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雨音
ざあ、という雨音に混じり、玄関の扉を叩く小さな音が聞こえた。
「……!」
弾かれるように扉を開ける——が、アパートの廊下には誰もいなかった。左右を見回して立ち尽くす私の顔に、軒先から垂れた大きな雨粒がぶつかる。
しばし考えてから、さっきドアを叩いたのはこれだったのだろうと気づく。
(そう……だよな)
分かっている。彼が帰ってくるはずなどない。何を期待しているのだろうか。
ため息をついて扉を閉める。すぐに開けられないようにチェーンまでかけ、布団の中に潜り込む。
頭まで布団に潜り込み、目を瞑る。耳を塞ぐが、細やかな雨音はどこかから忍び込んでくるようだった。
また扉を叩く音が聞こえたが、私はじっと体を丸めたままでいた。




