サウスランドの闇
ヒスイのお品書き
ヒスイ「難しいお話は分からない・・・・でも子供たちは絶対に守ってみせるよ!
本日のお品書き
・人口魔導士
次回ヒスイが大活躍!!お楽しみに!!!」
「隼人様、リュート様がお見えになりました。こちらにお通ししてよろしいでしょうか」
「ああ、こっちの部屋に通してくれ。それからお茶の用意を、ついでに俺たちにのも頼む」
「承知いたしました」
ここからはリュートさんも交えての話になる。主にアマンダさんとロイドさんを殺した組織についてだ。
「遅くなってすまんな」
相変わらずの強面巨漢、その実とても優しい声が特徴のリュートさんがやってきた。
「お久しぶりです。こちらこそご足労いただいてすみません」
「いや、ロイドたちのことで進展があったと聞けばどこにでも駆けつけるさ。それに子供たちのことも心配だったからな」
その瞳は優しく子供たちを見ている。ハイネもロビンもリュートさんに抱き着いて離れようとしない。こればかりは前世の人格ではなく本来の2人なのだろう。
「西城から話は聞いていると思います。ハイネとロビンに関してはこれまで通り、というわけにはいかないかもしれませんが、とりあえず命の危険はなくなりました。グリの犠牲はありましたけど」
こればかりは悔やみきれないものだ。本当ならグリ共々助けたかったのだがそれをしてしまうと世界の理に反してしまう。
「いや、それもグリが望んでのことだろう。それにやつはロイドのところへ行ったのだろう。あの寂しがりやな男のことだ。今頃アマンダと共に笑っていることだろう」
そう答えるリュートさんはどこか寂しそうな顔をしていた。
「そのアマンダさんとロイドさんを殺した奴らですが、サウスランド帝国の王国研究院だそうです」
ロキから聞いた犯人は帝国の南に位置している国サウスランド帝国の者の仕業だということ。
「サウスランドだと!!あの国は俺も調べたが特にこれといって怪しいところはなかったが」
失礼を承知で言うが、リュートさんの情報収集能力はそれほど高くない。本人が口下手なのも原因だと思うが、人伝に話を聞くことがあまりなく、Sランク冒険者としての力を使うことをあまり好ましく思わない彼なので、リュートさんの情報収集とはせいぜい街中にいる人たちの噂話を聞く程度だ。
「サウスランドの隠蔽は徹底しているからね。市民に漏れるようなへまはしないでしょ。なんせ王国研究院で現在研究されているのは人造魔導士、人の手で作られた兵隊だもの」
これもロキからの情報だ。というかこれが俺たちに依頼してきた理由。
人造魔導士、現代でいえばクローン。人工的に生命を作り、兵隊として使うことを目的とした殺戮兵器。神や国によって禁忌とされているものの一つだ。
「だが、人造魔導士なんて禁忌とされていてそう簡単に作れるものでもないだろう。いくら国単位で動いているとはいえ」
「もちろん成功例なんて国の禁書でも見つけられないでしょうね。だからこそアマンダさんが狙われたんだと思う。彼女の持つグランディーネの加護は失われた回復魔法、それを使えば人造魔導士を作れると思ったんだわ。そしてそのとき偶然目についたロイドさんも狙われた。人造魔導士とは別に人工的に強化人間を作る研究もされていたみたいだから、魔物と人間を融合させる実験。ロイドさんが狙われたのはこっちが本命ね。グリフィンみたいな高位の魔物を従える力を解明して、実験しようとしたんじゃないかしら」
「そう考えると、この前うちに来た我儘貴族ももしかしたら俺やコクロたちを狙ってたのかもな。フェンリルとはバレてないにしろ、強力な魔物を従えてると思ったのかもしれない」
その時グリや子供たちに合わせなくて本当に良かった。もし、あの貴族がグリや子供たちのことを知っていたら力づくでも奪いに来ていたかもしれない。
「そのような奴が来ていたのか」
「ああ、本人が実験の詳細を知っているかは分からないが、サウスランドの貴族だと大声で言っていたからたぶん国か、一族の偉い人が糸を引いている可能性はあるかな」
「あの時さっさと潰しておけばもっと早く尻尾をつかめたかもしれないけど、今更後悔しても遅いわね」
西城の潰すはその関係者たち全てを対象にするので恐ろしい。本気で潰されれば西城の息が掛かっている場所では生きていけないだろう。まあこの世界で西城の息が掛かっていない地域なんてほんの一握りだろうけど。
「だが悔しいが国相手では流石に手は出せんだろ。オスカー様に願い出てみるか、お前たちならオスカー様とも親しいだろ」
流石のS級冒険者でも国一つを相手にするのは腰が引けてしまうようだ。まあ残りの2人なら問答無用でサウスランド帝国に殴り込みに行くだろうから、常識あるS級冒険者と呼ばれるリュートさんがいかに普通か伺える。もちろん俺も常識あるS級冒険者なんだけどね。
「そこに関しては問題ないわ。今回あたしたちは神の使徒としてサウスランド帝国に信託を下しに行くんだから。そこで神に逆らうような虚偽をするのであれば、滅ぼされても文句は言えない」
「だが、神の使徒を語ること自体が大罪じゃないのか。神への反逆が知れ渡ればいくらお前たちといえども」
心配してくれるのは大変うれしいのだが、神からの信託なのは間違いなく、神の使徒(お使い)ということも間違ってはいない。本当ならロキを称える教会関係者の助力を得たいところだが、そんなことをしている余裕はない。教会は強い力を持っている分、国と同じぐらい回り道が多い。申請を出したとしても俺たちが助力を求める人の元に手紙が行くまでに何か月掛かるかわかったもんじゃない。
「教会にも元々協力を要請していたのよ。信託を聞く聖女様からのじきじきの依頼ってわけ。私たちもまさかロイドさんたちの死にかかわっているとは思わなかったからびっくりしたわ」
それっぽい言い訳を考えてくれた西城だが、流石に聖女様からの依頼だと言って信じてくれるわけが。
「なるほど、それなら納得だ」
納得しちゃった!!
リュートさんは人をもう少し疑うことを覚えた方がいいんじゃないか。昔も明らかに怪しい壺を売りつける商人に何度商談を持ち掛けられたことか。その都度アマンダさんや西城が商人を追い払っていたのはいい思い出だ。
「それでも戦力的に問題があるだろう。3人で1国を相手にするのは…」
よかったリュートさんもまともな思考回路をお持ちだったようだ。
「確かにいくら実力があるリュートさんがいるとはいえ、3人で1国を相手にはできない。だけどやり方は色々ある。リュートさんは卑怯と思うかもしれないけど、国全体に毒を付与した風を送り込むだけでも半数を殺すことはできる」
「待て!!まさか罪もない住民までも巻き込むつもりか」
「もちろん被害は最小限にするつもりだけど、国を攻撃されればその国全員が敵になる。住民は国を追われ厳しい生活を強いることになる。だけど俺たちがしようとしていることはそういう事だよ」
冷たいく身勝手な言い方かもしれないが、禁忌を犯した国の住民を救うことまで俺たちの仕事ではない。事前に勧告はするつもりだし、これからオスカーにも相談して避難民は受け入れるように各国へ通達もしてもらう。西城の商会でもできる限り雇用できるようにしてもらうつもりでいる。
「それでもサウスランド帝国の人口は5万、これから破壊しにいく帝都にも1万の住民が暮らしている。その全てを受け入れるのは無理があるでしょうね。だけど、サウスランド帝国はそれをされても文句を言えない非道な研究を進めている。私たちが手を下さなくても国に申告すれば戦争になって、もっと多くの人を犠牲にすることになるわよ」
戦争ともなれば自国他国ともに犠牲者が出る。それは国民にまで広がり、戦争を隠れ蓑に略奪や人さらいといった犯罪も増える。敗戦国の末路なんかひどいものだ。
「確かにそれを考えれば我々だけで国落としをした方が幾分被害が少なくて済むな。それに関しては納得した。それで肝心の戦力の話だが、我々だけで本当にサウスランド帝国相手にできるのか。個々の力は俺も理解しているつもりだ、隼人のサポートに凛の財力、俺も100人程度なら無傷で葬って見せよう。だが国を相手にするとなれば、いささか戦力が足りないように思うが。俺にも奥の手はあるが、簡単に使える代物ではないぞ」
最も疑問とされるのはたった3人で国一つを潰すことができるのかだろう。だが、これに関してはそれほど問題ではない。
「確かにコクロやハクトも今回は使えない。こいつらが手を貸したことが分かればフェンリルは神の使徒認定されてしまうから」
「私たちは各種族をすべるものです。神と敵対もしませんが、神に忠誠を誓ったわけでもありません」
「聖獣で神の言葉で動くやつはまずいないだろうな。下手に俺たちに命令をすれば俺たちの眷属は神を敵とみなすからな」
聖獣は神と対等な関係らしい。昔話程度でしか知らないが、もともとこの世界は聖獣とその眷属たちが暮らしており、ロキが後から人間を作り共存させたのだという。ロキは聖獣たちと不可侵の契約を交わし、聖獣たちは人間たちを受け入れたのだという。
「人間がいて面倒だと思うこともあるが、こいつらは俺たちには思いもつかないものを作り出す。その最たる者がこいつだろうな」
コクロは上から目線で俺をみる。
「主様のお話は我々では想像できないものばかりですもの、こんなに胸躍る気持ちは過去一度たりともございませんわ」
ハクトはちょっとうっとりした目で俺をみる。
二人ともそんな言い回しをしないで、食い物と恋愛話(BL、TL、少女漫画、百合etc)だと言えばいいのに。聖獣たちって無駄に偉そうな言い方をするのはなぜだろう。
「お、お二方が隼人を気に入っているのはよくわかりました。だが、それならどうやって」
「こういう時のためにいくつか強力な魔道具を西城と一緒に作ってある。威力は保証するけど、連発はできない。こいつを使えば国一つぐらいなら潰せる」
さすがに神から力を貰っていて、神のお使いの時だけ使える力があるなんて言えない。幸いにも魔道具師として西城は超一流だからリュートさんも信じてくれるだろう。
「それなら問題はなさそうだな。凛は相変わらずすごい奴なのだな」
誠実なリュートさんに嘘をつくのは心苦しいが、こればかりは嘘で誤魔化すしかない。
「これでリュートさんの方から聞きたいことは終わりかしらね。それじゃあ今度はこっちからだけど、子供たちを同行させたいの。これは本人たちからの希望なのだけど」
「ま、まさか戦場にハイネとロビンを連れて行く気なのか。流石にそれは・・・」
普通に考えれば非常識極まりない発言だ。だが、両親の仇を取りたいと思う子供たちの心を尊重したい。
「子供たちにはヒスイを護衛につける。分体じゃ守りが心配だから力を分散させないで子供たち優先で守ってもらう。その代わり、俺たちの守りはいつもより薄くなる。全方向をカバーしてくれるヒスイの守りが無くなるわけだからリスクもあるが、子供たちには指一本触れさせないと約束できる」
俺の隣でヒスイが任せろとサムズアップをしている。
「確かに全力で守りに入ったヒスイならば安全だろう。だが、悲惨な光景を子供たちにみせるのは」
「リュートさんお願いします。本当だったら自分の手でお父さんを殺した奴を倒したいと思います。けど僕にはその力はないから、でもただ報告を待つのだけは嫌なんです!」
「私もお母さんを殺した奴が憎い。だけどお母さんはきっと復讐なんて望んでない。だけど安全なところでただ待っているだけなのは嫌!!」
2人ともちゃんとロビンとハイネとして意見を述べていると思う。多少実年齢より大人びたことを言ってしまっているのは見逃してほしい。
「分かった。だが確認させてほしい、これからいく戦場では見たくないもの、怖いものを見ることになる。見たことで一生のトラウマ、心に一生残る傷をつけてしまうことだってある。それでも行きたいと思うか?」
これから行くのは戦場。死体や見たくもない大人の汚い部分、人体実験やその他大人でも吐き気をするほどのものを見ることになる。それを知ったうえで行く覚悟があるのかリュートさんは問いたいのだろう。
実際平和な世界で生きてきた転生者2人には酷かもしれない、子供たちとてまだ残酷な現実に慣れていない部分がある。トラウマとなってしまうことは大いにあり得る。俺も子供たちの意見を尊重するばかりで、ここまで配慮が回っていなかった。
「確かに怖いものをみて泣いたり、叫んだりしてしまうかもしれません。トラウマになってしまうかもしれない、だけど」
「私たちは絶対に克服してみせる。少し悩んで迷ってしまうかもしれないけど、絶対にいつかみんなについて行って良かったと思うから」
「分かった。そこまでの決意があるなら俺からなにも言うまい、だが自分の安全を最優先にして我々の判断には必ず従ってもらう。これはお前たちを守る行為だと理解してくれ」
本当にリュートさんは優しい。一番かたき討ちをしたいのはおそらくリュートさんだろう。ロイドとアマンダさんとの繋がりはここにいる誰よりも長い。そんな彼には申し訳ないが、この戦いでリュートさんの手を煩わせることはないだろう。
お読みいただきありがとうございます。
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