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第一話

今回はいろいろ説明が少ない単語がいくつか存在しますがちゃんとのちの話で説明されます。

ここは真夏の日本のとある都内の一角のマンションである。別に高級というほどじゃないがぼろいというわけでもない普通のマンション。


「あ~あづぃ。ったく、クーラーくらいつけてほしいぜ」


「そんなに暑いか?これくらいならクーラーなんていらないだろ?」


そんなマンションの部屋の一つで7月も末の真夏日にクーラーもなしに部屋でゲームをしている不健全な少年が二人いる。彼らは西条麒麟さいじょうきりん本郷孝ほんごうこうという名前でともに高校2年生であった。


「孝、お前本気で言ってるのか?こんな暑いのにクーラーなしとかマジやめてくれよ。別に何か減るわけでもなし、クーラーつけようぜ、クーラー」


「減るわ。電気代に気を付けないと仕送りだけじゃやばいんだって」


西条の言葉に本郷が真面目に返す。この男、この年で家計などを計算しなければいけずだんだん主婦じみてきていた。そんな本郷に対し呆れたように西条がつぶやく。


「そういわれてもねぇ~。暑いものは暑いし。お前まさか親友の俺が熱中症になってもいいというのか!?」


「お前がこの程度で熱中症になるか?あいがいるならともかく俺たちなら大丈夫だろ」


「おやおや。相変わらずの妹想シスコンいのようで安心したよ。その優しさを俺に向けてくれてもいいんだよ?」


「お前と愛じゃ比べるまでもないだろ?」


「そりゃ確かにそうかもしれんが、ねぇ?」


少しは俺をいたわってくれてもいいんだぜ?と心の中でつぶやきながらも西条はそこまで呆れていなかった。西条にとっても愛はかわいいし、何より……。


「それより西条?お前時間いいのか?昨日予定があるって聞いたけど?」


「ん?」


時計を確認しそれから何かを考えるしぐさをし、もう一度時計を見る。徐々に顔がしぶくなっていく。


「はぁ、そろそろいかないとダメか。じゃあ、また明日な本郷。愛ちゃんにもよろしく」


「おう。って今晩も約束あるだろうが。」


「そうだったかな?」


予定を忘れるほど動揺するなんて、慣れたつもりだったんだが……。ため息をつきそうになるのをこらえながら何の予定があったかを思い出そうとする。そんな西条を見て本当に忘れていると分かった本郷が呆れつつも予定を口にする。


「今日はみんなで花火をする約束だったろ?」


「そうだっけか?」


そう口にしながらもああ、そんなのあったなと思い出していた。しかし本郷はまだ思い出していないのかとさらに呆れながら丁寧に説明しだす。


「今日は俺と愛とお前と泉希とキアラで7時から紅公園に集合するんだぞ。思い出したか?」


「ああ!そういやそうだったな」


お前のハーレムメンバープラス俺でしたね、と口に出しそうになるのをぐっとこらえ自分の中でぼやいておく。別にうらやましいと思っているわけではないがしかし多少の嫉妬はするし、ちゃんと本命一人に決めてくれと言う位はいいだろう?そんなことを考えつつもあきれ顔の本郷と別れマンションを出る。


だが高校生気分もそれまででマンションを完全に出るときには表情が引き締まり、仕事態勢になる。そのまま歩きつつも周囲に気を配りつけている奴や観察している奴がいないかを確かめ、いないと判明してから目的地へと向かう。そこは一見普通の会社であるがその実態は…。


そのまんま普通の企業が入っている会社である。ただし地下以外は、という注釈がつくが。もちろんであるが西条が用があるのは地下である。ビルの中に入り階段を使って地下におり、株式会社封と書かれた看板の部屋に入る。


「お客様、何のご用でしょうか?」


「妖狐がほしいんだが?」


「お名前をうかがってもよろしいですか?」


「麒麟」


「では、あちらの階段をお降りください。」


部屋の中にいる従業員風の男の質問に答え、案内された階段を下りる。するとそこには一人の少女とモニターがあった。


「ん?俺以外の人間がいるとは珍しいな。名前は?」


「……」


「……はぁ」


無言。話しかけたのに無言かよ。そう考えそうになるがここにいるということはどうせまっとうな人間ではないと思い出しため息をつく。それに反応するかのようにモニターに一人の男が現れる。


「来たか麒麟。監視対象の状態はどうだ?」


「別にふつうですね。普通の高校生にしか見えませんよ、一般人からはね」


開口一番から仕事の話かと思う奴も多いと思うがなれたらこれが普通に感じるのだ。いまさらいうこともない。そう考えてはいるもののはたから見ると空気が明らかに悪い。一般人からすればこの空間の冷たさと緊張で身体を壊すレベルである。


「そうか。さて、今回それは本題ではない。妖どもが集まっている。どうやらあれが目当てらしいな」


「気づかれたと?それは厄介なんてレベルじゃないですね」


「ああ、場合によっては上位クラスも来るだろうしなにより思い出されるのも避けたいところだ。それと報告にあったキアラだが」


「彼女やっぱり陽ですか?」


「そうだ。ただし任務があってこちらに来たわけではなく偶然らしい」


「それは本当ですか?にわかには信じられませんが?」


「だが彼女がこの町に来たのは間違いなく偶然だ。いやかかわりがあるといえばあるか。この前の協定を結ぶことになったあの事件の際の被害者の後任としてこの周辺の担当になったらしい」


「それはまた」


ついてない。よりにもよってこの町に来てしまうとは。


「それに彼女があれに気付いているとは思えんな。彼女は結界型らしい」


「探知は苦手のようですね。俺にも気づいていませんし。結界型としての実力は?」


「少なくとも前任よりはあるとみていいだろう」


つまり最悪はキアラと闘うことも視野に入れるべきか。本当に厄介ごとが集まる。というか、本郷のことを知って近づいたわけじゃないとするとある意味そっちのが面倒か?ハーレムとかやめてくれよ。と、心の中では愚痴っているが表情は一切変えていない。というより会話が始まって西条も、男も、少女もまったく表情を変えず少女に至っては無言で立っているため非常に息苦しい空間が形成されている。


「それで今回俺がすべきなのは?」


「妖退治だ。簡単だろ?我らはそのためにいるのだから。それと」


ここで男はいったん区切り少女示す。


「それをあれの護衛として付けろ。どうせもう隠し通せまい。ならばそばに一人置いたほうがよいだろ?」


なに!?いや、言っていることはわかる。しかし…。


西条は表情に出さずに悩む。しかしどうせ断りようもないしこちらに決定権がないことを思い出し聞くべきことを聞く方針に変える。


「彼女の実力は?」


「それは中に朱雀を入れてある。少なくとも今の貴様よりはスペック上は勝るはずだ。ただし戦闘訓練はある程度受けているもののまだ学習の余地があるうえ、護衛訓練は皆無だ。うまくつかえ」


(ああ、そうか。そうだな。あいつが彼女を人として見ていないのは眼で分かっていた。彼女は実験成功例というわけか。体内に妖を入れ戦力向上を図る。くそったれの実験の。)


西条は静かに怒る。しかしその実験を否定する気もまた起きない。少なくとも戦力向上という点では効果的であるから。


「では戦闘型ということですね?属性は火のみですか?」


「ああその通りだ。そしてそれはこれより貴様のものだ。命令したことには必ず従う。それと、場合によってキアラとの交渉も任せる。以上だ。その他は追って連絡する」


男はそういって画面から消える。残された西条と一人の少女はしばらく無言であったがやがて西条が口を開く。


「名前は?」


「……火鳥朱雀ひとりすざく


「今回お前に課せられた任務は?」


「西条麒麟の指示に従うこと。本郷を守ること」


「そうか。なにか説明はいるか?」


「いい。基本は全部知ってる」


(取りつく島もない。完全に任務しか興味がなさそうだ。それとも俺のコミュニケーション能力が乏しいのか?)


西条がそんなことを考えたその瞬間不気味な感覚が襲う。


「これは……妖か!?早すぎるだろ。火鳥、紅公園に行くぞ。場所は知ってるな?」


「知ってる」


その言葉を聞きビルを飛び出てくれない公園へ向かう。


「くそ。せめて俺がいるときに起こせや!!」


そう吐き捨てながらじめじめした暑い中、火鳥とともに走り公園につく。


「こいつは……」


そこには本郷たちを囲うように水でできた壁があった。

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