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スキル:薬草調合

ある穏やかな午後、廉はこの町に住む常連客へ薬を届け終えると、店先でのんびりと行きかう人々を眺めていた。


「平和だー・・・」


そう呟き、ゆっくりとコーヒーを啜ると、ふいに店の前に見慣れない顔の男が現れる。


「いらっしゃい」

廉はそう言うと、男は深々と頭を下げ、お久しぶりです、と話した。

「・・・どなたですか?」

「アッシュです。以前少し先の森で会った・・・」

そう言うと、廉はあぁ!と立ち上がった。

「アッシュさんでしたか!すみません、以前は鎧みたいなのを着ていたので・・・」

「たしかにそうですね。今日は休暇を頂いているものですから、私服なんですよ」

そう言うと、似合っていますか?と腕を広げ、シンプルなシャツを廉に見せた。

真っ白なシャツに、ズボン。そんな個性のない地味な恰好だというのに、アッシュの顔が百点満点なせいでなぜか洋服も輝いて見える。

実際、騎士団は給料も良いだろうし、服だって高級なものかもしれないが・・・。


廉はそんなことを考えながら、アッシュに尋ねた。

「ところで、何か御用でも?」

「あぁ、そうでした」

アッシュはそう言うと、持っていたカバンから何やら包み紙のようなものを取り出し、それを開いた。

開くとそこには、何種類かの薬草が入っている。


「風邪薬に使う薬草ですか?」

「すごいですね。これを見ただけで何の薬か分かってしまうのですか」

「こちらの世界に飛ばされる際に、どうやら薬の知識が身に付いたようで・・・大抵の薬は分かるようになりました」

照れながら話す廉を見て、アッシュは続けた。

「実はこの薬、私の住む街の調合屋で調合してもらっているものなんですが・・・」

「・・・?」

「私の弟が、合併症を起こしてしまったようで・・・もともと身体の弱い子でしたからこの薬をずっと飲んでいたのですが、これだけでは効き目がなくなってきたようなんです」


どうやらアッシュには弟がいるらしい。

アッシュが言うには、弟は少し離れた小さな村に住んでおり、薬草の知識に富んだ調合士がそこにはいないらしい。

医者の質もあまり良くはなく、アッシュは休暇を使っては弟のために自分の住む街で調合してもらった薬を届けているようだった。

しかし、合併症を起こした弟に効く薬の作り方が誰にも分らず、そんな時アッシュは森で出会った廉のことを思い出し、この店に来たという。


「貴方なら弟の病に効く薬を作れるのではないか、と藁にも縋る思いでこちらに来たという訳です」

アッシュは、力なく笑うと、弟は私の宝物なんです、と言った。

弟のいる廉は、そんなアッシュの気持ちが痛いほどわかった。喧嘩もするし、鬱陶しく感じることもあったが、それでもたった一人の兄弟。兄からすれば、かけがえのない宝物なのだ。


「薬草の調合は、任せてください。ただ弟さんに会ってみない事にはどんな薬草を必要か分からなくて・・・僕も一緒に、弟さんのところへ連れて行ってくれませんか?」

そう伝えるとアッシュの顔はパッと明るくなり、もちろん!と笑った。


「明日にでも、お願いできますか?明日稼ぐ予定だった生活費と、薬草の調合費用、その他諸々、全て私がお支払いします。その程度のお礼はさせてください」

騎士団というのはどれほどの稼ぎがあるのだろうか。

廉には到底、分からない世界であった。

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