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子供たちの秘密

ヒスイのお品書き


ヒスイ「し、シリアスすぎて緊張しっぱなしだった!!


本日のお品書きはこちら

・呪い

・加護


主たちがどっかに消えた~~~~!!!」

初めて子供達、ハイネとロビンに会ったときに分かっていた。この子たちの命があまり長くないこと。


王城でユーリからの知らせを聞いた俺たちは、急いでローゼンクロイツ伯爵の屋敷に向かっている。ダンジョンで別れた子供達は、クロードに預けられそのまま伯爵邸で数日お世話になっている予定だった。クロードや伯爵邸の皆さんに全て任せるのも申し訳なかったので、ユーリを伯爵邸に向かうように指示を出していた。家にある王都にある西条の店につながる扉は当然ユーリも使える。それを使って伯爵邸で待機しているように手紙を送っておいた。


「なるほど、過去に君達がお世話になった冒険者の子供達か。その子たちを預かることになった経緯は分かったけど、その子たちは一体どんな秘密を抱えていたんだい?」


道すがらヴァールに子供達を預かることになった経緯をヴァールに話す。するとヴァールは俺たちがひたすら隠し続けてきた核心を聞いてきた。


「俺たちと会った時、子供達の寿命はとっくに尽きていたんだ。恐らく親であるロイドさんやアマンダさんが殺された時に一緒に殺されていたんだ。だけど子供達はあるものと命を共有することで延命していたんだ」


俺がそれに気づいたのは子供達を鑑定したからだ。最初に気になったのはほんの些細なことだった、子供達から感じられた魔力が、普通の子供に比べて明らかに大きかったからだ。鑑定した結果驚いたことに生命力を表す体力の表示が“0“を表していた。そして体力が0であるにも関わらず生きている理由は、子供たちの取得していた称号が教えてくれた。


「“守護獣と命を分つもの“2人を鑑定したときに見えた称号だ」


「つまり子供達と一緒にいたというグリフィンが彼らを延命させていたということか。だが、いくらグリフィンとはいえ子供2人の命を維持し続けるなど不可能ではないのか?」


その通りだ。グリが使っていたのは禁呪に匹敵する禁忌、自らの生命エネルギーを他者に分け与え続ける危険なものだ。数万年の寿命があるとされる聖獣でも数日から数週間しか延命は不可能だろう。


「その不可能を可能にしたのがアマンダさんだ。彼女は女神グランディーネの巫女だったからな」


女神グランディーネ、生命と豊穣を司どるこの世界の女神だ。俺をこの世界に呼び出した神の一人であり、人々の命を作り出した神とされている。


「グランディーネの巫女とは。随分昔グランディーネの力の一部を受け継いだ一族がいたが、私の記憶では愚かな人間たちによって滅ぼされたのではなかったかな?」


女神グランディーネの加護はこの世界に存在しない治癒魔法だった。だが、当時その力を独占したい国々が多く、その一族を奪い合うためだけに戦争を起こした。癒しの一族であったのに争いの火種になり、いつしか戦いの原因となった一族を不吉の象徴として恐れられるようになり、戦争を終結させるために一族全てを皆殺しにしたという歴史がある。その愚かな行為に怒ったグランディーネは世界から治癒魔法を消し去ったと言われている。


「どういう経緯があって生き残ったのか分からない、アマンダさん本人も知らなかったみたいだし。俺がそれを知ったのも本当に偶然だったしな」


この世界に転移したばかりの頃、鑑定のスキルを使う練習をしていた時に力加減を誤ってパーティーメンバーのアマンダさんを無理やり鑑定してしまったことがある。グランディーネの巫女だと知ったのはこの時だ。


鑑定は相互の許可があって初めて閲覧可能なスキルだ。よくある異世界転生もので鑑定のスキルを楽々使っているイメージがあるが、この世界での鑑定はそう簡単なものではない。よく考えれば鑑定は対象物の詳細情報を読み取るスキルだ。つまり見ようと思えばその対象の隠し事や対象自身が知り得ないことまで分かってしまう、プライバシーも何もあったもんじゃない。制約があるのは当然だと思う。


もちろんこの時みたアマンダさんの鑑定結果は誰にも教えていない。というよりもこの時みた鑑定結果はすぐに忘れようと思いその場ですぐになかったことにした。このことを思い出したのもロビンを鑑定して“グランディーネの巫女“の称号を見たからだ。


「まぁ君の覗き見があってグランディーネの巫女一族を見つけたことはさておき、巫女の力は死した者すらも生きかえらせる力があるとは、いやはや凄い御仁だったのだねそのアマンダという女性は」


「完全に死んだものを生き返らせることなんてできないさ。あくまでもグリが使った禁忌と巫女の力が合わさり偶然起きた現象だ。誰かに何かしらの影響があったときにはすぐに崩れてしまうほどのな」


「隷属の首輪ね。グリがあの首輪を付けさせられた影響で生命エネルギーと魔力が弱まった」


まさかここであのボンクラ貴族騎士が影響してくるとは思わなかった。


「遅かれ早かれいつかはこうなっていたんだ。それまでに2人を助けられる方法を探そうとした。今回お前に相談したかったのも2人を助ける方法だったんだ」


「なるほどなるほど、確かに繋がりや生命という分野は私の得意としているところ、ではあるのだけど、それはあくまで契約という媒体があってこそのものなんだけどね。悪魔だけにwwwwwww」


もうこいつここで殺してしまうのが世のためだと本気で思った瞬間だった。


「ヴァール、私たちは真面目な話をしているのよ。あなたにとっては面白い観察対象かもしれないけど、私たちにとっては大事な仲間が残した大切な子供たちなんだから」


「すまないねリンっち、やはり私たち悪魔と君たち人間ではいろいろと価値観が違ってしまうね。私は他の悪魔よりもかなり人間のことを好きだと自負しているけど、やはりこういうところで種族の差というものが出てしまうのだろうね」


こんな軽口を言っていてもこいつは悪魔皇帝であり、おそらく子供たちを助けることのできる唯一だと俺は思っている。


ヴァールに子供たちのことを説明しているとあっというまにローゼンクロイツ伯爵の屋敷に到着した。屋敷の人たちは俺たちの姿を見ると何の躊躇もなく屋敷の中に招いてくれた。前もってクロードが話を通してくれていたのだろう。俺たちはすぐに子供たちが眠っている客間に通された。


「隼人さん、子供たちが急に!!」


子供たちの状態を知らなければいきなり倒れて、その原因も分からないのだからクロードが不安になっても仕方がない。


「クロード大丈夫だ。それよりグリはどこにいる?」


「グリフィンでしたら子供たちが倒れるのと同時に倒れて今は屋敷の裏にある宿舎で休ませてますけど」


「なら悪いんだがグリをこの部屋に運んできてくれないか。子供たちが倒れた原因はグリにもある可能性がある」


「分かりました!!」


クロードはすぐにグリを部屋へ移動させるために裏庭に駆け出した。さすがにグランディーネの巫女のことやグリの禁忌に関しては話せないので誤魔化しながら手伝ってもらうしかない。


「ヴァール、子供たちを見てどう思った?」


「・・・・・・」


いつもうるさく自信たっぷりに話してくるヴァールの表情は真剣そのものだった。


「これは随分と奇妙なことになっているねぇ」


「奇妙なこと?」


「この子たちを見ただけでは断言はできないが恐らく」


ヴァールの言葉を遮り客間の扉が開かれると荷車に乗せられたグリがやってきた。その様子はいつもの元気な気配は全く感じられず、息をしていなければその姿は死体にも見えるほど。


「隼人さん、グリフィンを連れてきました」


「ありがとう。すまないけど、今から原因を探るから誰もこの部屋に近づかせないようにしてくれるか」


「わ、分かりました。何かあればすぐに呼んでください」


本当ならクロードも残りたかったのだろうが、俺たちの雰囲気を察してくれたのか思ったよりも素直に俺たちの意見を聞いてくれた。


「このグリフィンを見て確信したよ」


膝をついてグリの様子を見ていたヴァールが顔を上げた。


「子供たちを生かしているのは呪いとグランディーネの加護だね。呪いは死んでいる者を生きた屍として動かすもの、グランィーネの加護は魂の定着だね。この相反する二つが互いに干渉して、こんな不思議現象を引き起こしているようだ」


呪いは闇魔法に付随する禁呪の一種だ。悪魔が得意とており、強い思いを具現化させる魔法と言われている。俺たちが一般的に知っている呪いは負の感情を媒介として他人を苦しめたり、不幸にする類のものという認識が強いが、強い思いを具現化させるということは正の感情すらも呪いとして発動させることができるということだ。


「呪いの元、感情の元はおそらくこのグリフィンだろう。何不自由のない温かな家族、送るはずだった子供たちの未来、そんな思いがこの呪いを生み出してしまっているようだ。本来ならこの類の呪いをかけられても死という概念は取り払うことは不可能なのだが、グリフィンが生命力を分け与えてグランディーネの加護が発動したことによって、健康的な体傷を治癒する力を手にして本来天に帰るはずだった魂を繋ぎとめてしまっている。しかしどんな強い呪いや加護でも〝死”という概念から逃れられない。結果死体が生きている人間の姿で行動するという奇妙な現象が出来上がってしまったわけだ」


だが原因である加護と呪いの力がちょうどいいバランスを保てなければこんな現象は起こるはずはない。そのためどちらかの力が強くなったり弱くなったりすればこのバランスは崩れれば動く死体か、魂だけを維持する植物状態と化すだろう。


「つまり今はグリの呪いが弱まって、子供たちの魂だけが存命している状態なのね」


「そういうことだね。今の状態を解決したいなら呪いの力を強くしてやればいい。だけどそれは根本的な解決ではないかな。いつかはグランディーネの加護が無くなってただ動く死体と化すだろうし、グリフィンが生命力を分け与えてようやくグランディーネの加護が発動しているところをみると、遠くない未来どちらも死を迎えて結果としてみんな死んでしまうことになる。グリフィンの生命力が尽きるのが先か、この奇妙なバランスが崩壊してお互い死を迎えるのが先か。どちらにしても世の理を犯していることには変わりないだろうけどね」


「お前ならこの状態をどうにかできるか?」


死という概念を取り除かねば子供たちを救うことはできない。俺や西城、この世界に存在する誰でも死を取り除くことなど不可能だ。ただ一人、ヴァール一人を除いて。


「確かに私なら死の概念を取り除くことはできる。死の概念を取り除けばあとはグランディーネの加護が自然と子供たちを生かそうとするだろう。呪いも子供たちが元気に過ごすのであれば自然と消滅していくことだろう。ただねぇ、人一人の死の概念を取り除くのであれば、その対価は一体いかほどになるのかハーサンは理解しているかい?」


以前のパウンドケーキで済むようなレベルの話ではない。それこそ町一つ生贄に捧げろと言われても不思議ではない。


「もしハーサンが頼むのであればマイ・フレンドのよしみで・・・・・地上に生きるものの命100万で対価とさせていただこう」


「100、100万!!」


「これでもハーサンが言うことだからかなり譲歩をしているんだよ。本当なら200万ぐらいは必要なのだけど、私自身の寿命をざっと200年ほど費やせばそれぐらいの対価になる。それに本当なら人間の死だから人間と限定したいところだけど、命という枠組み内で代用可能と定義してあげてるんだ。これも私が保有する魔力をざっと数年分費やして可能としているんだよ」


それでも理を捻じ曲げることがどれだけの代償を支払うかよくわかる。正直100万もの命を奪えばこの世界の生態系は崩れてしまう。それはイコール世界の破滅を意味している。


「実質不可能ということなのね」


「君たちが求めている結果だけを出すことはできるが、君たちが求めている世界という言い方をするのならば不可能だね。私個人の見解としては早く魂を解き放ってあげることが一番だと思うけどね」


もしこの子たちが生きながらえたとしても、彼らはイレギュラーな存在として様々な苦労が待っていることだろう。それでも俺はロイドさんやアマンダさんが残したこの子たちを見捨てることができなかった。


「自分の趣味を優先してゆっくりスローライフを送れればそれでよかったのになぁ」


「中条やめなさい!!それは使わないと約束したはずよ。どんな望みがあろうと私たちは人の枠をでることをしないと!!」


今のこの状態を打破できる方法がひとつだけある。俺と西城が隠している、いや封印したこのスキルを使えば。


「すまん西城、自分でもここまでこの子たちに執着するとは思わなかった。だけどロイドさんやアマンダさんの子供という以前に、俺にとってもかけがえのない存在となってしまったこの子たちを見捨てられない」


「・・・・・・はぁ~、あんたがその顔で言ったことを絶対に曲げないのは知ってるわ。私も昔わがままに付き合ってもらったし、今回は私があんたのわがままに付き合ってあげる」


俺は一体どんな顔をしていたのだろう。

それはそれとして、なんとも頼もしい相棒を持ったものだ。西城には度々助けられているが、今回ほど頼もしく思えたことはない。


「どうやらこの状態を打破できる方法を試すようだね。おそらく私にできることはないだろうから、ここは静かに君たちの生末を見守らせてもらおうマイ・フレンドたちよ!!」


「ヴァールもありがとな。全部上手くいったらとびっきりの定食をご馳走するよ」


ヴァールの言葉を聞き終えて俺はようやく決心ができた。


「それじゃあ始めよう。西城」


「ええ、いくわよ」


「「スキル発動、神の審判」」


スキルを発動させると辺りは眩い光に包まれた。

お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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