悪魔封印
ヒスイのお品書き
ヒスイ「悪魔なんて主にかかればイチコロだもんね。
本日のお品書き
・封印
・予期せぬ事態
なんだか大変なことが起こっちゃたみたい」
まずい、非常にまずい・・・・・・
私はただ、効率よく魔力を集めていただけ。そのおかげで村同士であらそいがおきて 結局両方とも村は滅んじゃったけど。
それが数十年前に見知らぬ魔導士に封印されてしまった。決して油断していたわけじゃないのに、圧倒的な魔力と技術で悪魔である私をいとも簡単封印した。見た目は普通の人間だったが正直もう会いたくはない。
だから偶然封印が解けたとき、次はより権力の強い人間に取り付いて少しずつ魔力を集めようと決めた。
そこで目をつけたのがあの貴族の子倅だ。奴の欲望は帝都内でもかなり強く,さらに父からかなり甘やかされていた。私には好都合の相手だった。
簡単に魔力を集められるはずだった。あの平民に執着しなければ・・・・
平民風情ならばと少々甘く見ていたことは認める。最初のグリフィンを手に入れることを失敗したとき大人しく手を引いておくべきだった。いくら王の盟友という肩書きがあったとしても王本人が不在なら父である大臣の権力でどうにでもなるとたかを括っていた。
「(まさかこんな強力な結界で逃げ道を塞がれるとは思わなかった。おまけにどういう手段を使ったのか私がこいつを依代にしていることがバレてしまっている)」
悪魔である私が人間に居場所を知られるはずはない。悪魔と人間では生きている世界が違い,同族出なければ居所を感知することはできない。それなのに相手はこの小僧が身につけているものに私が宿っていることを調べ上げて結界をこの地下牢限定で張り巡らしている。明らかに私の居場所を知っている。
「(だが,まだ逃げ出すことはできる。この結界はあくまでも魔力を感知して出入りを制限するものだ。だが,ペンダントに完全に隠れてしまえば魔力を感知されることは一切ない。この小僧はもうダメだろう,こいつの父親である大臣か牢を警備している騎士にでも渡して逃げてしまえばいい」
そうとなれば早速小僧にペンダントを渡すように言いくるめなければ。
「オゼット・カール,王命により身に付けている装飾品を押収する」
これはチャンスが巡ってきた。このままペンダントを外に持ち出してくれれば隠蔽魔法を最大限に使って逃げることができる。
「ま,待ってくれそのペンダントだけは!!」
この馬鹿が!!それではペンダントに秘密があることがバレバレではないか。
「ダメだ!これは王命である,逆らうことは許されん。拒むというなら力尽くで押収することもできる」
“ここは素直に渡すのが賢明ですよ。大丈夫,ここで私がいなくなってもあなたのお父様が必ず助けで下さいます。なにせあなたに全く非はないのですから“
こう言えば小僧は必ずペンダントを渡す。すでにこいつの精神は完全に掌握している。
思惑通りペンダントは小僧の手を離れた。このままペンダントに少しの間身を潜めよう。数日は警戒が強いため,逃げ出すなら数日経った後だろう。今は身を隠すことに専念しよう。
しかしここで予想外のことが起こった。小僧の所持していたアクセサリーの類は全てある箱に入れられてしまった。しかもその箱には外の結界とは比較にならないほど強力な封印魔法が施されている。このまま箱に入れられてしまえば自力で抜け出すことは不可能。かといってこのままペンダントから離れてしまえば外の結界で私の居場所がバレてしまう。
しかしよく考えればそこまで焦る必要はない。押収された装飾品は恐らく徹底的に調べられる,そして調べるためには箱を開ける必要がある。その時手にしている者を次の標的にしてしまえば良いだけだ。
だが,この後箱が開けられることは二度となかった。
「随分とあっさり封印させてくれたものよね」
オゼットが所持していた装飾品は全て押収して封印が施された箱に入れることができた。目の前にはその箱が置かれ調べてみるが封印が破られそうな気配もない。オスカー様やヴァールにも調べてもらったが問題はないようだ。
「あの場でスポイルが取れる行動はこれしかなかったからね。あの場で依代であるペンダントから離れてしまえば見つかるのは確実。こちらに悪魔に対して索敵ができる者がいると分かっていれば,攻撃されると思っても無理はない。そしてスポイル自身の戦闘能力はほとんどない」
「だから封印されると分かっても依代から離れるわけにはいかなかったわけね。オスカー様とヴァールが作った結界で行動を制限して,中条が悪魔封印を付与した箱を作ってそこに封印する。単純な作戦ね。作戦とも呼べない代物だけど」
正直スポイルの居場所さえわかればそこまで怖い相手ではい。後はこの封印箱を城で厳重に保管してもらえれば万事解決だ。
「この箱は城の宝物殿で厳重に保管する予定だ。大臣やその家族たちの処罰も決まったことだし,これで全て解決したわけだ。今回はご苦労さんだったな」
オスカー様は今後の事後処理があると言ってさっさと俺たちの前から姿を消していった。
「ヴァールはこの後どうするんだ?その体すぐにダメになるようなもんじゃないだろ」
ヴァールが今憑依しているのは西条が作った人形だ。もちろんただの人形ではい,悪魔が憑依できるようにするために伝説級の素材を惜しげもなく使った最高級品。もちろん西条のスキルと素材がなければ作り出せない代物だ。しかもどんな悪魔でも憑依できるわけではなく,悪魔一人一人特注で作らなければならないらしい。西条曰く「こんな面倒な品二度と作りたくないわね。コストはかかるし,制作時間も半端ない,悪魔たちにとっては喉から手が出るほど欲しい代物だろうけど,需要に対して生産が追いつかない。こいつをいくつか量産したら絶対悪魔たちから狙われるから,二度と作らない」らしい。
ヴァールとしては自分専用の人形さえ出来れば問題なかったようで,西条に量産をさせる気は無いようだ。
それでもいつまでもこの人形に憑依できるわけでは無いらしく,数日間憑依させるのがやっとだとか。おまけに人形に憑依している間は本来の力の半分ほどしか力を振るうことができず、憑依後の人形はメンテナンスをしないと使い物にならないそうだ。そのメンテナンスも数週間から数ヶ月かかるらしく、完全な憑依人形を作ることはできないそうだ。
それでも悪魔がこの世界を自由に動き回れるのは一部の例外を除いてあり得ないことなので、西条が作った人形がいかに凄いものなのかはよく分かる。
「そうだねぇ。後数日はこの人形に憑依は可能だろうから自由気ままに遊ぶつもりだったんだけど・・・ハーサンは私に何か相談事でもあるのかな?」
この悪魔に協力してもらうことは本当は嫌だったが、背に腹は変えられない。すでに時間は刻一刻と過ぎているのだから。
「お前に相談したいことが、いや協力して欲しいことがある」
「いいよ、ハーサンのお願いなら大抵のことは聞いてあげる。もちろんタダじゃ無いけどね」
正直今回頼むことはこの世の理から外れる行為だ。だからヴァールにどんな対価を求められるか分かったもんじゃない。それにこいつですらこの問題を解決することができないかもしれない。だけど恐らくこの世界でこの問題を解決できるのはこいつぐらいしか思いつかない。
「中条あんたまさかヴァールにあのことを頼むつもりじゃないでしょうね」
西条の顔がとてつもなく怖い。俺がヴァールに頼もうとしていることは西条が最も嫌うことでもあったから。
「中条も分かってるだろ、もうこいつに頼む以外に道はないんだ。それともお前は見捨てるのかあの子たちを」
「違う!!私は理を犯してしまうことを嫌っているのよ」
「ヴァールは理の範疇だ。俺たちと違ってな。それに時間もあまり残されていない、恐らく近々」
「隼人様、凛様!!大変でございます!!」
俺の言葉を遮るように部屋の扉が開かれ、家で待機しているはずの万能メイドがいつもの余裕な表情からは想像がつかないほど慌てた様子で飛び込んできた。
「ユーリ、まさか!!」
「はい、隼人様が予期していた事態が起こってしまいました。ハイネ様とロビン様がお倒れになって意識不明の重体でございます」
俺の予想を遥かに上回る展開だった。
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