カラカラ
乾いた鉢に、水をあげる。下から水が出てくるまでたっぷりと。
「それさあ、本当に芽出てくるの? もうどんだけだっけ……一週間? 二週間? 大分経ってない?」
昨日と何か変わったところはないだろうか。しゃがみ込んで土の表面を見つめていると、部屋の中から呆れたような声がした。
「やっぱガセつかまされたんじゃないの? 今時花の種なんて……。そうじゃないにしても、もう鳥か虫に食べられたか、中で腐ってるかしてるって」
「そんなことはない……と思う、けどなあ」
確かにちょっと怪しい行商人だったけれど――嘘を吐くような人には見えなかった、と思う。そして私は毎日こうやって鉢を見ているが、良くも悪くも今まで変化は一切ない。
室内に入ると、固形食糧と紅茶が用意されていた。私が鉢を見ている間に彼女が用意してくれたのだろう。
「種買ったりしなかったらここに缶詰もつけられたのに」
「なによ、『花の種買っていい?』って聞いた時私より乗り気だったくせに」
「そりゃあ……だって、見てみたいじゃない」
口をとがらせながら、彼女は鉄製の腕でシェラカップを摘まみ上げた。
「むかし、この星に植わってたっていう『植物』とやらの姿をさ」
カップに口をつける彼女の向こう、窓の外には、一面の赤茶けた荒野が広がっている。




