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第三話

今回は説明回になります

西条がその場に現れた時の反応はさまざまであった。火鳥は全く動じず、キアラは眼を見開き、泉希は何か考えるしぐさをし、愛は顔をあげ、孝は驚いたように叫んだ。


「麒麟!もしかしてお前もこれにかかわってるのか?」


「ああ、残念なことにな。さて、火鳥。ここは俺に任せてお前も少し落ち着け。交渉役は俺が任されていただろ?」


「わかった」


火鳥が一歩下がる。


「さてと。少し落ち着いて会話しようか。高崎もその結界を解除してくれないか。話しにくいし」


西条は気楽に話しかけるが高崎キアラは結界を解かずに西条のほうを睨み付ける。しかし西条は全く動じず言葉を続ける。


「落ち着けって。よく考えろ。手を出すならとっくに手を出しているし、火鳥を下がらせる必要もないだろ?」


「それは……」


「だから安心しろよ。そもそも俺は孝の親友だぜ?なぁ、孝?」


「親友?悪友の間違いじゃね?まあ、信用はできるがね。キアラもとりあえず結界?を解除してくれよ。麒麟のことはよく知ってるだろ」


「……わかったわよ。けど西条君、納得のいく説明をしてもらうわよ」


水の壁が消える。それとともに緊迫した空気が払しょくされる。


「はぁ~。西条も高崎さんもいつもと全然雰囲気が違うからかなり焦ったよ」


泉希の肩の力が抜けるのがはたでもわかる。それと同じく孝も落ち着いたように愛のほうを向く。


「愛、大丈夫だったか?大分震えてたみたいだけど」


「うん、何とか。兄さんこそ大丈夫?」


「ああ、もちろんさ」


そう答えながらも孝は愛がまだふるえているのに気付いており、愛が自分の服をつかんでいることに関して何も言わなかった。


「いやぁ、愛ちゃんごめんね。もう少し早く来ればよかったんだけど、火鳥と高崎がいきなりいがみ合い始めて、割って入る機会を逃しちゃって」


「一人?」


泉希が指を一本立てて一人?と尋ねる。


「そうじゃない。火の鳥で火鳥。火鳥朱雀。それが彼女の名前だよ」


「それは、なんていうかなんとも名前と行動が似ているというか……」


孝がそういうがキアラと西条は名前の秘密を知っているため苦笑いで応える。


「まあ、そういうのも含めてどっか落ち着けるとこに行こうか。近くにファミレスあったよな?愛ちゃんもおなかすいたでしょ」


西条の言葉で火鳥を含めて全員でファミレスへ移動する。道中は西条と孝の愛を気遣う声と泉希と孝のアイコンタクトによる状況確認があった以外は無言であった。


「さて、みんな適当に注文してくれよ。今日は俺が奢ってやるよ。いろいろと迷惑かけたし、これからかけるし」


「お前のおごりという事態が迷惑の大きさを物語ってるがまあいいさ。その分食ってやる」


西条のおごりという言葉で火鳥以外の全員が嫌な予感をさせつつも遠慮なく注文をおえる。


「注文しすぎじゃね?」


「あ、ごめんなさい。久しぶりのファミレスでつい」


「いやいや愛ちゃんはいいんだよ。いつでもおごってあげるし好きなだけ注文してくれていいよ」


「相変わらず愛だけには甘い。人のことを言えないだろ」


孝と西条のじゃれあいが始まりかける。が、


「西条君、さっさと説明してくれる?」


キアラのこの一言で場が真面目な雰囲気に戻る。


「OKいいよ。じゃあ説明していこうか」


水を一口飲み西条は話し始める。


「まずお前らを襲った存在だな。奴らは妖と呼ばれる。お前ら妖怪って知ってるよな?」


「妖怪って、あの吸血鬼とか?」


「そうそれ」


泉希の質問に軽く返答をする


「で、妖ってのは妖怪みたいなもんだ。大したことない奴からすげえ化け物みたいなやつもいる。まあ、基本的に大したことのないもんばっかなんだよ。いつの間にか小さい傷がついてるとかものがなくなるとかも妖の仕業なこともある。けどこういう奴らは基本無害だからいても気づかない」


「じゃあ今回のは化け物ってか?」


「いや、高崎的にはどう思う?下位の奴らだと思うんだが」


「でしょうね」


キアラの返答にうなずいて話を続ける。


「あれは人を襲い殺す奴の中では一番下だな。妖をランク分けするとほとんど害のない無位があってその上に順に下位、中位、上位、天位、番外位がある」


「つまりあれは下位だから最弱なのかな?」


「ん~下位の中でも中位に近い実力だったから最弱ではないな。同じ位の中でも強弱があるから」


「でもあれで下位だろ?じゃあ番外位とかどんな化け物だよ」


孝のその質問を聞いたとき西条の脳裏にあの時の光景が浮かぶ。近くにいた人間は吹き飛ばされ地面がえぐれる。風が止まり、音がきえ、光も消える。ただそこには巨大な闇が横たわり多くのものが死んでいく。生き残った者は俺以外にはおらず、何もかもが闇に閉ざされる。ソシテ……アノコハ……。


「番外位は存在することすら怪しいから大丈夫よ。言ってしまえば存在自体が迷信みたいなものよ」


キアラの言葉に西条の意識が戻る。


「そうだな。天位もここ百年は現れた報告がないし、上位だって遭遇する確率は非常に低い」


俺の声は震えてないか?いつものように話せているか?あの記憶を思い出すわけにはいかない。今はその時じゃない。


そんな西条の不安は気づかれなかったようで話が続く。


「それでそんな妖を退治するのが陰と陽というわけさ。高崎は陽で俺と火鳥は陰に所属しているな」


「それでなんで陰と陽は顔を合わせたらいきなり戦闘突入するんだ?」


「いやいや、火鳥と高崎がデフォだと思わないでくれよ。普通はもう少し穏便に行くぜ。まぁそれでも仲がいいわけじゃないんだが」


「そこだ。そもそもなぜ組織が二つに分かれてる?」


「孝、お前鋭いな。それはな、目的は同じでもやり方が違うからさ。そうだなここは公平性のためにそれぞれが自分の組織について説明するか?」


「あら、陽は別にやましいことはないけど?陰とは違ってね」


キアラと西条の間に微妙な空気が生成される。その感覚を察知して愛が孝のほうへとすり寄っていく。



「はぁ、いがみ合って愛ちゃんに嫌われたくないしやめにしようぜ」


「……そうね」


「じゃあ陽のほうからどうぞ」


そういって西条は水を飲み始める。


「陽は基本的に妖との共存を目指しているわ。といってもほとんどの種とは共存できないから人間に害のあるものを調査して滅しているのが現状ね。まれに人に害を及ぼすどころか人のためになる妖がいるからそういう妖を保護する仕事もあるわ」


「はぁ、なるほどね~」


泉希は素直にその言葉を受け入れているようだが孝は難しい顔をして西条に尋ねる。


「ってことは陰は妖は皆殺しという考えなわけか?」


「正解。考え方的にはわかるだろ?人ですらない生き物でそこらの人より力を持ったやつを信用しろったって、ねぇ」


「まあ、そういう考え方もそりゃあるわな」


と孝は納得しかけるがすぐに何かに気付く。


「じゃあ、人の想いがわからないってのはその共存のことなのか?」


「そうじゃないわ」


孝の質問に間髪を入れず答えるキアラ。そのままどういうことか説明しようとするがそこで西条が先に口を開く。


「陰は手段を択ばないんだよ。妖の子を利用したり、あとはまあ、そのなんだ」


「妖による実験とかですよね」


西条が口ごもったところでキアラが口をはさむ。キアラの口調は非常に怒気が込められており孝も思わず身をすくませた。ほかの女の子は言うまでもない。


「実験?」


「詳しいことは聞かないほうがいいぜ。飯が食えなくなる。これで大体どんなものか想像できるだろ?」


「麒麟、お前まさか」


「お待たせしました、カルボナーラでお待ちのお客様」


店員の声で孝の声がさえぎられる。それに便乗して西条も聞こえなかったかのようにふるまう。


「食事休憩としようか」


「麒麟……。」

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