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第六十八話 氷結研鑚戦


 目の前に現れた存在は真っ黒で輪郭しか分からないが、それは僕の本体である"氷像"だ。

 【夜】もそう言っていた。


 それを一人で相手にする……と。

 【氷】を【氷】である僕が?


 「無理ゲー……ってやつかな?」


 でも、その無理ゲーを攻略することで僕は僕だけの"概念武装"を手に入れることができる。


 いつのまにか隣にいた【夜】は消えていた。


 なんなんだろう、この人。

 まぁ、いいや。


 僕は氷の槍を構築し、構える。


 「さぁ、おいで……僕の、偽物くん?」


 氷像は倒れ込むように前のめりになり、その巨大な拳が落ちてくるように迫って来る。

 僕は妙に素早いこの攻撃を避けることは諦めて、腕と足に氷を纏わせて操作することで身体強化を行いつつ、氷の槍を両手に握り、受け止める。

 

 「おっもぉぉい!!」


 拳と地面に挟まれて押しつぶされそうになる。

 

 「根性っ!!!」


 氷像の拳に僕の氷を纏わせ、操り、拳を持ち上げる。

 ほんの少しだけできた隙間を作り、全力で足に力を込めて、抜け出す。


 吹き飛ぶように何度も地面に叩きつけられるが、上手く体制を立て直し、膝をつき、氷像を見上げる。


 身体中に氷を纏わせ、強化する。

 

 

 「ブリザード•マーシャルアーツ!!」


 足に力を込め、地面を破壊しながら氷像の体を目掛けて跳躍する。

 

 「ぶっ倒れろ!!」


 足に纏わせた氷の形状を変化させ、鈍器のようにして氷像の体を蹴る。

 氷像にヒビが入り、氷像が姿勢を崩して後ろに倒れる。

 

 手を上に翳して拳を握ると中空にいくつもの氷の塊が現れる。


 「擬似……流星群っ!!!」


 氷の塊と共に落ちていき、拳に氷を纏わせる。

 

 氷像が立ち上がりつつも腕を動かし、振るわれる。

 

 「ぎゃっ」


 思ったよりも早く動いてきた氷像の拳に殴られ、吹き飛ぶ。(僕の可愛い頬が歪んでいるのを感じる……)

 出現させていた氷の塊を呼び寄せ、砕き、生まれた氷の粒でクッションを作り、衝撃を殺す。

 

 「ぐぇっ」


 それでも速度は落ち切らず、再び地面とキスする羽目になった。


 思っていたよりも体が痛い、が。

 

 無理やり立ち上がる。


 服についた砂埃を払って、髪を整える。


 よく考えてみると、概念武装の取得方法を僕は知らない。

 身の回りの概念武装持ちを思い返してみようかねぇ……


 サクラの概念武装は、なんかグロいドロドロで人間の築いてきた歴史を能力に落とし込む感じだよね?

 アレはなんか規格外って感じで超カッコいいから、僕もやってみたい。けど、人の歴史を知らないから僕が持ってたら宝の持ち腐れになるのかな?


 彩花の概念武装は、不思議な刀をどこからともなく召喚するっていう単純なものだよね。

 ちょっと、よく分からない詠唱?を行うとその刀の形状が変わるけど、変化した後の刀は本能的に恐怖を感じてしまう。

 アレはすっごく、怖い。どう頑張ってもアレを手に握って戦えるようにはなれないよ。


 どうも、二人とも外れ値な感じがして正統派な概念武装を知らない気がするんだよなぁ……僕が。


 でも、怪異の戦いは拡大解釈が重要なんだってカイロで誰かが言っていた気がする。


 「拡大解釈……あぁ、サクラの概念武装も人間の力の拡大解釈……ではないか……」


 頭を捻っていると、目の前の氷像が拳を振り上げ、襲いかかってきた。


 再び体を氷で強化して後ろに飛んで拳を避ける。

 次から次へと氷像が腕を振り回すように攻撃を放って来る。


 「ほっ、ぷ、ステップ……」


 リズミカルに攻撃を避けてる最中にふと、頭の中で一つの単語がよぎった。


 "同格"という単語だ。氷像と僕の実力は完全に拮抗していて、双方のどんな攻撃も決定打になり得ない。

 まぁ、質量的に氷像の攻撃は結構やばいけど、避け切れる範囲だから拮抗しているとする。


 まぁ、そんな中で【夜】の言葉も思い出したんだよ。


 「氷を凍らせてみよ……か。」


 【夜】は世界を見透かしたような態度をとる奴だから、僕の概念武装のあり方も見透かしているのかもしれない。


 それを踏まえたうえで、僕と同格の【氷の怪異】の偽物を倒すには、【氷】の力で上回るには、たしかに、氷を凍らせる力を手に入れるのが必須?


 「でもー、それってわけわからないじゃん?」


 『ちょっとだけヒントをあげようか?』


 いつの間にか【夜】が隣で僕と一緒に氷像の攻撃を避けていた。

 

 「なんで?」


 『何に対しての疑問だ?』


 全部だよ。

 

 『凍らせるものは、氷じゃないけど、氷だからな。』


 「はぁ…」


 『あと、概念武装は自分を見返すと手の中に収まるかもね。ちなみに、サクラと彩花は外れ値だから、考えちゃダメだ。』


 やっぱ外れ値なんだ。


 「自分を見返す……浸れってこと?」


 『自分の出自やいろんな事を思い浮かべて、回想するんだ。自分探しってやつだな』


 「なるほど……」


 納得すると、隣にいた【夜】は消えていた。

 

 「なら、」


 立ち止まり、拳を構える。


 「一旦、止まって。」


 周囲の氷を操りながら、襲いかかってきた氷像の拳に僕の拳を叩きつける。

 氷像の拳が砕け散り、その破片を足場にして飛び上がる。


 「ブリザード•マーシャルアーツ!!!」


 氷像の顔に向かって蹴りを叩き込む。

 鈍い音が響き、氷像が倒れる。

 僕はその上に立ち、これまでを、サクラと出会うまでを思い出す。


 ーーーーあれは、何年前かな?

 ーーーーもう、わからないけど、

 

 ーーーー僕は、【氷の怪異】の心から生まれた。


 最初の記憶は、一面の氷景色だった。

 

 どこまでも続く絶対零度の世界に僕は産まれたんだ。


 「私は、何者なんだ?』


 混濁した意識の中で、恐怖、怯え、あらゆる負の感情だけはしっかりとこびり付いていた。


 『私は、何に怯えているんだ?」


 ふと、空を見上げると、【炎の化身】がナニカと戦っていた。


 そのナニカに対して僕は懐かしさを感じた。


 そして、【炎の化身】には底知れぬ恐怖を感じた。


 なるほど、僕はあのナニカから産まれて、【炎の化身】に対して僕は負の感情を抱いていたのか。

 

 でも、なんか嫌な感じがする。

 産まれたナニカに対しても僕は負の感情を抱いているんだ。


 「全部……嫌いなのか?』


 自分の胸に聞く。が、返事はない。


 空の戦いが激化していき、攻撃の余波が僕の方に向いてきたから、逃げるように走り出す。


 『なぜ、私は逃げているのか?」


 死にたくない。


 「あぁ、本能か。』


 がむしゃらに走り、何度も日が昇り、日が落ちているのに僕は走り続けた。

 

 怖かった。怖かったんだ。


 すると、氷の景色が終わり、荒野が見えてきた。

 まるで境界線のようになっていて、僕はその先に踏み入ることができなかった。


 「入ってはダメな場所……』


 本能がそう言っている。でも、こんな本能、まやかしかもしれない。

 走る中で思った。


 僕は作られた存在かもしれない。と

 だから、この心で稼働する感情は偽物かもしれない。と


 『はいってみよう。」

 

 境界線を超え、向こう側に踏み入った。


 僕はそこで産まれて初めて暖かさを知ったんだ!!

 僕の凍り切った心はその暖かさによって溶かされたんだ!!

 

 「わぁ!!あったかい!!」


 思えば、そこが郡山レンの人格が構築された瞬間だったんだ。


 そこで僕は人を知るんだ。


 荒野を歩いていくと、一人の女の子と出会った。


 「お姉さんは、どこからきたの?」


 「僕?僕はね……どこから来たんだろうね」

 

 女の子は頭を傾げる。


 「君の名前は?」

 女の子の頭を撫でる。


 「私はね、アイラ!!」


 僕はアイラと仲良くなって一緒にアイラの家に向かった。

 道中、不思議な生き物を見た。


 「カンガルーって言うんだよー」


 初めて見たその生き物はお腹の中に子供を入れていて、可愛かった。

 

 「可愛い……ね」


 「でしょ?カンガルー、超可愛いの!!でも、ちょっと危険なんだよ?だから、近づかないほうがいいかも!!」


 アイラは優しく僕に色々教えてくれた。


 「ここが、私の家!!」


 アイラの家族は身元の不明な僕を受け入れてくれた。

 アイラの家での生活はとても楽しかった。


 そして、そこで僕は多くを知った。

 急に現れた【氷の怪異】の被害を急に現れた【炎の怪異】が抑えてくれている事を。


 ここが【炎の怪異】の庇護下である事を。


 そして、今は【炎の怪異】が押されているという事を。


 「いってきます!」


 その日はやけに冷える日だった。


 僕とアイラは毎日、外で木の実を取る仕事をしていた。

 今日も今日とて、アイラと二人で木の実を探していた。


 その瞬間、僕の心の中にあらゆる負の感情が巡った。


 風が吹き、気がついた。


 「【氷の怪異】……」


 アイラがつぶやいた。

 

 僕は思い出した。


 そうだ。そうなんだ。


 ここは、【氷の怪異】の冥界だったんだ。


 ーーーーー


 後から知ったが、【炎の怪異】が疲弊した結果、【氷の怪異】が勢力を強め、アイラ達の住んでいた集落は氷の冥界に包まれてしまったようだ。


 「なんで、僕だけ……」


 氷が侵食し、アイラ達が目の前で氷屍人とよばれるゾンビに作り変えられていった。

 

 それを僕は見ているだけだった。


 何もできなかった。


 僕は無傷だった。


 「あぁ、僕は……あの境界線を超えちゃダメだったんだ……」


 その日、僕は初めて絶望した。


 そこから僕は人の住む地に足を踏み入れることをしなかった。


 「アイラ……もう一度、会いたいよ。」


 あの日、アイラが氷屍人になった日、僕はその事実を受け止められずにその場を離れたんだ。


 だから、僕は氷屍人を解放しつつ、アイラともう一度会い、その命に引導を渡すために冥界を駆け巡った。


 ーーーーー


 何年もの間、僕は一人でオーストラリアを駆け巡り、僕はついにアイラと再開した。


 「ごめんね……アイラ」


 僕は物言わぬ屍人であるアイラに引導を渡し、歩き出した。


 心は救われない。


 だから、自分の本体を倒さないといけない。


 そんな中で空に亀裂が入ったんだ。


 心が躍った。


 「舟……」


 アルトライがオーストラリアに侵入してきたんだ。


 ーーーーーこれが記憶。


 「僕は、アイラのために戦っていたんだ。

 本体を、【氷の怪異】を許さないから戦ってきたんだ。」


 概念武装に繋がる記憶はなかったけど、原点を見つめ直せた。


 足蹴にした氷像を睨む。


 「氷を凍らせるには、氷であると認識しちゃいけないんだ。空間を、その概念ごと凍らせればいい。」


 氷像に手を当てる。


 小さく息を吸い、吐く。


 「アイラ……僕は頑張るよ」


 ーーー概念武装……空間凍結……


 氷像は凍りつき、うんともすんとも言わなくなった。


 冷たくない。概念の凍結。


 「これが、僕の概念武装だ。」


 自分を見返すだけで手に入るのなら、もっと早く見返すべきだったな。

ご精読ありがとうございました。


レンの回想、必要だったかな?

まぁ、今しかないか。


王国の心にハマって1ではアルテマウェポンを完成させ、鎖記憶をクリアして、2に踏み入ってました。ドッジロールってあのフォーム以外で使えないの?調べたくないから模索してました……

頑張って更新します。

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