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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文24年(1555年)

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第千四百話・出産を控えて

Side:久遠一馬


 臨月となり出産が近いということもあり、ケティが病院に入院している。


「ケティ、どうかな? 変調とかない?」


「うん、問題ない。順調」


 今日はそんなケティの様子を見に来たけど、まだ陣痛も始まっていないので元気そうだ。


 入院理由は出産も病院で行えると示すためで、ケティ自身が入院しての出産を世に示すために選んだんだ。この時代は自宅出産が当然だし、それは今後も当分変わらないだろう。それでもケティは病院での実績作りをしたいと思うみたい。


 病院には当直の医師と看護師もいるし、ケティの場合は侍女さんも付いている。病室も個室でVIPのような体制だが、それでも病院での出産の意義は大きいだろう。


「折り鶴、凄いね」


「学校のみんなが持ってきてくれた」


 ちょっと驚いたのは昨日までなかった折り鶴がたくさんあることだろう。数百羽はあるんじゃないかな。千羽鶴のように紐でまとめていないだけに結構な存在感がある。


 いつからか、折り鶴を折りながら船の無事をいのるのがウチの習慣だと言われるようになった。学校のみんながそんな習慣から、ケティの子供が無事に生まれるようにと自発的に折って持ってきてくれたらしい。


 学校と病院は隣接していることもあって、ケティもよく行っていたからね。こういう気遣いは本当に嬉しい。


「欲しいものとかない?」


「大丈夫。準備は万端」


 本当はついてあげていたいんだけど、さすがに仕事がある。陣痛が始まったらすぐに駆け付けられるように連絡をお願いしている。


「いつだってみんなをオレのワガママに付き合わせているんだけど。もう少し設備の整ったところで出産をしてくれたほうがとも悩むんだよね」


 ちょうど侍女さんが席を外してくれたのでケティと本音で話す。


 ケティたちが頑張ってくれているのは十二分に理解しているけど、万が一を思うと医療設備の整った場所で出産してほしいところもある。


 医療型の誰かが付いていてくれるし、最悪はすぐに医療設備のある艦に移送出来るから心配はないと言われているんだけどね。


 それでも……。


「設備があっても万全とは言えない。それは私たちが一番知っていること。想定を超えたことが起きたからここにいる」


「まあね。それは理解するよ」


「常に最善を尽くすしかない。医療は特に」


 医療活動においてケティが出し惜しみをあまりしていないのは、ケティの信念があるからだ。


 天然痘、この時代の言い方でいえば疱瘡の予防接種も地道に続けていて、尾張だと接種した人が増えている。あとは性病などの広まりも他国と比べると著しく低い。病は悪化する前に医師や薬師や坊主に見せるようにというケティたちの教えも広まりつつある。


 驚くほど医療状況は良くなったけど、それでもケティは今後の更なる進歩を見据えている。


 どんな状況でも不安はある。だからこそ一生懸命に生きるしかない。オレもケティたちも、それは同じということだろうね。


「殿、孤児院の子らが参っております」


「ああ、通していいよ。オレはそろそろ行かないと駄目だからね」


 話が一段落する頃になると、孤児院の子供たちがケティに会いに来た。出産が間近なのでみんなで力になろうといろいろとしてくれているんだよね。


 今日は病院にマドカもいるので、マドカと子供たちにケティのことを頼んでオレは仕事に行く。


 いろいろ仕事があるんだよね。御幸のこともそろそろ情報公開することになっているので調整が進められている。特に今川辺りは知らないことだ。


 御幸の前に領地の平定と臣従を終えたいと考えるならば、更なる支援が必要になる。また信濃も予断を許さない。望月家のように早々に織田家に降った者もいるが、諏訪家のように争っているところもある。また場所的に織田領と接していないところは様子見のところが多い。


 小笠原領については、すでに検地と人口調査の支度をしている。賦役の開始も環境が整ったところから春を待たずに街道整備に取り掛かっていく予定だ。


 ただ、懸念もある。曲がりなりにも統制が取れている小笠原家臣はまだいいけど、寺社なんかは対応がまちまちだ。そもそも織田としては臣従の意味と条件を受け入れて願い出たところに支援するというスタンスは変えられないし、変えてもいない。


 いや、中にはいるんだよね。『自分たちは特別扱いされるべき』の考えで臣従してやってもいいぞと本気で言ってくるのが。


 寺領の民への支援はしているところとしていないところがある。当然、寺領への口出しを嫌うところもあるし、織田領では守護使不入を廃止していることで警戒もされている。


 織田領では上手くいっているが、既得権を自ら手放すことを望む者などまずいないし、そもそも織田家自体も信濃で信頼されているとは言えないところもある。


 武田・今川・小笠原と武家に振り回されている信濃としては、織田も化けの皮が剝がれると同じではと見ているところは相応にある。


 無論、織田の治世の情報を得て期待しているところもあるが、わけの分からないことをしていると理屈よりも感情論で否定している人もいるんだよね。やっぱり。


 口を出されたくないというところは妥協案として織田に米を売ってほしいという願い出たところや、一時的に借財を申し入れてきたところもあるそうだ。


 ごく一部の寺領では織田領での配給を知って、寺と領民の関係が悪化してしまい、離反や小競り合いや織田側に略奪に行くなど、泥沼になっているところもある。


 織田としては信濃入りした頃に、施策を織田の命じるままに従って目付を受け入れるならば、寺領の領民への配給も検討すると寺社に通告したが反応は芳しくなかった。


 守護使不入に反すると怒ったところもあるそうだ。


 小さな村の寺とかは従ったところも多いが、それなりに名が知られていて寺領もそれなりにある寺だと様子見のままズルズルと現状に至っているところもある。


 正直、この時代は領民が飢える心配もあまりしていない。仕方ないと考えるのが一般的だ。寺の既得権や面目、そんなことを第一に考える。


 ただ、この件は小笠原家臣で苦労して奔走した人もいるそうだ。


 自分のところの菩提寺だったり世話になっている寺だったりすると、自ら説明に出向いたりして調整をして収めたところもあると聞いている。


 まあ、全体として寺領から流民が出ていることは確かで、流民として出た者はそのまま三河に送っている。


 織田領の村と寺領の村で小競り合いはあちこちであるので、それは後で始末がいるだろう。こちらとしては寺領は今まで通りでもいいんだ。ただ、織田に従わないなら行政サービスは与えないというスタンスは変わらない。


 全体として寺を潰されるとはあまり思っていないところが寺社側にはある。特にそれなりの規模の寺だと。


 歴史と伝統もあるとそんなもんなんだろう。


 とりあえず春を迎えたあとの信濃の体制を決めて準備をしなくてはならないんだよね。




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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「千羽鶴のように紐でまとめていないだけに結構な存在感がある。」 安全祈願と思われてるだけに、腹を貫いて纏めるタイプの千羽鶴には発展しなさそう。 特に妊婦に持ってきたりするなら、縁起が悪いと…
[一言] 連続更新お疲れ様です 1400話おめでとうございます ケティももう臨月ですか 早いですね 実績作りに病院で出産ですか 難産でないことを祈ります 男の子かな?女の子かな? とても気になります…
[一言] 1400話おめでとうございます!! 素直に凄い!
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