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ヤドカリ
酒のアテにしようと買ってきたつぶ貝を流しに置いたところで、電話がかかってきた。
「え? 入稿サイズ違ってました? あとPDFも?」
書斎に戻り、ファイルを再送する。流しに戻ると、貝が転がっていたので拾ってトレーに戻す。ざるに開けて水洗いした所でまた電話が鳴った。
「はいはい、色が……あー、在庫がないわけですね。別のにします、はい」
それ、一回目の時点で絶対分かった奴だろ。考えながら色見本を開き、似たような色にデザインを変更して再送する。今度は面倒くさくなったのでこちらから電話をかけて確認すると、何故だか高飛車に「これなら問題ないです」と返答が返ってきた。
やれやれ、と台所に戻ると、また一つ貝がザルから飛び出している。ザルの中に戻し、鍋に塩水を入れる。沸くのを待っていると、もぞもぞとザルに戻したばかりの貝が動いた。見ていると、小さな目と鋏が恐る恐るといった風情で出てくる。
「……」
動き始めた貝をつまむと、鋏と目が引っ込んだ。とりあえずその貝を別の皿によけた俺は、残りの貝をお湯の中に放り込んだ。




