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ʏ( 六 )ʏ 運命かも

 「ちょっと人の家の中にもぐりこんでみよう!」


 せっかくおとなに気づかれない体になっているし。好き放題あれこれしよう! もちろんわたしは別に何かをぬすむとか悪いことをするつもりはないよ。ただ他の家がどんな生活をしているかちょっとのぞいてみたいだけ。


 「この家にしよう」


 わたしがちょうど窓が開いている2階建ての2階のへやに飛びこんでみたら……。


 「うそ……。もしかして、マユユキくん?」


 中に入ったらここは寝室らしい。そしてベッドの上に寝ている男の子がいる。わたしの知っている子だ。彼は冬夢(ふゆゆめ)真由幸(まゆゆき)くん、わたしのクラスメイトで、ある程度仲良くしている。


 そして実はマユユキくんは……わたしの初恋でもある。なぜかというと、そうね……。優しくてカッコよくていつも頼りになっておひとよしで、わたしのことを助けたこともあるし……。だからわたしはマユユキくんのことが好き。


 まだ彼に気持ちを伝えていないけど、いま学校で会って、おたがい下の名前で呼び合う仲で、ときどき一緒に遊んでいるだけでも……。本当にそれだけでいいのか? よくわからない……。


 でもわたしはマユユキくんの家に来たことない。そこまでの仲ではないし。そもそもどこなのかもわからなかった。いまここに来たのもただのぐうぜんで……。いや、これは本当にただのぐうぜんなのか? もしかして運命……!? でもどうせただの夢だろうし。でもきっといい夢だね。


 せっかくのいい夢だからこの状況をできるだけたんのうしよう。


 「寝顔もすてきね……」


 わたしは聞こえられないような小さな声でつぶやいた。


 「すきあり……なんちゃって」


 指でマユユキくんのほっぺたを軽くつついてみた。暖かくてやわらかいね。


 「失礼しますね」


 わたしはマユユキくんの胸のところに着地した。普段わたしより少し背が低いマユユキくんだけど、いまわたしが上に乗っても平気くらい大きい。


 「これはマユユキくんの心臓のこどう?」


 足からねまきごしでゆらぎを感じている。いま立っている地面は上がったり下がったりしている。ここでマユユキくんが呼吸していることをはっきりと実感するね。呼吸の音もはっきりとわたしの耳に入っている。


 「え?」

 「……っ!」


 突然マユユキの頭のほうから大きな声が……。そこに視線を向いたらいつのまにか目が覚めたマユユキくんがわたしを見つめている。


 そしてマユユキが体を起こしたせいか、地面がななめになって立ちにくくなったからわたしは飛び上がってそこからはなれていった。


 「お、おはよう。おじゃましてごめん。起こしてしまったね」


 ある程度のきょりまで飛んだらわたしはふり向いてまずマユユキくんに謝った。マユユキくんが起きたのはわたしのせいかもしれないから。


 「アキユイちゃん?」


 彼はわたしの名前を呼んだ。どうやら普通にわたしのことを認識できているみたい。


 「うん、わたしだよ」

 「なんでここに? いや、それよりなんでこんなにちっちゃく……? やっぱりぼくは寝ぼけているのか?」

 「それは違うと思う」


 だってこれはわたしの夢(?)だから。寝ぼけるというならそれはわたしのほうかもしれない?


 「いまわたしは本当にちっちゃいの。なぜかわからないけど、朝起きたらこんな姿になっていたの。ハネも生えて飛べるよ。ほら。すごいでしょう」


 そう言ってわたしは飛び回りながらマユユキくんにこの姿を見せびらかした。


 「すごい。まるで妖精みたい」

 「うん、マユユキくんもそう思うよね。その通り、いまわたしは妖精なの!」

 「そう……」


 マユユキくんはまだあまり信じられないような顔をしている。


 「でもアキユイちゃん、ぼくが寝ているあいだに何をしたの?」

 「え? あ、それは……。べ、別に何も……」


 本当に何もしていないよ? ただほっぺたをつついたり、寝顔をのぞいたり、こどうと呼吸の声をたんのうしたり……。それだけだし。


 「本当に?」

 「わたしが何をしたと言いたいの!?」

 「あ、いや。べ、別に……。ただ寝顔を見られるのはなんか……はずかしい。特に女の子に……」


 いつのまにかマユユキくんの顔は真っ赤になってまごまごしている。いまのこんなしぐさはなんか可愛く見える。


 「でもなんでぼくのところに来たの?」

 「あ……それは……。ただのぐうぜんだよ。町を飛び回ってたまに寄ってきた家はマユユキくんの家なだけで」

 「本当に?」

 「うん、本当だよ。そもそもわたしはマユユキくんの家知らなかったし」


 たしかにマユユキくんのことが好きで実はいつか家に来てみたいとは思っているけど、今回は本当にただのぐうぜんだし。


 「そうだよね……。別にぼくに会いに来たわけじゃないんだ……」


 マユユキくんはなぜかがっかりしたような顔をしてため息して小さい声でつぶやいた。

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