番占い
「午前零時ぴったりに学校の池にコインを投げ込むと、自分の番の姿が水面に映し出される」
いつからか知らないが、こっそりと学校内で囁かれている噂だ。
そんなの眉唾だ、怪しいにもほどがある――そう思いつつも、その日夜中に寮を抜け出した僕は、こっそりと渡り廊下を通り、池の前に立っていた。
――だ、だって、だって……気になるじゃん!
αとして生まれたからには、やはり自分の番がいるのかいないのか、いるとしたらどんな容姿なのか気になるのである。
自分でも馬鹿だと思う。でも、こっそりと試すぐらいしてもいいじゃないか。
墨のような水面に、ドキドキしながらコインを投げる。月明かりにキラリと光った銀貨は放物線を描き、思ったより大きな音を立てて水面に落ちた。
息を殺して池を覗き込む。
自分の顔のすぐ後ろに、見慣れた、でも、自分ではない顔が映っていた。
「ぎゃあああああぁむぐっ」
叫びながら振り向く。すぐ後ろに立っていたルームメイトに、慌てた様子で口をふさがれた。
「な、なんで君が……」
「なんでって、そりゃ夜中にこそこそ部屋出てったら気になるだろ」
まさかこんな目的とは思わなかったけど、と見慣れた顔のルームメイトがニヤつく。
「で? どんな顔が見えた?」
「どんなもこんなも……君も見ただろ、僕と君の顔が映ってただけじゃないか」
池に背を向けて歩き出す。
「……帰ろ」
やっぱり、こんなおまじないに効果なんてあるわけないんだから。
「だな」
そう返してくるルームメイトの声が弾んでいることに、僕はまだ気づかなかった。




