」

思わず苦笑いをしながら彼女の後ろ姿を見送った。

宴会の開始時刻を20分ほど過ぎると俺も店内に入って行き、一般のテーブル席に

着くと、時折奥の方から聞こえてくる笑い声や大きな声をBGMに食事をした。



1時間ほどそこにいると車に戻った。シートを倒して足を伸ばし、タバコを吸い

ながら入口を見張っていた。

21時半を過ぎた頃、急に賑やかになったかと思うとグループが数名出て来た。

俺は慎重に目を凝らして見ているとその中に彼女の姿を見つけた。

多分従姉らしき女の人と笑いながら、そしてその後を少し間隔をおいてあの男が

ゆっくりと歩いて出て来た。

彼女は従姉らしきその女の人が運転する車に乗り、あいつは男を数人乗せて、

3〜4台に分かれて駐車場から出て行った。

俺はゆっくりシートを起こすとエンジンをかけ、すぐに後を追った。



「カラオケか…どこも同じだな‥」

やがて彼女達はカラオケ店に入って行き、2時間ほどすると外に出て来た。

「じゃ、お願いしますね。」

彼女の従姉らしき人はそう言うと1人で車に乗り、帰って行き、彼女は他の女の人

と別の車に乗り、駐車場を後にした。

後をつけると、最初の忘年会の会場に戻り、挨拶を交わした後、彼女と南は

それぞれ自分の車に乗り、駐車場を出て行った。

「あれ?…帰るのか…」

そう思いながらも彼女の後をつけると案の定、途中から自宅とは違った方向に

車を走らせ、24時間営業の量販店の駐車場に入って行った。

そして数分後、あいつが現れると彼女はあいつの車に乗り込み、車はすぐに

出て行った。



俺は猜疑心の塊になって必死に後をつけて行った。

二人のシルエットを見つめながら、自分の気持ちと戦いながら、静かに後を

つけて行った。

『どこへ行くんだよ‥なあ…』


結局、彼女を乗せた車はホテルに入って行った…

…あはははは。俺はふいに笑いがこみ上げてきて、そして無意識に携帯電話を

取り出すと彼女に電話を掛け始めた。

呼び出し音が聞こえて‥そして、






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