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トマト【おばけとカフェと、オーナーと】
ふつふつと煮詰まっていくうちに、鍋の中から漂ってくる香りは尖ったフレッシュなものからまろやかで円熟したような雰囲気のものに変わってきた。
――これ、いつまでやればいいんだ? 中火で二十分とか嘘じゃん。
お裾分けをいっぱいもらったから、と軽い気持ちで始めたケチャップづくりだったが、「煮詰めるだけ!」の煮詰める部分がこんなにめんどくさいとは思わなかった。
何か間違えているのかもしれないが、いくら経っても鍋の中はベシャベシャのままとろみのつく気配がない。
だが私は賢いから知っているのだ。ここで「じゃあちょっと放っておこう」などとするとあっという間に焦げ付いて今までの苦労が水の泡になることを。
「なんだ、まだできねえのか」
「悪うござんしたね」
キッチンに顔を出した同居人は、鍋に近寄ってきたかと思うと手に持ったスプーンを中に突っ込んだ。
「へえ、うめえじゃん。『自家製ケチャップ使用!』つってメニューに使っても良いかもな」
「……なら、もっと作りますよ」
そう言ってくれるなら、と思う私はきっとチョロいのだろう。




