異世界の金属だから、多少はね?
8月3回目の更新です。バトル回的な何か。
「この役に立たない予備の武器や手紙、勲章を食料にかえてくれるってのか?」
「お金代わりって感じですね。まあ、手紙は流石に僕が貰ってもしょうがないので皆さんに受け取っていただきたいですけど」
ざわつき始める騎士たち。
数秒後、
「その誘い、乗った!」
いち早く筋骨隆々な男が声を上げた。それに続いて、
「じゃ、じゃあ俺も!」
「そうだよな、今は勲章よりも食料だよな!」
続々と参加表明が出された。
数分後には全員が僕の誘いに乗ってくれることになったので、一旦箱の中にモノを戻してもらった。
「じゃあ、この高さまで水と食料を詰めますね。覚えておいてください」
「ああ、分かった」
武具や勲章をアイテムボックスに収納し、食料や水の入った瓶などでどんどんと置き換えていく。
「これぐらいですかね」
「ああ、とても助かる」
容量を確認してもらって、箱を引き渡した。
「ねぇ、あんなにあげても大丈夫なの?」
「うん。まだ在庫は残っているから」
「どれだけあるのよ……」
店数軒分ぐらいはあるけど、明言するのは避けたい。底を知られるのは困る。
僕の在庫量を知られる前に、このダンジョンを攻略したいものだ。
食料品を譲り渡すと、騎士たちの間から歓声が上がった。
しかし、そう長く休憩出来るわけでもなさそうだった。モンスターたちが徐々に迫って来ているのが見える。
手軽な食事を済ませた者から迎撃に向かう。
騎士たちから少し離れたところで、
「勢いでここの攻略に付き合うことになったけど、これ何日続くんだろうね?」
「1日2日ぐらいなら構わないけど、それ以上になると勘弁してもらいたいわね。戦闘みたいな肉体労働は久しぶりだし、他にも色々問題があるし……」
やはり女性にとっては、ダンジョンに長く籠ることは辛いことらしい。まあ、男にとっても普通に辛いけど。
(俺もこんなところに長く居座る気はない! まさか異世界に来てまで職場に宿泊するような感覚を覚えるとは思わなかったな!)
花水さんもこの通り、帰りたそうにしている。
(でも、終わりが見えなさそうなんですよね……どうするんですか、花水さん?)
(チート能力を使って吹っ飛ばせば良くない? ちょうど使い捨てにしても良さそうな騎士たちの予備の武具を貰ったばかりだしさ)
(そういう意味では支援物資だったんですね)
問題は、僕のチート能力をどう隠すかだ。まあ、一番手っ取り早いのは独断専行で突き進んでいくことだろう。しかし、いきなり始めても疑われるだけだ。
そのタイミングを待ち望んでいると、ちょうどよくモンスターの大群がやって来た。
「定期的に強いモンスターが湧いて来るんだよな。……神官さんたち、気を付けなさい。あのゴーレムは普段この辺で見かけることはない相手だ。他の雑魚と同じような認識で挑むと痛い目にあう」
貴重なアドバイスだ。
「隊長、ゴーレムだけじゃありません! オークキングやオーガ、アンデッドの大群等も確認出来ます! 奴さんもかなり本気で攻めて来ているみたいですね……」
おお、名前からして強そうなモンスターたちだ。
「かなり厳しい戦いになるだろうな……申し訳ないが、神官さんたちはアンデッドの対処をしてくれないだろうか。我々よりもあなたの方が適任だ」
ナタリーさんが使命感を帯びた表情で頷いた。
「はい。適材適所というわけですね。こういう状況ですし、出来るだけ協力しましょう」
「助かる。しかし、今更だが、あまり無茶はしないでほしい。我々はここに残る必要があるが、君たちはいつでも帰ることが出来るのだからね」
今更と言えば……。
(何でこの人たちって帰れないんだろうね? ここで無茶を続けるよりも、交代制にでもして色々補給しながら戦った方が効率的だと思うんだけど)
(いや、そんなことしたら首が飛ぶから……。もちろん、仕事をクビになるって意味じゃなくて、文字通り偉い人の命令に逆らった責任を問われて処刑される的な意味だけど。上の認識や命令が変わらないと、こういう根性論でどうにかするしかなくなるわけさ)
そういう話をしながら、アンデッドの来る方向に移動する。
「アウルム君、アンデッドに対して普通の武器は通用しにくいの。私たち神官や冒険者の僧侶職の人たちが得意とする神聖魔法や、その手の魔法による祝福を授けられた武器とか、アンデッド系のモンスターを倒すことに特化した武器とかなら簡単に倒せるのだけど……」
「そういう武器、持ってる?」と尋ねるような視線を寄越してくる。
うーん、アイテムボックス内のモノが多過ぎて探しにくいなぁ。
(ヘイ! アイテムボックス、対アンデッド向けの装備)
花水さんがアイテムボックスに向かって呼びかけた。まさかそんなことで……。
僕の手に一振りの剣が出て来た。名前はゾンビスレイヤーというらしい。シルバーが眩しい。
……本当に出て来ちゃったよ。
アイテムボックス内にそういう装備がちゃんと入っていたことと、アイテムボックスに呼びかけただけで武器を呼び出せたことの二重の驚きに襲われた。
「俺は持ってる」
超ドヤ顔で花水さんが声を出した。僕の身体なのでとても恥ずかしい。
「何でもアリね……」
ナタリーさんは若干引き気味のリアクションを浮かべた。
実際に斬りかかってみると、本当に簡単に倒せた。しかしながら、数が多い。
「アウルム君、申し訳ないけど、魔力温存のために倒す方は任せちゃっても大丈夫かしら? その分、回復とかはこっちで担当するから」
「うん。回復をしてくれるだけでも有難いよ」
「……そうは言っても、このダンジョンに来てから全然ダメージを受けているようには見えないけど」
「確かにダメージは受けてないけど、スタミナ的な疲れはあるから、そっち方面の回復とか出来ないかな?」
一振りすれば簡単に倒せるとは言っても、こちらは素人なのだから連戦になると疲れが半端ない。今も結構休みたい。
「意外とそっち方面の回復って難しいのよね。ほら、その場しのぎとして回復アイテムを使うことも出来るけど、やっぱり限度があるから結局寝たり休んだりするのが一番なの」
(そうだぞ。魔剤だけで何日も活動出来るなら皆やってるぞ。あっ、皆やってるとか薬キメてるやつが他人に勧める時の常套句みたいなセリフになっちゃった。魔剤はそういうのじゃないからね? 合法だからね?)
魔剤って何だろうと思いつつも、今後について考える。このまま一体一体倒そうとしてもキリがない。
どうにか楽をする方法はないだろうか……。
(あの【金遣い】とかいうスキルで、この武器の対アンデッド的な能力を引き上げることとか出来ねぇかな? いや、現実問題、金属にそんなモンねぇから無理だと思うけど、ここファンタジー世界だし、金属にそういう性質があってもおかしくないっつーか)
なるほど。花水さんの意見は試してみる価値がある。
武器のアンデッド絶対殺す感を高めようとイメージしたら、武器から淡い光が出て来始めた。もしかして、この路線で強化を続ければさらに強くなるのでは?
「うわっ、眩しっ」
「ちょっ、何が起こっているの? 全然前が見えないんだけど……アウルム君、無事?」
光が僕たちの網膜を突き刺すと同時に、アンデッドを貫き、どんどん灰に変えていく。
もしかして勝手にアンデッドを倒してくれているのだろうか?
「うおっ。何かこの階層が明るくなったかと思えば、こっちに紛れていたアンデッドが勝手に消滅したぞ」
「何だ? 神のご加護か?」
「こっちに居たゴースト系のモンスターも消えてったぞ!」
「スケルトンもただの屍になった!」
遠くから騎士たちの声が聞こえて来た。そこまで波及していたのか。
光を弱めると、目の前にはアンデッド以外の少数のモンスターが残っているだけだったのでサクッと倒す。
「アウルム君、さっきの何? そして、この通路を埋め尽くしていたアンデッドたちはどこに……?」
「え? 多分浄化されて召されたんじゃないかな? よく知らないけど」
「えぇ……」
困惑した様子のナタリーさんの声だけが、モンスターのいなくなった通路に響いた。
ともかく、ここら一帯を切り拓いたわけで、騎士たちはまだ他のモンスターの相手をしている。
つまり、今から奥に進めば、他の騎士たちに殆ど気付かれることなく【金遣い】の本領を発揮することが出来るわけだ。
早めにこのダンジョンから帰るためにも、僕は通路の奥に進んだ。
月末忙しいので9月の最初の更新は9月上旬ぐらいになるかもです。
次回もよろしくお願いします。




