1.いらっしゃいませ、ぺペロンへようこそ。
「いらっしゃいませー」
「注文入りまーす!」
「ありがとうございました!」
午後6:50.
一般にレストランと言われる店は、多忙を極める。
「諌早くん!次、こっちお願いね!」
「は、はいっ」
「諌早ぁ、まだ終わってないのか!?」
「はいっ、もうすぐ…です!」
そしてこの時間、最も多く名前を呼ばれる男がいる。
その名も、諌早祐樹。
午後10:40.
閉店後、店内には疲労の空気で満ちていた。
「いやぁ、お疲れ!今日も何とかこなせたな。明日もがんばろう!」
「お疲れ様でした!」
チーフの言葉でみんなは一斉に帰っていく。
仕込みの人たちを除いては…。
「はぁ…」
「ため息つかないで下さいよ、菅野さん」
「諌早、お前手際悪すぎる。全然進んでない」
言いながら頭をはたかれている。菅野さんは本当に手が早い。
「美空っ!帰らないの?」
「あ、ごめん。帰る、帰る!」
私は木下美空。
パスタハウス【ぺペロン】でウエイターとして働いている。
おわかりかと思うが、オーナーはぺペロンチーノが大好きだ。
「また、やられてたね」
「本当。毎日毎日飽きないもんだね」
「ま、そんな所が可愛いとも言えるけどね」
「え…マジで言ってんの、穂波?」
ぺペロンからの帰り道、同僚の穂波が突然言いだした。
「あれ、知らないの美空。諌早って、“アルデンテボーイ”で可愛がられてるんだよ?」
「何、アルデンテボーイって?」
っていうか、イタリア語と英語を混ぜていいのだろうか?
「美空はアルデンテくらい知ってるでしょ」
「麺の中心に少し芯が残るゆで方、だよね?」
ウエイターといっても、パスタハウスに勤めてますから。
「そっ。だから“煮え切らない男”、アルデンテボーイって訳」
「なるほど…」
くだらないけど、うまいって思ってしまう自分が虚しい。
「アルデンテボーイ、か」
家に帰ってソファに沈みこんでから呟いた。
一人暮らしの狭い部屋にその声は吸い込まれる。
確かに、ぺペロンの中じゃ一番年下だし、仕方ないと言えばそうか。私と穂波も、あの子が入るまで一番年下だったからわかる気がするな。
シャワーを浴びてすぐ布団に入った。あーあ、今日も疲れた。
少しずつですが、マメに更新していきたいと思っています。ラブコメに慣れていませんが、お付き合いください。




