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鮎の塩焼き定食

ヒスイのお品書き


ヒスイ「ようやく平和な日常が帰ってきた!!


本日のお品書き

・シルバーフィッシュ


お姉ちゃんの寝起き顔っていつもと全然違うんだよね」

昨晩は気持ちが高ぶって上手く寝付けなかった。2人の前世と今世のことを妄想してたら、妄想が膨らみに膨らみまくって大変だった。危うく魔力が制御できなくなって、誰かにスキルや魔法を付与しちゃうところだった。寸前のところでうちの可愛いモフモフたちが止めてくれました。というより布団に2匹が入ってきて妄想よりも目の前のモフモフが勝ったと言った方が正確だ。


コクロの「腹減った!!」といういつもの目覚ましで起こされた俺は、顔を洗って作業用の作務衣に着替えて厨房に向かう。


「お前ら朝飯なにがいい?」


献立を考えるのは主婦の最も頭を悩ませるところだ。昨日と同じ食材だと栄養が偏るし、残っている食材や調味料を考えて作らねばならない。面倒で汁物の具材を同じにすると「また同じやつかよ」と言われる。もちろんイメージはコクロが発する言葉だ。


「久しぶりに魚がいい!!」


「いいですわね。塩焼きにしてご飯とお味噌汁、お漬物でよろしいんじゃないでしょうか」


それなら時間に余裕があるから卵焼きでも追加でつけてやろう。


「よし、今日は古くから愛される日本の朝食定食でいくぞ」


米は事前に洗って水にさらしていたものをかまどにセット、火の魔石を使ってじっくり炊いていく。


魚は森からコクロがとってきた鮎に似た魚、鑑定したら“シルバーフィッシュ”という魔物だったが、食用可でかなりの大きさがあるので見つけたら狩ってきてもらっていた魚だ。味もほぼ鮎に近く、腸をしっかり除去することで泥臭さも消える。本当なら全部処理をして丸々塩で焼ければいいのだが、小型犬と同じぐらい大きい魚なので処理をしたものをぶつ切りにして、調理する。


切り身に塩をまんべんなくまぶして水気が出てくるまで放置、水気を拭きとって骨などを除去、切り身にバツ印の切り込みを入れて網でじっくり焼いていく。川魚に限らず、魚は切り身の状態で塩をまぶしておくと水分が出てくる、これは臭みなどを消す手法だと聞いた。酒などを振りかけてもいいのだが、今回の川魚はその野性味も味の一部なのであえて臭みを完全にとらないでおく。


卵焼きは甘いものと出汁を入れたものの2種類。西城に特別に作ってもらった卵焼き機で元の世界と変わらないものが作れる。昔は油をしっかりひかないで作って張り付いた卵を無理やりはがしてスクランブルエッグにしたことを思い出しながら手際よく卵焼きを完成させる。


汁物は葉物と豆腐の味噌汁。葉物は裏庭でとれたほうれん草のような野菜、こちらの世界では家畜の餌として育てられているものらしいが、栄養価もありしっかりと下茹でして灰汁をとれば元の世界のほうれん草と同じような味になる。


漬物はやはりきゅうり、今回はちょっと趣向を変えて梅肉と一緒に漬けたものだ。きゅうりを適当な大きさに切ったものに細かく叩いた梅肉とはちみつ、塩昆布を入れて揉んだものだ。


これらを皿に乗せてごはんをよそえば完成。コクロとハクトとヒスイは通常の3倍は食べるのでその分増やしている。


「いい時間だし、みんなを起こしてきてくれるか。子供たちはコクロとハクト、ヒスイは西城を起こしてきてくれ」


万能メイドのユーリは今頃庭にある畑に水でもやってくれているだろうから俺が呼びに行く。


「本日の朝食も大変おいしそうですね」


行こうとしたらすでに店内のテーブルに着席して待っているユーリに少々驚く。


「ずっとそこにいたなら声くらいかけてくれればいいのに」


「いえ、お料理をしている隼人様の邪魔はできませんし、私がこの席についたのはほんの数秒前です。畑の水やり、洗濯、お掃除は朝のうちに終わらせておきました。本日は天気もいいので、隼人様のお布団もすでに干してありますよ」


俺が厨房に立っていた数十分の間に家事をすべて終わらせてくれちゃって、本当に優秀だこと。


「お、おはようございます」

「おはよう」

「・・・・・・」


ハイネとロビンはぐっずり眠れたようだがまだ慣れていない様子。西城はまだ半分眠っているようだ。足元でヒスイが必死に西城の足を押している。


「朝食ができているから座って待っててくれ。ユーリ悪いけど配膳手伝ってくれ」


「かしこまりました」


配膳を終えると各々のペースで食事を始めた。


「このお魚おいしいですね。脂ものってますし、塩加減も最高です」


「このお漬物もおいしいわね。梅と一緒に漬かっててさっぱりしてるわ」


ユーリと西城はゆっくり味をかみしめるように食べている。別卓の獣たちはすごい勢いで米が無くなっていっている。箸も使わず器用に食べると毎回関心する。


ハイネとロビンは最初こそ食事に警戒をしていた様子だったが、一口食べると次々と口におかずを運んで行っている。どうやら気にいてくれたようだ。


「どうかな?使ってる食材は違うけど、極力元の世界と同じような料理にしたつもりだど」


「お、おいしいです。なんだかホッとする味ですし」


「まぁ悪くねぇ味だな」


二人にも好評なようでよかったと安堵して俺はようやく安心して朝食にあつけた。


「さて、2人にはこの後話がある。ユーリは悪いけど外でリュートさんの出迎えをお願いできるかな。多分それほど遅くないうちに来るとは思うから」


「かしこまりました。お庭のお掃除でもしながら待機しております」


これからの話はハイネとロビンの話だ。これからの2人のことを確認しなければいけない。


「さて、今回はハイネとロビンとして話をしないといけないことがある。まずは、今後のこと、君たちがここにいる理由は分かってるかな?」


「えっとお父さんたちが殺されて、面倒を見ていてくれたリュートさんが隼人さんたちに私たちを預けた、ですよね」


「そう、でもリュートさんは育児放棄とかをしたわけじゃない」


「俺たちの親を殺した犯人を捜すためなんだよな。最初の目的はそれだったろうけど、今は俺たちの体を治すためなんだよな」


「ロビンの言う通り、でもそれも解決した。それに君たちの親を殺した組織も見つけた」


正確に言えばロキが教えてくれたんだけど、そこは割愛。


「あなたたちの親の仇は私たちが必ず打つ、これは約束するわ。問題はそのあと、私たちとしては、あなたたちの意思を尊重したいけれどどうしたい?このままここに居てくれてもかまわないし、リュートさんと一緒でもいい。別々に暮らしたいのなら信頼できる里親をさがしてくるわ」


「そのことで昨日牧田さん、ロビンと話し合って決めたのですけど」


「俺たちも親の仇のところに連れていけ」


予想の斜め上の発言に言葉が出なかった。


「そ、それは本気で言ってる?」


「当たり前だろ。この体の持ち主がどれだけ親のことを思っていたかは俺たちが一番分かってる。親が殺されたことは悲しいし、腹立たしい、そんな感情だ」


「でも、今の私たちは幼く知識も力もない。だからってお二人に甘えていい理由にはなりません。本当だったら自分たちの手で仇を打ちたいと思っていたみたいです」


ロビンとハイネがやたらと冒険者にこだわっていたのはこれだったのかもしれない。早く強さを手に入れて、アマンダさんやロイドさんを殺した犯人に自分たちで仇を打とうとしていたのか。


「あなたたちの言い分は分かったわ。連れていくかどうかはこの場で即決はできない。相手は大きな組織、あなたたちを守り抜けるか分からない。だからこれについては時間を頂戴。それで、仇を打った後はどうする?」


「できれば、この世界のことや生きていくために必要な知識や力を教えてほしいです。教えていただけるのであれば隼人さんでもリュートさんでも構いません」


「元々将来の夢は冒険者みたいだったし、俺たちも冒険者になることは面白そうだと思ってる。相沢は別の道も探したいみたいだがな」


「そうですね。元の世界では窮屈な生活をしていたので、できれば自由に自分の道を選びたいと思ってます。冒険者もその選択の一つかと」


女子高に通っていたと言っていた相沢さん、もしかしたらお嬢様とかだったのかもしれない。それにしては最初こそおどおどした様子だったのに一晩で随分しっかりしてきている。ヤ〇ザの牧田さんとも一応コミュニケーションはとれているみたいで安心した。


「俺がこんなことを思うなんて思ってもみなかったがな。親なんて金と欲にまみれた腐ったやつしかいないと思ってのに、親のためにここまで言うようになるとは」


「素朴な疑問なんだけど、記憶が混ざるってどんな感じ?」


「そうだな。すごく鮮明に思い出せる夢って感じか?今は元の世界で生きてきた牧田小太郎が強いから、ロビンとして生きてきた記憶はすごく鮮明に思い出せる夢みたいな感じだ。だけど性別も種族も違ってるからな。もう少ししたらロビンの体に慣れていくのかもしれねーな」


それならいつかロビンが惚れた相手が見つかったときは是非とも妄想のネタにさせていただこう。


「私の方はかなりハイネに寄ってきてます。元の世界であまりいい思い出もありませんでしたから、ハイネの経験した思い出の方が強く出てきてるのかもです。ただ、ハイネだからでしょうけど魔物や動物にかなり惹かれてしまいます。やはり魔物使いの血でしょうか」


ハイネはロイドさんの血をかなり色濃く受け継いでいるように感じる。彼の性格も温和で優しく、動物が好きで好かれる体質だった。


「そうかもしれないな。あと二人とも俺たちの前ならいいが、他の人がいるときはハイネとロビンに戻ってくれよ。ハイネはそこまで違和感はないが、ロビンがそんな男勝りな口調でしゃべってたら他のやつらに俺からの悪影響だとか言われかねない」


リュートさんがそんなこと言うとは思えないが、アモスさんやグラマスのじじい辺りなら言いそうだ。


「本来なら演技みたいで絶対バレそうだが、ロビンの記憶のおかげかロビンになるのは簡単だ。リュートさんに会うのすっごく楽しみ!!」


いきなりロビンの仕草や口調への変わりように若干驚いたがこれなら問題なさそうだ。ちなみに俺の記憶の中で想像した牧田小太郎の勝手なイメージが今の仕草をしている想像をしてしまい、笑いをこらえるのに必死だったことは内緒だ。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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