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満州の曠野に真っ赤な夕陽が沈んで馬賊三人娘モーゼル撃ちまくって無双するのよーッ!! 上

今回はシミュレーション・東洋版西部劇でございますw

まー今どき馬賊といいましても、ピンと来る人自体少なくなったと思いますし、旧満州のロマンとやらも、現黒龍江省の素寒貧なイメージの下に埋もれてしまった感がありますが、それはそれとして。


参考資料

「馬賊」渡辺龍策 中公新書

「馬賊戦記」朽木寒三 星雲社

「頭弾」樋口明雄 講談社 他


 曠野の遥か彼方、地平線の向こうに、血のように赤い巨大な太陽が沈んで行く。

 おゝ。あれこそまさしく夢にまで見た満州の夕陽。

 馬上の私は陶然として、その荘厳かつ野性味溢れる光景に見入っていた。それが全くの作りもの──本物の映像を素材にしてはいるけれど──と頭で判っていながらも。

 「ちょっと美貴ィ。うっとりするのはいーんだけどさァ。あっちの林、やばくね? 今にもタマ、飛んで来そうじゃん」

 雰囲気を一気にぶち壊す声が背後から聞こえた。ったくおちゃびーときたらもうっ。私は振り向き、語気鋭く叫んだ。

 「ここでは正しく包頭(パオトウ)と呼びな! この私が警戒を怠っていたと思うのかよッ!」

 私は言い放ちざま右腰のモーゼルを引き抜くと、約百メートル左の雑木林めがけて無造作に一発放った。途端に、木の上からこちらを狙っていた敵匪賊の狙撃手スナイパー──あれはおそらくテルシテス、内務班(ケルベロス)雑魚十三人衆の一人で、小銃は関東軍横流しの三八式歩兵銃──が、「ぎゃああああっ」と絶叫しながら銃を放り出し、地面に転がり落ちるのが見えた。

 私の後に続いていたおちゃびーことB・B佳代、それに由美めっちはさすがに言葉を失い、息を呑んだ。

 「クラスAに出て来るには、まだ早いわ」モーゼルの銃口からたなびく硝煙をフッと吹いて、私はつぶやく。「レベルを上げて、出直す事ね」

 私の前を進む馬上の初老男性エペイオス──ここでは私達の案内役──が振り向いて、ニヤリと笑い、言った。

 「さすがだ、包頭」

 後ろの二人は顔を見合わせ、肩をすくめているのが見なくても判る。ふん。やっとれ。

 

 てな訳でありまして、今回の語り手はわたくしカサンドラ美貴こと四条畷(しじょうなわて)美貴が務めさせて頂きます。

 まあ前(シリーズ)では申し訳程度に一回きりだったけど、本Sでは持ち回り交代制、つまり三回に一回は私の番だから、もう張り切っちゃうもんね。しかも一話完結ながら今回は上中下連続篇なんで燃えるわーっ。

 それと。前回佳代っちおちゃびーの奴が、私が句読点無しでぺらぺらしゃべり出したら読み飛ばしていいなんてほざいてたけど、もちろんそんな事したら当の私が許さない。腰のモーゼルが火を噴くぜっ。いやそれは冗談として。

 今回はウチらいや私達が、(不本意ながら)所属してるよろずアサシン組織SCSスパルタ・クリーニングサービスのトレーニング・ルーム地下に設けられている、バーチャル・システムのお話なのね。

 ここでウチらはあらゆるシチュエーションを体験し、武器その他の使用法、戦闘技術を叩き込まれ、実戦の場に送り込まれる訳だけど、その過程で多くの脱落者が発生し、アポロン病院の入院患者と成り果てているのは、前Sでも触れた通り。

 本Sにおいては前回のように、ウチらデビュー戦直後の実戦と、今回みたくバーチャル・トレーニングの段階で、既に伝説的存在(レジェンド)となりつつあった、ウチらの姿を描いていく予定。

 という事で、どうかよろしくっ。


 さてSCSのバーチャル・システムについて前Sでは名称だけだったので、今回しっかり説明させて頂きます。ちゃんと句読点入れるから、読んで下さいっ。

 イメージ的に近いのは、御存知「ス☓ート☓ック」シリーズに出て来る、いわゆる「ホロデッキ」。

 あれは二十三世紀のテクノロジーで、現実とほとんど変わりの無い、つまりシミュレーテッド・リアリティの世界を、一辺十数メートルの室内空間に作り出す架空の装置の事。

 SCSのシステムはさすがにそこまでは進んでいない。

 いわゆる「バーチャル・リアリティ」の延長線なのだけど、その現実感リアリティは相当なものだ。

 (ちなみに私の好きなあの監督の映画に出て来る「全身体感型VRオンラインゲーム」つまり歯医者の診察椅子みたいなのにでっかいヘッドギアかぶって横たわり(ショックによる失禁その他に備えて下着姿にならなきゃいけない)、仮想空間の中に意識だけ飛ばして戦闘ゲームするというのとは全く違う。それじゃイメージ・トレーニングにはなるかもしれないけど、アサシンの実戦訓練にはならないもんね)

 SCSのバーチャル・システムは「レア」と呼ばれるAIによって管理制御されている。「レア」については後述。ウチらは「レア」の用意したコスチュームを身に着け、決められた武器弾薬その他を手にし、コードレスのゴーグルを掛けてから、バーチャル・ルーム入りする。その時既に室内は広大な満州の曠野になっていたり、中近東や東南アジアの戦場、あるいは迷路のようなスラムのアパートになっていたりする訳。

 ゴーグルは初期のそれのような大型の物ではなく、競泳選手の水中メガネに形状は似ていて、ルーム入りした時点でお互い見えなくなる仕掛け。ルーム内にいる間は(触らない限り)完全に着けているのを忘れていられる。

 このゴーグルとコスチューム内の張り巡らされた「配線」・センサーが中心となって、ウチらに仮想空間の現実感を与える事になる。それはもう、これでもかってくらいにね。

 「ホロデッキ」と同様なのは、室内に投影される極めてリアルなホログラム、立体映像だ。だけど重力子(フォースビーム)による映像の実体感と、ホロデッキマターのデッキ内有効物質使用というのは、いくら何でもまだ無理。

 二十一世紀初頭の私達は「原始的」なトレッドミル、つまり巨大で複雑かつ自由自在に変化するウォーキングマシンの上をバタバタと駆け回り、リアルに作られたハリボテの車やバイク(今回は馬だ)に飛び乗ってカーチェイスを演じ、ひたすらガチンコするのである。

 かてて加えて、「レア」によって完璧にコントロールされる各シチュエーションは、嗅覚的刺激も加えた空調、振動、リアルな音声、そしてホログラムの総合効果によって現実感をいや増す。

 そして決定的なのは、ウチらの肉体に直接与えられる刺激である。

 つまり斬られたり刺されたり撃たれたりあるいはぶつかったりした時の、極めてヴィヴィッドな激痛だ。

 これは前Sでも触れたけど電気ショックによるもので、急所に銃弾喰らった時など、現実に即失神、アウトである。

 視覚的にはホログラム投影により、撃たれたり斬られたりした方は、その箇所からド派手に血しぶき噴き上げて意識を失いぶっ倒れる。やった方としては本当に殺っちゃったようにしか見えない。さすがに初体験の時はドキドキした。って変な意味じゃないからねッ。これはウチら三人そろって同じ。でもそろってすぐに慣れた。ちなみにウチら三人今のところまだ一度も撃たれても斬られてもいない。逆はいくらでもあるけどね。

 んでもって、いよいよ得物もとい武器の話。

 まず銃器。これらはいずれもモデルガンとしてほぼ完璧な造り。弾丸は当然空砲だけど、ぶっ放した時の銃声も反動も忠実に再現されている(「レア」の感覚操作がよりリアルに感じさせる)。発射時に銃口から放たれたレーザービームが命中した箇所に、そのリアクションが正確に投影される仕組み。だから外れて地面に当たれば土埃が上がり、窓ガラスに当たれば割れて砕け、相手に命中すれば血しぶきが──という訳。

 そんでもって今回は当然私の可愛くて愛しくて大好きなモーちゃんが──あ、二人が睨んでるからやめとくね。

 それから刀。これはちょっと違う。日本刀からサーベル、青龍刀、ナイフ等々、みんな見た目は本物そっくりなんだけど、刃にはさわれない。ビリッと来る。実体は柄だけで、刃の部分はホログラムなのよね。しかも通電してる。まー要するに殺傷能力の無いライトセーバーみたいな物だけど、これで斬ると先に触れた通りズバッ、ブシューッ、バタッ、となる次第。刀同士で打ち合うと、ちゃんと重い物質感を伴って、手応えが柄から伝わる。めっちの投げナイフも同様。当たれば刺さったように見えるけど、みんなホログラム。実際の柄は下に落ちてる。視覚的には消される。だけど痛みは本物。超人ナイフ使いめっちのそれを喉あたりに喰らった日にゃ、「即死」はしないまでもたちまち七転八倒無力化一直線、リアルに戻っても数日は飯が喉を通らない始末。かわいそ。

 そういう訳で、これはとことんアサシンの実戦訓練のリアリティを追究したシステムなのよね。

 それでまー、どうして現在の日本のシチュエーションじゃなくて、旧満州とかアメリカ西部開拓地なんかが舞台になるかというと、現実的なのはそれはそれでやってる訳で、如何なる状況の変化にも対応できるよう、あらゆるパターンの修練が必要だという、一応もっともらしい理由が第一というか建前で、通り一遍の現実的なものだけではテンションが上がらないとか、どうせいろいろできるんならアレやりたいコレやりたいという希望が殺到したとか、俺はコレが見たいなんてあの古参ヲタ親父(ゼウス)が言い出したとか、つまるところそういう事。

 今回のこれはモーゼル使いの私に何かあって(死ぬかそれに近い有様って訳)、我が相棒達がモーゼルで戦わなくちゃいけなくなるような事態に備え、その扱い方に習熟しておこうというのが主旨。そんならシューティング・ルームでやりゃいいじゃんなんてツッコミはやめてよね。ま、おんなじように、私が佳代っちの日本刀(ライラプスはモーちゃんには及ばないけど私にとっても可愛いくらいに扱えてる)、由美めっちのナイフの使い方を学ぶシチュエーションもちゃんとあって、そのへんはお互い様。

 それで、シミュレーションにはモチベーションを高める目的で、いわゆるゲーム的要素も組み込まれている。だけど基本ルールは至ってシンプル。殺るか殺られるか。このふたつ。スキル獲得が数値化されてレベルアップするとか、経験値をもらったりするとか、殺られてから「復活」するような事は一切無し。そりゃそうよね。ゲームじゃない、あくまでアサシン訓練用シミュレーションなんだもの。そこんとこ忘れるとえらい目に遭わされる。

 このシチュエーションの場合、ウチら三人娘は案内役のエペイオス(ウチらはじいじと呼んでる)に導かれ、目的地である敵匪賊の拠点に向かい、そこでその頭目つまりラスボスをやっつければオーケー、つまり某美少女戦車アニメの設定からすれば、フラッグ戦よね。一方、相手はウチら四人を全員倒せば勝利、つまり殲滅戦。これって一見ウチらが有利に見えるけど、数的には十四(さっき私が一人やっつけたから十三ね)対四であっちが圧倒的、しかもラスボスが先頭切って向かって来るはず無いから、こっちも実質殲滅戦なの。不公平もいいとこなの。それで「レア」に文句言うと、

 『何言ってんの。あんたらがそんだけ強いからじゃん』

 だそうです。

 ま、いっか(笑)。

 てな訳で、一応今回はここまで。中篇に続くッ。



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