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神とのお茶会

ヒスイのお品書き


ヒスイ「あ、主たちがいないからお品書きが思いつかない!!!


本日のお品書きはこちら

・???

・???


ぐ、グリのおじちゃんの様子が・・・・・」

「まさかここでこのスキルを使うとは思わなかったよ」


スキルを発動させた瞬間俺と西城は光に包まれ別の空間に飛ばされていた。そこは草原、目に映るのは草の緑と空の青だけ。どこまでも続く草原に2つの人影のうち小さな方が最初に言葉を発した。


「数年ぶりの再会を喜んではくれないのね。残念だわ」


隣に立つ西城はこんな状態でも自信たっぷりに口を開く。


「再開も何も君たちのことは時々見ていたからね。それに我々にとっては数年なんて瞬きの時間にも等しいよ。それじゃあ楽しい楽しいお茶会にしようか」


緑の瞳を宿し神々しい法衣をまとった少年、彼こそがこの世界の創造新ロキ。


彼が指をパチンとはじくとテーブルとイス、お茶やお菓子が何もないところから現れた。


「さあお二人ともこちらにお座りくださいな」


優しい声で招いてくれたのはヴェールを被った金髪の女神、彼女こそ生命と豊穣を司る女神グランディーネだ。


招かれるまま俺たちは椅子に座り、向かいにはロキとグランディーネが座る。


「さて、それじゃあ準備もできたことだしお茶会(審判)を始めようか」


俺たちが使ったスキル〝神の審判“は神の裁定を行うスキル。裁定を行いその事案が決議されればその決定事項は世界のルールとなる。


「と言っても今回の案は絶対に許可されないものだと思うけどね。だって死者を蘇らせるなんて世界最大のタブーなんだから」


「私が加護を与えた一族とはいえ、こればかりは決議をしても結果は分かりきっていますでしょうね」


この世界の最高神である2人から言われてしまえばこの審議は否決されるのは必然だろう。


「もちろん、そんなこと分かってます。俺たちは死以外に子供たちを生かす方法がないか、相談に来たんです」


「そもそもこれまでだって、世界には不干渉のはずの神様がこんなに干渉してきたんですもの、今回ぐらい私たちの相談に乗ってくれたっていいでしょ」


神の審判なんて大仰な名前のスキルだが要は困ったことがあればお茶しながら相談することのできるスキル・・・・・らしい。

これまでもロキやグランディーネから呼び出されて相談を受けたことが何度かある。


「まぁ君たちにはこれまで何度かお願いをしているし、こちらの世界での文明レベルも飛躍的に挙げてもらったからある程度のお願いなら叶えてあげたいんだけど、流石に一度失われてしまった命に関してはどうしようも」


「おまちください、あなた」


ロキが悩んでいると隣でお茶を飲んでいたグランディーネが声をかける。ちなみにロキとグランディーネは夫婦らしい。


「あの子供たちの魂は私の加護によっていまだに健在です。さらに未成熟である彼らの魂ならあるいは他の魂を混ぜても問題ないのではないでしょうか」


「なるほど、つまりあの子たちに新たな生を与えるということかい」


「はい、それならば元の記憶を保持したまま生返らせても問題はないでしょう」


えっと、つまりどういうことだろう?


「つまりね。子供たちの魂に君たちのような別世界の者の魂を混ぜる。つまり転生の儀を行えば堂々と彼らを蘇らせることができるというわけさ」


つまりよくありがちな異世界転生をハイネやロビンの体を使って行おうということらしい。


「でもそれだと体はハイネやロビンだけど中身が違うってことにならないかしら」


よくネット小説なんかで読んだ異世界転生ものだと、元の世界での人格がかなり大きくでており元の肉体、つまりハイネやロビンとはかけ離れた存在になってしまうように思う。


「それは当たっていると言えるし、間違っているとも言える。未成熟な精神にすでに成熟しきっている精神を混ぜればそちらに偏ってしまうのは当然のことだろ。だけど元の体に宿った感情や記憶が無くなるわけじゃないし、元の精神が強ければそちらに引っ張られることだってある。結局のところ答えとしては“混ぜてみないと分からない”ということになってしまうね」


「ですが、この方法以外であの子たちの魂と肉体を救う術はありません。もし、このままなんの解決策も出ないようですと、タブーを犯した者として子供たちの肉体も魂も消滅して輪廻へと帰ることになるのでしょう」


やはりただ生き返らせるだけというのは不可能なのだろう。最悪アンデットとして子供たちが生きる許可をもらおうとも思ったが、転生とはまた予想の斜め上をいく案が出たものだ。


「西城としてはどうなんだ?俺としては子供たちが生返れる可能性があるならそちらに賭けようかと思うんだが」


ロキたちの提案は悪くないと思う。いくら前世の記憶があったとしても俺たちとの思い出が無くなるわけじゃない、それを保持した状態でどうなっていくかは育てる者たちの責任だろう。


「私もいいと思う。育てるのが私たちにしろ、リュートさんにしても元があんないい子たちなんだもの。きっとそのまま成長してくれると思うわ。それにあんたのためにもなると思う。だけど先に聞かせて、今回の審議に対しての取引はなに?」


もちろん神さまがタダで俺たちの相談に乗ってくれるわけがない。これまではロキたちからの相談だったことでいろいろな取引をした。悪神の眷属討伐、聖獣たちの仲介役、悪魔軍勢の足止めなど普通の人間では到底できない依頼を俺たちはこなしてきた。もちろんロキたちからもらったスキルや協力者たちに手伝ってもらいながらだが。


その達成報酬というわけではないが、俺たちは都度都度神と取引を交わしている。もちろん世界に影響を与えない範囲にかぎるが。


「そうだねぇ。僕としては隼人君が最初に持ち掛けたオメガバースっていう設定の世界改変は面白そうな案だと思ったんだけど」


「あ・な・た!!」


一瞬大喜びしそうになってしまったが、グランディーネの笑顔からの怒りのオーラ全開の様子を見てすぐさま却下された。いいと思うんだけどなぁ・・・・・


「まあ今回のことなら僕たち側にも多少の利益になる話だから、それに気づいていると思うけど半分ぐらい僕たちの筋書き通りだったから問題はないよ」


「やっぱり、中条が子供たちにあそこまで執着したのはあなたたちの仕業だったのね」


「僕たちがやったことはすこ~し子供たちに同情するように感情を操作しただけさ。ここまで固執するとは思ってなかったから驚いているぐらいさ」


いつのまにそんなことをやられたのか分からないが、俺の精神や肉体に悪影響はないとのことだ。


「むしろ、君の欠落部分を少しでも補う手助けになると思ったほどだったんだけどねぇ」


俺の欠落部分、それは俺が元の世界で手に入れられなかったもの。誰しもが普通に生活していれば当然手に入れられる感情。俺にはその感情が欠落している。


「俺としては無理に取り戻そうとは思わないけどな。“恋”なんて感情なくても死なないんだから」


俺は恋という感情が分からない。誰か一人を特別好きに、大切に思うという感情がわかないのだ。もちろん西城やコクロやハクト、ヒスイも大切な仲間や相棒だと思っている。だけどそれは恋ではない。ギルドの受付にいるお姉さんはきれいだし、かわいいとも思うがそれだけ。だからひたすら純粋な恋を語るBLを俺は好きになった。もちろん少女漫画やTLでも恋を知ることができると思って読んだが、どうもあれは女性視点での物語が進んでいくためか、感情移入がしにくく、いい話だなぁと思うことはあっても、BLほど夢中にはなれなかった。


「なに言ってるのよ!!恋こそ人生、恋なき人生なんて死んでいるのと同義よ!!!愛の伝道師たるこの私がいつか必ずあなたに恋を教えてあげる!!」


俺とは真反対、恋多き人生を送る西城からしたら俺は死んでいるのも同じらしい。


「話を戻して申し訳ないんだけど、今回の転生に関して一つ残念なご報告です。子供たちに関しては当事者ではないということで今回は不問としますが、あのグリフィン助けることはできなさそうです」


「!!でも、グリは自分の生命を分け与えていただけなんですよね。だったら」


「それでもそれは僕たちが定めた禁忌なんだよ」


俺の言葉を遮ったのはこれまでのロキとはかけ離れた怖い口調だった。


「禁忌は誰が、どうして禁忌としたかわかるかい?誰がという問いなら僕たち神がということになる。もちろん国が定めたもの、部族やその地域や界隈で禁忌と定めたものなど様々だが、今回グリフィンが用いた術は僕たち神が定めた禁忌だ。それを破るということはどうしたって救うことはできない」


それはまさに死と同義、世界の理として定められていることを破ることだ。しかもグリは今回のことに深く関わってしまっている。ロキたちも見て見ぬふりはできないだろう。


「今回の転生を行えばグリフィンは死を迎えるだろう。それは僕たちが関わったところで禁忌を犯しているから。こればかりは僕たちでもどうすることもできないよ」


諦めたくはない、ハイネやロビンが無事に生き返ったとしてもグリがいなくてはきっと彼らは悲しむだろう。だけどこれ以上をロキたちに頼むことは無理だろう。


(よいのだ、フェンリル様の主よ)


聞こえてきたのはグリの声。声のする方を見るとコクロとハクトがグリと共にこの草原にやってきていた。


「ど、どうしてここに?」


(我の願いは主の幸せ。そしてその主なき今、それは子供たちの幸せだ。本来なら我と共に死するはずだった小さな命を救ってくれたこと感謝する)


「お前は、それでいいのか」


(もちろん叶うのなら子供たちのそばで見守っていたかった。だが、我が主をいつまでも一人にさせるわけにはいかぬ。主の最後の願い、我には果たせぬだろうが貴殿になら任せられるだろう。できうるかぎりあの子たちを支えてやってくれ)


ロイドさんの最後の願い、それは復讐でも自身の命でもなかった。愛しい我が子たちの幸福、辛いことがあったとき自分の代わりに寄り添える存在。


「グリ、俺の代わりに、そばに、この子たちのそばにいてあげてくれ、これは主としての命令じゃない。友として、俺に仕えてくれた誇り高きグリフィンに対して、俺の最後の願いだ。でも一人だと寂しいかなぁ。俺怖がりだから、いつかお前の天命が尽きたときは、俺のところに来て、くれ、な」


グリが重症のロイドさんから最後に託された願い。それが頭に響き渡る。おそらく命尽きる最後の瞬間の言葉だろう。


(フェンリル様、お見送りいただきありがとうございました。おかげで我の心残りを直接託すことができました)


「お前も大地の上に生きる俺たちの眷属、勇姿ある者の最後を見送るのも務めだ」


「どうかよき旅路の果てに、主君、いえ、友と会えることを心より願っております」


傍らにたつコクロとハクトが遠吠えを響かせるとグリの体は光の粒子となって消えていった。


(優しき我が友よ、今からそちらに参ります)


完全にグリの姿が消えるとコクロとハクトもすぐにその姿を消してしまった。


「全く嫌われたものだね。少しはゆっくりしていけばいいのに」


「俺たちがロキたちのいい様に動いてるのが気に入らないんだろ。うちの子たちは主思いのいい子たちだからな」


グリのことでちょっとしんみりしてしまった空気をどうにかしようとうちの子自慢をしてみたが、完全にすべってしまった。誰もなにも言ってくれない・・・・・別の意味で泣きそう。


「ロキ、大切な話をまだしていないんじゃない。子供たちに別の魂を混ぜる、転生の儀式をするってことは、あの子たちもあなたの都合のいい様に動くおもちゃにするつもり?」


「おもちゃだなんて人聞きの悪い言い方をしないでほしいんだけど。それとも君たち自身がそう思ってるってことなのかな」


「あなたの手の上で転がされている、という言い方をするならそうなんでしょうね。実際今回のことも、ロイドさんやアマンダさんを殺すように誘導したのもあなたなんじゃないの」


西城の言葉でロキは不敵な笑みを浮かべる。こいつは聖人君子の神様じゃない。創造神ロキ、別名“悪童神”と呼ばれるだけあって、考えていることは常に腹黒いことばかりの神だ。


「さすがの僕もそこまではしないよ。ロイドやアマンダが殺されたのは本当に偶然。今回は妻であるグランディーネが愛した一族だったから本当に傍観していただけさ。それに君たちがもう少し神の審判を使うのが遅ければ、こちらからコンタクトをとるつもりでもいたからね。愛する妻の頼みは聞いてなんぼださ」


そうえいばロキは愛妻家でもあったんだった。


「アマンダは私が加護を与えた一族最後の生き残り、今はその娘であるロビンが最後の生き残りとなるのでしょうが。彼女たちを絶やすことはできれば避けたかったのです。旦那様は面白おかしく脚色してやるとおっしゃっておりましたけど」


やっぱりこいつ2人が死んだあとなにか手を加えやがったな。


「まあ2人の死に直接関わっていないのならいいわ。それで子供たちのことはどうなの?」


「そうだね。本来なら君たちと同じように僕たち神々で対処できない事案のお手伝いを頼むところだけど、今回は君たちのように特別な加護を与えることができないからちょっと難しいだろうね。だから結論を言ってしまえば、彼らには普通に生活をしてもらう予定だよ。僕たちから接触することはないだろう。だけどその代わり、君たちには今回の件を最後まで片付けてもらおうと思っている」


「最後まで?」


「もともと頼もうと思っていた依頼だ。おそらく君たちなら喜んで引き受けてくれるとおもうんだけどね。ロイドとアマンダを殺した組織を潰してくれ、跡形もなく、彼らが活動をしていた痕跡を全てだ」


ロキから聞かされたのは思いがけない依頼だった。


お読みいただきありがとうございます。




少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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