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金魚
「なあ、カルキ抜きある?」
あるけど、と答えて駅に向かう。お祭りの残滓とともに駅前に屯する人間のうち、一番背が高く黒い浴衣を着たのが電話の主だ。隣に侍らせているのは去年と違う女だ。
俺が近寄ると、「あ」と手を上げた彼は躊躇なく手に持った金魚を差し出してきた。
「飼うんじゃねえの? なんで人にカルキ抜き持ってこさせたんだよ」
「いや、考えてみたら金魚とかいらねえし、やるよ」
「……あっそ」
腹立たしさを隠さずに金魚を受け取り、家に戻る。バケツの中に作ってやった水に放してやると、二匹の小赤は怯えたように隅の方に固まった。はあ、とため息をつきながら予備のエアーポンプを繋ぐ。
横にある水槽では、餌の時間と勘違いした金魚たちがわらわらと水面に寄ってきていた。
いま来た子たちより一回り大きいのが去年の子。それより二回り大きいのか一昨年の子。一昨々年とその前は、もう大きさがあまり変わらなくてどちらがどちらか分からない。
「……金魚すくいなんて今時屋台探すほうが大変なのに、ねえ」
金魚と一緒に押し付けられた焼きそばは塩辛い上に伸びていて、祭りの雰囲気の中でなければ食べたいとも思わないような代物だった。




