第千二百四十八話・留守中の報告
Side:久遠一馬
留守中の報告を受けるのに数日掛かる。オレがいなくても困らない体制にはしつつあるんだけど、報告は受けないと困るので結果的に時間がかかるんだよね。これはトップとしている以上は仕方のないことだろう。
伊勢亀山に北畠と六角と集まり話が出来る場所をという話が進んでいた。今のところ二案がある。ひとつは伊勢亀山城の改築で対応するということ。もうひとつは別に迎賓館のようなものを建てるというものだ。
これには伊勢亀山城の代官である安藤さんも含めて話し合いが行われているけど、将来的なことを考えると新築でもいいのかもしれないと思う。伊勢亀山城の改築はもともと必要だという要請はあったんだけどね。手狭なのと軍事拠点と外交拠点の分離もそろそろ考えてもいい頃だ。
もともと蟹江に迎賓館のような外交使節を迎える施設という案は以前からあった。当初は蟹江城を西洋風の城にしてそこを用いるつもりだったけど、願証寺の融和路線や、城塞の進化をあまり進めると後で困る可能性もあり、蟹江城の軍事拠点化は流れたんだ。
現在は水軍学校と行政庁舎として蟹江城は使われていて、外交使節なんかは蟹江にある織田屋敷で対応している。あそこもそれなりに広いし、そういう意図もあって造ったから今のところ不便はないんだけど。
熱田神社と津島神社では勅使を迎えてもいいような施設を新築しているし、そろそろこちらも外交使節を招く施設を本格的に考えてもいいのかもしれない。
「そうか」
「はっ、梅戸と千種は織田に臣従するようでございます。殿の観音寺城での配慮が効いたようでございますな」
それと資清さんから六角関連の報告があった。
北伊勢の梅戸と千種が織田に臣従をするのか。観音寺城で聞いた感じだと六角で召し抱えるのかと思ったんだけどね。
他にも六角と織田の担当者が会える場を求めたいという話もあった。これは伊勢亀山の件が義輝さんから伝わったのだろう。
「ごめんね。旧主だし大変だろうに」
「いえ、懸念には及びませぬ」
留守中に商務総奉行の仕事は資清さんが代行していた。あとウチへの相談事もエルたちの助言を受けつつきちんとこなしていた。当然六角との一件もそれに含まれているんだけど、この時代は権威とか重んじるので旧主相手にはやりにくいだろうに。頭が下がる思いだ。
「ただ、梅戸と千種領は思うた以上にようありませぬ。先日には塚原殿らが襲われたとのこと。また放置すると千種領は夏に飢えることになりかねぬということで、六角からは引き渡しをいつにするかと問う文も参っております」
あの武闘派集団を襲うなんて命知らずな賊もいたもんだ。
千種領、六角では持て余しているみたいだね。六角に召し上げとなり織田に引き渡されるものの、欲しいかと言われると困るくらいに荒れているようだ。
このまま引き渡すと嫌がらせと思われるのではとの懸念が、六角家中から出ているらしい。
梅戸領も引き渡すことになるようだ。ここも悩んだみたいだけどね。伊勢から撤退するみたい。信秀さんは代わりの支援を検討するようにと命じたようだ。土地は命より重いからな。
あとオレが口約束した資金援助。義統さん名義でやることになった。やはり公儀としてやるべきだということと、今後類似する事例が出た時に、オレが出さなきゃならなくなる事態を懸念したらしい。
無論、家臣が他国に大金を貸し付けとか援助するなんて疑われるだけだし。余計な疑念の種は撒かないに越したことはない。
「それと、無量寿院。末寺が秋の収穫まで保たぬやもしれませぬ」
「はぁ……」
無量寿院の一件、都にいる時に公家衆とも話をしたんだけど、そこまで興味ないみたいなんだよね。飛鳥井さんは相変わらず身勝手な鄙者だと内心では怒っているみたいだし。
近衛さんがちらりと教えてくれたんだけど、帝が御不快に思われているとの噂が公家衆で流れて以降、関わろうとする人がほとんどいないんだとか。
飛鳥井さんが一連の交渉の経緯と結果を吹聴しているせいで、無量寿院は公家をも軽んじると噂になったのもあるんだろう。
あれ、晴具さんが動かないともっと面倒になっていたからなぁ。最悪ウチで救出することや挙兵も選択肢にはあったんだよね。
勅願寺に任命した当時の帝の面目もあるし、そうそう勅願寺をはく奪されることもないんだろうけど。このまま騒動を起こせば庇う人はどんどん減っていくだろう。
朝廷としては勅願寺が潰れるのはあまり好ましくないようではある。ただし寺の僧が入れ替わるとかならあまり気にしないようだ。要は無量寿院を叩くのは構わないが、戦後は三河本證寺のように潰さないで復興させればいいだけになる。
織田としては信光さんがいつでも派兵出来るし、春と夏のふたりも無量寿院対応として那古野にいる。伊勢で武功があるので万が一の際には春と夏も出る予定だったそうだ。
困ったね。ほんとうに。
Side:セレス
「そうですか。留守中ありがとうございました」
「農繁期が終われば山狩りをすることにしたわ。無量寿院末寺の連中や六角が管理していた罪人とか、結構逃げて賊になっているのよ」
春から留守中の報告を受けていますが、家中では塚原殿が襲われたという事態が重く受け止められているようです。上様の素性を知る者は当然でしょう。
今はまだ田仕事がありますが、春の麦の刈り入れが終わり遅植えの田植えを済ませると八風街道と千種街道ならびにあのあたりの山狩りですか。
警備兵と火消し隊はすでに末端は現地での教育と訓練が始まっています。士官は尾張で教育と訓練をしていますが、領地の拡大に人員がおいついていないのです。
北伊勢の治安を早期に回復しないといろいろと影響が出ますね。
「でも都も大変だったわね」
「ええ、私たちも知らぬ存ぜぬでは通じなくなるかもしれません」
一方の夏は司令が帝に拝謁した件を気にしていました。アンドロイドは事前に通信機で知っていたことですが、織田家では私たちの帰還によって知らされたこともあり、その一件が今後どう影響するのかと懸念が出ています。
都と朝廷は重んじねばならない。とはいえ都と朝廷の都合を一方的に押しつけられるのではとの懸念もある。難しいところですね。
申し訳ないのですが、この世界では明治維新クラスの革命がない可能性が高いこともあり、朝廷と公家は私たちで整理して役割や役目を定めねばならないでしょう。
まだまだ前途多難ですね。
カクヨム様にて同作の不定期連載始めました。
『改・戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』
内容は基本はなろう版と同じですが、多少の修正をしていく予定で、たまに書き下ろしをするかも。同時連載を目指しております。
どうかよろしくお願いします。














