雪原の錬金術師クロメ
次回から、四天王狩り編始まり。雪原編で頼りなかったクロメが、盗難多発の国で大暴れ。新しい仲間に、初めての召喚獣、派手な技も取得! パワーアップしたクロメ達が、強敵たちを倒していきます。
「ただいま。シノキ」
「おかえり、クロメ」
やっぱりシノキは笑顔で迎えてくれる。でも彼女に出会った頃はあんまり笑っていなかったような。まあいいか。
「修行、大成功だったよ!」
私は両手をあげて、成功をアピールする。
「どれどれ、おお。すごく強くなってるじゃない。がんばったのね。ならこれをあげるわ」
コインのようなものを、何枚か私にくれる。
「コイン20枚よ。これで好きなものを買うといいわ。すべての国で使えるわよ」
「ありがとう。太っ腹だね。」
「はいどうも。盗まれないようにね」
「はーい」
このコイン、どうやって使おうか。うーん。というかコイン20枚がどれだけなのかもよくわからないな。わかっているのは、マジカル頭脳きのこがコイン1枚ということだけ。
おいしいものを食べるのに使うのはどうだろうか。おいしいものにすべて使ってしまえば盗まれる必要はない。お腹の中の食べ物はさすがに盗まれないだろうしね。
盗難対策のアイテムを買って、あとは貯金するのはどうだろうか。お金はあったほうが安心だし。
問題があるとすれば、盗難対策のアイテムが売っているか、また売っていたとして、それがどれだけ通用するか。高レベルの盗みスキルには通用しないかもしれないしね。
お金の使い道を考えてみるが考えがまとまらない。
いろいろ考えても仕方ないや。これは私のお金になったんだし、使いたくなったら使う。それでいいや。ご飯食って寝よ。
「ふはぁ~おはようシノキ」
両手をあげてあくびをしながら朝の挨拶をしてみたものの、隣を見てみれば、彼女はまだ眠っていた。
「気持ちよさそうに眠っているね」
そういえば私、シノキに頼ってばっかりだな。寒くて困ってるところを助けてもらって、家に住ませてもらって、特訓だってしてもらった。私からも彼女にできることがあればいいんだけど。
このお金で贈り物をするというのはどうかな。あ、でもこのお金は彼女から貰ったものなんだよな。恩返しとしては、ちょっと違う気がするよ。
そうだ。自分でプレゼント作っちゃえばいいんじゃん。よし。早速お買い物。朝食食べた後、万事屋に直行しよう。
万事屋 雪の輝石にて
「らっしゃいませー ここには様々な商品が売られていますよ」
眼鏡をかけた店員さんが声をかけてきた。とりあえずよさげなアイテムを探す。
・万能鍋 ランクE 10コイン
アイテムの調合に利用できる。また、この中に入れたアイテムに魔力を込めると変化が起こることも。
・遠心分離機 ランクF 5コイン
特定のアイテムの作成時、成功率が上がる。また、一部のアイテムを分離できる。
・鉄の鎧 ランクE 20コイン
頑丈な鎧。(被ダメージ-10)
・砂糖 ランクF 2コイン
主に料理の材料に使われる。甘くておいしい。
・丈夫な布 ランクF 3コイン
防具の材料に使われる。
・安全爆弾 ランクE 10コイン
一回きりだがモンスターに大ダメージ。ただし、人にはダメージを与えられず、地形を破壊することもできない。
このあたりが結構よさそうなアイテムだね。どれも魅力的だけど、シノキへのプレゼントを作らなきゃいけないからね。鎧と爆弾はあきらめることにして、それ以外を全部買っちゃおう。
「ただいまー」
「おかえりー」
挨拶を終えた後、私は早速万能鍋を取り出した。うん。立派な鍋だね。魔力でアイテムを変化させられるって書いてあったけど、なんだか楽しそう。けど、その前に。
次に私は遠心分離機を取り出した。これなら樹液の品質をあげることができるかも。まず粗悪な樹液を遠心分離器にかけることにした。
鍋のような装置に粗悪な樹液を入れ、スイッチを押す。そして容器を二つ用意し、遠心分離機にセットする。しばらくすると二種類の液体が容器に注がれてゆく。
・普通の樹液 ランクG
木から取れた液体。木のかすが少しあり、品質があまりよくない。
・汚い液体 ランクG
濁っている液体。使い道はあまりない。
遠心分離機でも、完全には木のかすを取り除けないみたい。何度か普通の樹液を遠心分離器にかけてみたけれど、何も分解できなかった。
遠心分離機の実験も終わったし、いよいよ万能鍋を試してみることにした。
万能鍋に普通の樹液をセット。そして魔力を注いでみる。私の魔力はたったの4、成功する可能性は低い。それでも試してみる。
・汚い液体 ランクG :濁っている液体。使い道はあまりない。
失敗だ。まあ予想通り。もう一回やってみよう。
私が鍋の中の樹液に魔力を入れると、樹液は次第に固まってゆき、ぱちぱちと音を立てながら分裂を始める。黒くて小さな塊が沢山出来上がった。
この黒いのは何だろうな?
・ミニマム爆弾×10 ランクD :カッ、キーン、ドーン。とても小さな爆弾。だが、破壊力抜群。
何だ、これは。
本日の訓練により、能力アップ
魔力 4→7 3up
器用 7→9 2up
鍋の中に入れた樹液が、なんと、たくさんの小さな爆弾に変わってしまった。
ロケットのような形をしたその爆弾は、小指に乗っかるほど小さい。とても危険な物には見えないけど、一応扱いには気を付けるようにしよう。
今度はアイテムを合成してみることにした。シノキの喜ぶようなものを作ろう。
何と何を混ぜようか考えてみる。何が出来上がるかは完全にはわからないけど、いれる素材によってはある程度は予想出来ると思う。
作りたいアイテムを考えて、それを作れそうな素材をいれていこう。
というわけで作りたいアイテムを考えることにする。
そうだ。洋服にしよう。私は前、シノキにコートを貰ったから、お返しとして、今度は私が洋服をあげよう。
素材は布の服と、丈夫な布、それから普通の樹液も入れてみよう。
布の服を鍋に入れ煮る。そして、万能鍋についてきたお玉でかき混ぜていくと、次第に色が変わっていく。
いい色になったところで、丈夫な布を入れる。そのまま混ぜていくと、丈夫な布が溶け出していき、布の服と混ざりあってゆく。そこですかさず普通の樹液を鍋に注ぐ。
丈夫な布がうまく混ざり合ったところで、お洒落な服の形に変わっていく。成功したみたい。
お洒落な服完成!
やったあ!大成功。これで服はOKだね。ついでにもう一つ何かプレゼントしよう。
私は砂糖と普通の樹液を混ぜてみることにした。
二つの素材を鍋に入れ火をかけると、すぐに二つが合わさり、形を変えた。
ランクE 砂糖菓子
砂糖が固まってお菓子になったもの。甘くておいしい。
うん。おいしそう。シノキもきっと喜ぶよ。早速渡しに行こう。
「シノキ、シノキ~」
「どうしたの、クロメ。もうすぐお昼のお肉が焼けるわよ」
彼女は不思議そうに首をかしげながら、そろそろご飯ができることを伝えてくる。
「私、今までシノキに頼りっぱなしで、でも私はなにもしてあげられなくて。やさしさに甘えてばっかりで。だからこの感謝を伝えたいの。これ、受け取って」
私はお洒落な服と砂糖菓子をシノキに手渡す。
「これは、洋服? すごい。可愛くてかっこいい。そしておしゃれ。こんなきれいなお洋服、いいのかしら?」
彼女が目を輝かせながら私の手をつかんでくる。
「シノキのためにさっき作ったんだ。コートをもらったお返しに。シノキにはかっこいい服が似合うと思ったんだけど、可愛いのが好きそうだったから、可愛いくてかっこいいデザインにしたんだよ」
「すごい、これクロメの手作りなんだ。ありがとう。この砂糖菓子もおいしいわね」
砂糖菓子を一粒食べながら、シノキが感想を伝えてくる。そして。
「あなたはさっき、私に何もしてあげられてないって言ってたけど、私はクロメからたくさんのものをもらっているわ」
「わたし、なにかしてあげてたの?」
「ええ。弓矢の練習、したわよね?」
「うん。したけど」
「あの時、すっごく楽しかったわ。あなたの弓は全然当たらなかったけど、くじけることなく弓矢を打ち続けて、なんだかまぶしかったわ。弓矢が私に命中することもあったけれど、ほんの少しだけ敵に当たった。その時、わたしはすごくうれしかったの。やっと当たったんだな、って」
「漆の話をしてくれた時だって、私はすごくドキドキしたわ。木から出る液体を芸術に使うなんて、全然考えられないことだった。とても興味深かった」
「あなたは私にいろいろなものをくれたわ。ホントにありがとう」
「クロメはこの後、旅に出るのよね?」
「うん」
「この家から、出て行っちゃうのよね」
「うん」
シノキは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔をこちらに向けた。
「それじゃあ、旅が終わったらまたここにきて。旅の話をいっぱい聞かせてほしいの」
「うん。絶対に戻る! 旅のお話、まっててね」
なぜか私の目からは涙が出ていた。涙は頬を通って顎にたどり着く。そして一滴づつ、床へと落ちてゆく。
「クロメ、もう行ってしまうのね」
「うん。アクエリアを目指さなきゃ」
いよいよ出発の時がやってきた。シノキともお別れだ。
「出発の前にこれをあげるわ」
彼女が青くて綺麗な丸い石を手渡してきた。
「これは?」
「店で売っていた石を、私が加工したもの」
「きれいだね! ありがとう」
シノキは一瞬のほほえみを向けた後、真剣な顔でこの石の効果について説明する。
「この石は、持ち主を幸運にすることがあるといわれているわ。そして、何となくだけど、この石はクロメの召喚術に関係している、そんな気がするの」
「召喚術に?」
「ええ。召喚のカギを握っている、そんな気がしてならないの」
「それじゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます」
私はシノキの家を出る。短い間だったけれど、かなりお世話になった。ここともそろそろお別れか。なんだか寂しくなるな。そう思いながら雪の中を西に進んでいく。
それにしても雪ばっかだな。モンスターも出てこないし、ちょっと飽きてきたかも。早くどこかにつかないかなぁ。
私は雪の中を少しずつ進んでいく。あれ、だんだん雪が少なくなって、暑くなってきたかも。そろそろ雪原を抜けることができるのかな。
やがて雪がほとんどなくなってくる。そして、雪の代わりにたくさんの岩が目の前に見える。
「うわ、なにこれ。歩きにくそう」
雪原を越えた先には、でこぼこした岩から作られている道が姿を現した。岩ごとに大きさが違っており、この道を進むのはだいぶつらいだろう。
「やあお嬢さん」
こちら側にやってくる少し太ったおじさんに話しかけられた。
「ゴンドラに向かうのかい? 盗難には気を付けるんだよ。おじさんは雪国で商売するためにゴンドラからやってきた商人なんだ」
「この岩場はストーンロードと言ってね。雪国とゴンドラをつなぐ道なんだ。普段は涼しくて通りやすいんだけどね、今日はとっても暑かったからかなり過酷な道だったよ。がんばってね」
「あ、ありがとうございます……あ、そうだ。おじさんは、盗みのスキルについて何か知っていますか?」
「ああ。盗みのスキルはいくつかあるが、その中でも数が多いのが『強奪』というスキルだ」
「強奪?」
「ある程度の近さから対象を一定時間見つめることで、道具をランダムに1つ奪うという能力だ」
「どうすれば防げるの?」
「スキルを使われていることに気づけば無効化することができる。常に周りを警戒することだな。あと、いらないアイテムを多く所持しておくこともおすすめだな」
「分かりました。ありがとうございます」
「いいってことよ。それじゃあな」
「ばいば~い」
おじさんは雪原の方へと向かっていった。
スキル『強奪』について聞いた後、私はコートを脱ぎ、いよいよストーンロードに向かうことにした。
「ぜぇぜぇ、はぁ。もう動けないよ。熱ーい。喉乾いたよ」
地面が岩でごつごつしてるのにもかかわらず、わたしはあまりのつらさから、地面に横たわってしまった。
「背中が痛ーい。けど体が動かないよ」
最初の方はどんどんと進むことができた。高さの変わる足場をどんどんと踏んでいった。だが、次の行動が良くなかった。
私は砂や石などを入手することに精一杯になってしまったのだ。強奪を恐れた結果だ。
雪原にいたことによって、最初は体が冷えていたものの、次第に暑さに耐えられなくなっていき、どんどん力が奪われていったのだ。
体が動かない。でも、こんなところを突破できないようでは、きっと、ほかの国を乗り越えることなんかできないだろう。頑張らなきゃ。
私は起き上がり、再び進み始めた。
本日の訓練により、能力アップ
筋力 5→7 2up
機敏 5→7 2up
持ち物
ランクG 木の棒、布の服、木の弓、汚い液体×2、普通の樹液×2、万能蛇口
ランクF
砂糖
主に料理の材料に使われる。甘くておいしい。
丈夫な布
防具の材料に使われる。
遠心分離機
特定のアイテムの作成時、成功率が上がる。また、一部のアイテムを分離できる
ランクE
万能鍋
アイテムの調合に利用できる。また、この中に入れたアイテムに魔力を込めると変化が起こることも。
ランクD
ミニマム爆弾×10
カッ、キーン、ドーン。とても小さな爆弾。だが、破壊力抜群。




