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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文23年(1554年)

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第千二百四十七話・旅の終わり

Side:斯波義信


「ああ、帰ってきたのだな」


 船が蟹江に到着すると、すぐに湊が人で埋まるようであった。感極まるとは言い過ぎであろうか。


 他国がいかなるものか。よう分かった。皆、一所懸命に生きておった。誰かがそれこそ古くから続く世の常であると言うておったの。


「若武衛様! お帰りなさいませ!!」


 湊には学校で共に学んだ者らが出迎えに来ておった。嬉しそうに声を掛ける姿にこれこそが尾張なのだと改めて思い知らされた。


 下々の者を虐げ奪うだけが上に立つ者の姿ではない。皆が各々の役目をまっとうしてこそ国が治まるのだ。一馬が主上に申し上げたことが確かだと理解する。


「ちーちだ!」


「ちーち!!」


「おかえりなさいませ!」


「みんな、いい子にしていたか?」


 船を降りて検疫を受けると、一馬は子らに囲まれておった。実の子ばかりではない。孤児院の子らも一緒になって集まっておる。一馬は大武丸と希美を抱きかかえながら、皆に声を掛けていく。


「ワン!」


「おっ、元気だったか?」


 子らに交じってロボとブランカやその子らもおった。これほど嬉しそうな一馬の顔は都では見られなんだな。


 立身出世をまことに望んでおらぬのだな。知ってはいたが、改めて思い知らされたわ。


 斯波は天下を望まず。それは父上がお決めになられたことだ。公方様と共に新たな世では一歩退いた身分となることを望んでおられる。足利と斯波では新たな世が難しい。それが理由だと聞いたが、わしには父上が天下など心から望んでおらぬようにしか思えぬ。


「役目を果たせたようじゃの」


「父上!」


 楽しげな一馬を見ておると、父上がおいでになられた。まさかここまで参られておったとは。


「はっ、及ばずながらお役目を果たせたかと思いまする」


 父上のお顔を見て安堵した。


 これは一馬も知らぬことだが、不測のことがあれば斯波家の名において一馬と久遠を守れと、わしは密かに命じられておった。斯波家の名などいかようになってもいい。それが父上の命であった。


「失態は恥ではない、か」


 もとは久遠家の掟であると聞いた。失態はその理由を考え同じ失態をせぬように皆で精進するのだとか。今では尾張の掟となりつつあるこの言葉を思い出した。


 よい旅であった。皆に感謝せねばならぬな。




Side:織田信長


「ちちうえ!」


「吉法師、そなたも出迎えに参ったか!」


「はい!」


 出迎えに帰蝶と吉法師が来ておった。二十日ほど留守にしただけだというのに、大袈裟だと思わなくもないが嬉しく思う。


「おかえりなさいませ」


 吉法師の手を引く帰蝶も息災なようでなにより。これはオレが命じたことだ。吉法師は久遠家の子を育てる作法を取り入れておるのだ。


 乳母と傅役もおるが、父であるオレと母である帰蝶も力を合わせて子を育てておる。武家の習わしと違うと申す者もおるが、じいは久遠家をよく知る故、異を唱えなんだ。


 都には都の積み重ねと良さがあるのであろう。連綿(れんめん)と積み重ねた権威と都の町は替えの利かぬものに思えた。


 されど、あれでは駄目であろう。都と朝廷の積み重ねた業があまりに深い。誰もそれを口にせず、かずですら言わなんだが一目瞭然だ。


「ちちうえ、あのね。うしの子がうまれた!」


「ほほ、そうか。それはめでたいな」


「はい!」


 一旦蟹江の屋敷に入ることにしたが、馬や馬車ではなく共に歩いて向かうことにする。


 時には妻子とともに外を歩くことも必要とケティに教えられたのだ。ゆっくりと歩く吉法師に合わせて共に留守中の話をしながら歩く。これもまたよいものだ。


 ふと振り返ると湊に見える黒い恵比寿船を見た。吉法師もいつかあの船で遠くに行く日が来るのであろうな。


 天下は織田が治める。いつの間にやら決まったことらしい。


 足利と斯波が退くことで親父が治める。そうでもせぬと日ノ本はまとまらぬのであろうが。かずは己の天下など本気で嫌がるからな。致し方ないことだ。


 吉法師はいずれ天下をまとめねばならぬのかもしれぬ。喜ばしいと思うところもあるが、果たしてそれが吉法師の望むことなのかと少し考えてしまうのは、オレもかずに毒されたのかもしれぬな。


 天下とは……、新たな世とは……。


 難しきことだな。




Side:久遠一馬


 出迎えに来てくれたみんなと一緒に那古野に戻ることにする。留守を任せていたエルたちとか孤児院の子供たちにお市ちゃんまで来てくれたんだ。人数が多いからみんなで歩いて帰ることにした。


 川舟でも帰れるんだけどね。こうして景色を眺めながら帰るのも悪くない。


 馬車はアラブ馬のような中型馬が牽く馬車は、相変わらず数が多くなくて斯波家と織田家関係者くらいしか持っていない。馬の維持費もかかるので簡単じゃないんだよね。美濃の牧場では中型馬を増やすつもりだけど、成果はこれからだからなぁ。


 そろそろ乗合馬車とか増えてほしいんだけどね。まあ、現状では川舟が大幅に増えたくらいだ。


 ただ、職人たちも考えているんだよね。ロバが牽くことが出来る簡素な荷馬車が工業村で製造されてテストしているはず。ロバと山羊は何度か船で運んできたのでそれなりに頭数がいる。


 ロバ車はとにかく軽くしようと考えたようで、一部を鉄で補強しているものの木材や竹で作ったものらしい。


「そうか、牛と馬の子が生まれたか」


「はい! みんなでお世話しております!」


 道中、子供たちから留守中のことを聞く。農繁期でもあるので、みんな頑張ってくれたみたいだ。


 あと美濃の牧場に出向している子が戻ってきて、何人か仕事が出来る元服前の子を連れていったらしい。思った以上に向こうも大変なようだ。


 出向している子はオレの家臣となっているので、美濃でも扱いがいいらしく若干困惑していたみたいだけど。それ以上に基礎的な知識が違い過ぎて指導に時間が掛かっているんだとか。


「旅の話をお聞かせください!」


「そうだね。でも留守を守っているみんなと一緒に話してあげるよ」


 帝に拝謁したと教えたら驚くだろうなぁ。どんな顔をするか楽しみだ。


 とりあえず今日はゆっくりと眠れるだろう。



カクヨム様にて同作の不定期連載始めました。

『改・戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』

内容は基本はなろう版と同じですが、多少の修正をしていく予定で、たまに書き下ろしをするかも。同時連載を目指しております。

どうかよろしくお願いします。

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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[一言] >天下は織田が治める。いつの間にやら決まったことらしい  元は信長さん自身が(第九話で)言い出した事ですよねw  日本でロバがなかなか定着しなかったのは、粗食に堪えて不整地に強く働き者な日…
[良い点] 帰国したみんなが慕われているのがよくわかりますね。 繁栄する尾張と京の都とは大違いですね。 みんなの元気な姿、街の綺麗さ、何もかもが違う。 [気になる点] 斯波義信くん、そんな密命を言われ…
[一言]  更新、お疲れ様です。  上下関係無く一行を出迎える。これこそが尾張の強みですね。 各国の御老人方が見たら、胆が冷えるでしょうね(笑)  上洛に参加した面々。各々が今後を考えていますね。 …
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