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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文23年(1554年)

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第千二百四十六話・最後の訪問先

Side:菊丸


「これが真宗の治世か」


「よほど飢えておるようじゃの。わしらを襲ったところで銭など持っておるようには見えんであろうに」


 甲賀から東海道を通り北伊勢に入りて千種領で旅をしておると、賊に襲われた。成敗していずこの者かと生き残りに問うと、織田から返還された真宗の末寺に入った者であった。元は北伊勢の国人の一族であったという。


 『罰が当たるぞ! 仏罰が下るぞ!』と騒ぎ立てておったが、剃髪もしておらず、まともに経も唱えられぬことくらい見ても分かる。仏罰など片腹痛いわ。


 それなりの人数がおる武芸者である我らを襲ったことに師は驚いておるが、理由ははっきりしておった。織田領では兵が多くなり村も襲えなくなったことで千種と梅戸の所領に流れておるようだ。


 千種の謀叛と罪人を使うておったせいか、この辺りは荒れておるようで奪うには手頃なようだ。


 もっとも、かようなこと織田の地以外では珍しくもない。武士であろうが僧であろうが食えねば奪うしかないからな。


「まことに織田と一戦交える気なのだな」


 寺社としての体裁すら保てばいかようにでもなるということか。


「退けぬであろう。勅願寺という名もある」


 師も哀れみの顔をされておる。鹿島神宮のこともある。心情はよう分かるところもあるのであろう。されど……。


 命じて従えるだけではなにも変わらぬか。やはり一馬の言う通りということか。謀叛など起こらぬ、賊などせずとも食える政をせねばならぬのであろう。


 それは、未だかつて誰も成し得なかったことだ。一馬がいかに困難に挑んでおるかがよう分かるな。




Side:久遠一馬


 ちょうど暦も替わり四月となったこの日、石山本願寺で一泊して船で畿内を後にした。


 石山では歓迎の宴を開いてくれた。和やかな雰囲気であったものの、特に実になるような話もなく誼を深めて終わった。


 義統さんが飛騨守護となったことで、飛騨や越中の一向衆のことについて話があるかとも思ったけど、一切その話はなかった。まあ地方の末寺の扱いなどそんなものなんだろう。


 誼は深めているとはいえ、義統さんも信秀さんもいない。面倒な話はしなくて当然と言えば当然だ。


 今回の土産は少し趣向を凝らした。仏教において三大聖木と言われる沙羅双樹の花のドライフラワーを硝子瓶に入れて贈ったんだ。本物を見たことがないようでかなり驚かれた。


 あとは万華鏡も一緒に贈った。前回の上洛では香木だったけど、あれは貴重な品であまり頻繁に贈るものでもないから今回は別のものにした。ちなみにこのふたつは朝廷にも献上してある。朝廷は布団とか他にも贈ったけどね。


 石山に贈ったそれらは、両方ともガラス製品ということで、今後は少量を販売することも考慮した品になる。


「なんと速いの」


 船が伊勢大湊についたのはその日の夜中だった。


 数日掛けて行った都からの帰還が一日もかからずに着いたことに、義信君や若い子たちは驚き信じられないような顔をしている。何人かは船酔いに苦しんでもいたけど。


 事前に乗せて試すんだけど、みんな我慢するか甘く見るんだよね。それに事前に船酔いになっても必ず克服するからと言われると駄目だとは言いにくい。一日船の上にいたぐらいで死ぬこともないしね。薬だってあるし医師であるジャクリーヌもいる。


「陸の見えぬところを走ると聞いておったが、此度は違うたな」


「いずれの航路でもよかったのですけどね。紀伊の水軍もこちらに手を出す気はあまりないようなので見えるところを今回は走ったのですよ」


 そうそう、今回が恵比寿船での初めての旅となった具教さん。船酔いは大丈夫みたいだ。彼は伊勢から尾張に来るときに久遠船に乗り慣れているということもあり、あまり心配してなかったんだけどね。


 あと具教さんが言うように、今回の航路は陸地が見えるところを走った。さすがに水軍が出てきて捕まるほど近くもないけど、三好水軍とは話が付いている。紀伊の水軍衆とは話がついていないものの、敵対もしていない。


 多少見える航路でどう出るか、今後のこともあって紀伊の水軍衆を少し試す意味もあって航路を陸寄りにしたんだ。結果としては何事もなく終わったけど。


 この日はそのまま大湊に上陸して休んだ。




「伊勢に戻ると落ち着くな」


 翌朝、少し遅めの朝食を食べたオレたちはその足で伊勢神宮に向かう。これが義信君の上洛の最後の日程なんだ。


 信長さんを筆頭に、みんなどこか安堵している様子でもある。厳密には織田領ではないけど、縁も所縁もない畿内よりは地元に戻ってきた感じなんだよね。


 ここに来るのも数年ぶりだ。今回の献上品と献金は目録と三方に載せる見本のみであり、現物はあとで尾張から運ぶことになる。


 大湊はあれから随分と賑わうようになった。西から来る船はまず大湊に立ち寄るからだ。あと蟹江との直行便もあって、伊勢神宮を参拝するために来る人も増えた。


 陸路としては織田領では関所を廃止しているものの北畠領は未だに関所があって、そこまで人の流れが戻っていない。


 宇治と山田の自治都市は、それなりに賑わっているようだ。大湊の賑わいの恩恵もあるし、桑名や安濃津が織田領となったことで、自治都市として残る宇治と山田は無量寿院との商いなどで儲けているからな。


「聞いておった通りか」


 伊勢神宮、前回よりは良くなっているけど、昨日の石山本願寺や尾張の津島とか熱田に比べると苦しいのが分かる。義信君も少しなんとも言えない顔をしている。


 織田からの寄進もあって修繕などはやっているものの、未だに式年遷宮の目途は立っていないようだ。


 資金くらい出してもいいんだけどねぇ。だけど寄進するなら北畠の面目を立てないといけない。領内の改革や警備兵の創設で北畠家もあまり余裕がないのが現状になる。あと宇治と山田の件もあるからな。


 宇治と山田は別に反織田というわけではないんだけど、織田にあれこれと指図をされたくない人は結構いるようなんだよね。あとウチの品とか織田で禁じている相手に横流しもしているし。そういう意味では反織田かもしれない。


 南伊勢は今のところ北畠家次第と言えるだろう。


 参拝を済ませると、早めに大湊に戻る。今回は宇治と山田に寄る予定もないし。具教さんたちとは途中でお別れだ。このまま霧山御所に戻るみたい。


 オレたちは今日は大湊に泊まって、明日には尾張に帰れることになる。






カクヨム様にて同作の不定期連載始めました。

『改・戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』

内容は基本はなろう版と同じですが、多少の修正をしていく予定で、たまに書き下ろしをするかも。同時連載を目指しております。

どうかよろしくお願いします。

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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[良い点] 相手が誰かも考えず、後先考えず襲い掛かるのは、いつの時代もいますよね。 [一言] 群盗や落ち武者狩りは、前将軍・足利義材が政変で失脚して都落ちする時の一行にも襲い掛かったくらいですから…
[一言] 小坊主よりも修業が足りなさそうな自称僧侶の強盗どもですか 千種領が織田領に編入される事になったので、今後の活動域は更に狭くなりそうです 加えて今回の襲撃で、ただでさえ悪い幕府から無量寿院への…
[気になる点] >船酔いは普通に死にますよ >遠洋漁業とかだとそれが理由で早々に船酔い者を降ろす為に引き返す事がある位で 「『風邪』は普通に死にますよ」と同じ事。 人により差異はあるけど長期間ないし…
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