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面会と修復

蓮斗「.....よぉ、目が覚めたか。」

その言葉を発したのは私の眠る病室の壁にもたれかかった少年だった。

フェル「...君は?」

蓮斗「あんたらが殺す目標に認定したガキだよ。」

フェル「という事は、君が黒王戦鬼かい...?」

蓮斗「そうだ。」

私の問に少年は頷く。その目には感情なんてものは無く、ただ冷徹に、私の方をじっと見つめていた。

フェル「私の事、許せないだろう.....?操られていたとはいえ、国を急襲して、死傷者まで出した。私は、稀に見る大罪人だ.....」

蓮斗「正直、今でも今回の戦争に納得出来ないし、納得する気も無い。だが、アンタも人質を取られた上で操られてた事も知ってる。だから、アンタだけを責めるつもりもない。」

フェル「少年...君の名前を聞かせてくれないか?」

蓮斗「祇梨蓮斗だ。」

フェル「祇梨蓮斗か...いい名前だ。」

蓮斗「話は変わるが、アンタらを操ってた黒幕は俺ともう1人の処刑対象で制圧した。もう、人質を取る奴はいない。」

フェル「モリアーレを、倒したのかい?」

蓮斗「最初は滅茶苦茶強いのかと思ってたんだが、拍子抜けするくらい弱かったよ。」

フェル「弱い、か.....アレでも大災害なんだよ?」

蓮斗「大災害...アルドやフェレドールと比べると圧倒的に弱かったな。」

フェル「アルド、フェレドール...パンデモニウムの大幹部か。はは、それに関しては言ってはいけない。大災害の中でも強さは変動する。君の言った2人は大災害の中でも上澄みも上澄み。モリアーレとは比較出来ない程の高みにいる。」

蓮斗「そういう物か.....それで?アンタは俺の言った事、覚えてるんだろうな?」

フェル「言った事?」

私は祇梨蓮斗が口にした言葉に覚えが無かった。その様子を察したのか、祇梨蓮斗はため息混じりに口を開く。

蓮斗「忘れてるだろうな、あの時、アンタ意識ほぼ無かったし。じゃあ改めて言ってやる。アンタは死刑になるのは生ぬるい。生きて、傷付けた人々に償い続けろ。」

フェル「.......!」

祇梨蓮斗が口にした言葉、それは予想もしていないものだった。大罪を犯した私に彼は、生きろと、そう言ったのだ。

フェル「良いのかい...?私は君の命を狙ったんだぞ?こう言ってはなんだが、敵に甘すぎないか?」

蓮斗「はぁ...甘いだのなんだの勝手に言ってろ。俺にとって死はただの終わりだ。大罪を犯したと思うなら、生きてそれを償うのが道理だ。」

祇梨蓮斗は自身の考えを私に伝えた。そこに嘘偽りは無く、本心だとすぐに理解した。

フェル「甘い。ですが、良い考えですね。君が示した道だ、私はその道を進みましょう。」

蓮斗「そうしてくれると助かるよ。」

そう言いながら祇梨蓮斗は微笑む。

蓮斗「フェルテレス、ちょっといいか?」

フェル「どうしましたか?」

蓮斗「なんか、気分が.....とても、悪い.....!」

そう言いながら祇梨蓮斗は膝を地面に着く。あまりに突然の出来事、私はすぐに反応する事が出来なかった。

フェル「どうしました!?どこか具合が.....?え?」

地面に崩れ落ちた少年を見て私も慌ててベットから降り背中を摩る。その時、私の目にありえない光景が飛び込んできた。

フェル「血が...!本当に、どうしたんですか!?」

祇梨蓮斗の顔を見れば、鼻血に加え、血涙や吐血まで引き起こしていた。

蓮斗「なん、だ、これ.....?」

祇梨蓮斗自身も今自分の身に何が起こっているのか理解していない様子だった。出血は止まること無く、床は祇梨蓮斗の血液で赤く染まっていく。

フェル「治癒系統最上位魔法・生命之癒」

私は遅れながらに治癒魔法を発動させる。しかし、治癒魔法の効果が現れず、事態は一切動かない。焦りにより冷や汗が出る。そんな時だった、下手の外から何人かの慌てる様な、走る音が聞こえる。その走る音が部屋の前に着いたタイミングで扉が勢い良く開かれる。そこには私と戦闘を繰り広げた荒山厳十郎や国防軍の団長達が勢揃いしていた。

荒山「フェルテレス、話したい事は多いが今はその小僧が先決じゃ。何があった?」

フェル「不明です、突然膝を着いたと思ったら出血し始めました。治癒魔法も効きません!」

荒山「どうして突然.....まさか!」

荒山厳十郎にはなにか思い当たる節があるのだろうか、突然団長の方に振り返る。

荒山「東雲!今すぐ祇梨清和と祇梨紗奈を呼べ!事態は一刻を争う、急げ!」

東雲「了っ!」

荒山厳十郎が即座に指示を出し行動する。私はその場に倒れる祇梨蓮斗に手を伸ばす。だが、その手は叩き落される結果になった。

清水「動かないで!」

西野「変な動きを見せれば、アンタを殺す!」

その言葉と共に国防軍団長達が私を取り囲む。その目には疑いと混乱の感情が刻まれていた。

フェル「分かった、何もしない。だが、話だけは聞いて欲しい。」

竹内「話...?」

フェル「少年...蓮斗君は私との会話中突然倒れたんだ。なんの前触れも無く。気分が悪いとも言っていた。」

星見「突然?本当になんの前触れも無く?」

フェル「本当だ。会話している途中突然気分が悪いと言い始めて、その次のタイミングには崩れ落ちた。」

荒山「どういう事じゃ?儂はの推測では冠位の権能を使った反動かと思ったが、違うのか?」

私を含む7名が何が起こっているのか分からない。そんな時、祇梨蓮斗が意識を取り戻し口を開く。

蓮斗「頭が、痛い...魔力の流れが、おかしい...!」

荒山「蓮斗!意識が戻ったか!」

祇梨蓮斗の出血はまだ収まっていない。だがこの時、私はある事に気が付いた。

フェル「蓮斗君、君、黒王戦鬼の力と君の力が拮抗してないか...?」

私の目には祇梨蓮斗の魔力回路が映っていた。その魔力回路は3分の2が黒王戦鬼に蝕まれていたが、どうしてかは不明だが、今この瞬間祇梨蓮斗の力が蝕まれた魔力回路を奪取している。

荒山「七つ目の最上位魔法と番外魔法か!」

そう、祇梨蓮斗はアルベシアでの戦いの際自身の許容を超過した出力で黒王戦鬼の力を使った。それにより肉体と魔力回路が侵食された。だが、七つ目の最上位魔法と番外魔法の習得により、押されていた均衡が持ち直し、祇梨蓮斗本来の肉体の魔力回路に戻ろうとしていた。

荒山「つまり、これは肉体と魔力回路の修復に対して起こる拒絶反応か!」

フェル「拒絶反応であれば、治癒系統で抑えられる!ですが、蓮斗君に私の治癒魔法は効かなかった。」

荒山「それは蓮斗が持つ特殊異能の影響じゃ。ある一定より下の存在では蓮斗には干渉できん。じゃが、疲弊している我らも同じ、一体どうすれば...」

その場に存在する強者達が全員沈黙する。命をかけて戦った者の苦しみを和らげることすら出来ず、歯痒い状況が続く。が、その状況を変える者達が部屋に入ってきた。

紗奈「大丈夫?蓮斗。」

清和「出血が酷いな。着いて早々だが、始めてくれ。」

紗奈「分かったわ。」

部屋に入ってきた人物、それは祇梨蓮斗の両親である祇梨清和と祇梨紗奈だった。祇梨清和と祇梨紗奈は軽く会話を交わすと祇梨紗奈は蓮斗君の頭上にかがみこんで額に指を当てる。そして、

紗奈「権能解放〝癒之聖域〟」

祇梨紗奈が口にしたのは魔法などでは無く最上位に位置する権能の名だった。一瞬耳を疑ったが、それを事実と言わんばかりに蓮斗君の身に変化が起きた。

フェル「出血が、収まっていく.....!?」

私がどれだけやっても収まる事の無かった出血が徐々に落ち着いていく。それは紛れも無く魔法を超えた奇跡、神の権能そのものだった。

紗奈「蓮斗、気分はどう?」

蓮斗「母、さん.....先程より、だいぶ楽に、なりました.....」

紗奈「そう、なら良かった。」

蓮斗君はその言葉を言い終えると同時に意識を手放した。出血は完全に止まり、顔色も先程よりも良くなっていた。

フェル「貴女は、一体.....」

清和「口外禁止だぞ?紗奈は世界でたった一人の権能を所持する純人間、冠位番外認定者だ。」

フェル「...実在したのか。」

冠位番外認定者、力は一般人と変わらないが、生まれた時より権能を保有する突然変異の稀有な存在。

荒山「祇梨!蓮斗の角が!」

その言葉を聞いた私達はすぐに蓮斗君を見る。すると蓮斗君に額に生えた角が徐々に崩れていっていた。

清和「黒王戦鬼との力の均衡が元に戻ったからだろう。心配はいらない。」

フェル「良かった...」

清和「お前も、蓮斗の意識が戻ったら改めて話をしろ。その方が本心で語り合えるだろうしな。」

フェル「そうさせてもらう。」

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