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落雷という復活

「この壁。ここから手を離さないでください。ここなら水位が上がっても水が押し上げてくれますから」


 エースケは女性二人を階段前に誘導していた。

 鳩尾あたりだった水位は胸にまで迫り、浸水はさらに加速している。ロンを助けに行けば二人は短時間取り残されることになる。視力を失った二人をこの状況で取り残すのは万が一に対応できない。

 万が一地下一階が水没すれば、万が一戦士が降りてきたら。しかし考えていても何も変わらない。

 今は逃げ道を確保することが最優先。

 カブトたちも気になりすぎるがまずは目の前の人々を助けなければいけない。


「何かあればすぐに叫んでください」


 地上に行くならいち早くロンを助ければいいだけだ。

 即断即決。

 エースケは全速力でロンの元へ急いだ。



 *******************



 エースケと別れたカブトたちは順調に廊下を進んでいた。

 エウディたちもDr.が倒れたことで恐怖は少し晴れて、水の抵抗に疲れながらも進めている。

 カブトが全員の目であり、唯一の戦力。誰が来ようと戦う準備はできていた。


「…カブト」


 背中からスズの怯えた声が聞こえる。


「大丈夫。Dr.は兄ちゃんが倒してくれたんだ」


「…でも」


「心配すんな。Dr.じゃないならおれが倒せる」


 カブトの目には覚悟が宿っていた。

 倒せる。彼にはそれだけの自信があるのだ。

 エースケが女性二人の牢屋に到着した頃にはカブトたちは階段の前にいた。


「みんな」


 階段から流れ落ちてくる雨水は激流というほどではない。

 足元さえ気をつければエウディたちでも上れそうだった。


「ゆっくりでいい。地上に出るぞ」


 全員が夢見た脱出。地上は目と鼻の先に迫った。


「わたしたちだけでいくの」


 震えながらアンニが言った。

 エウディも予想外だったのだろう、アンニに賛同するように頷いている。

 

「地下二階が水没したらここも一瞬で沈む。みんなに泳ぐ体力は残ってないし、今すぐに出るべきだよ」


 カブトは冷静に伝えた。

 事実、地下二階はこの後すぐに水没する。泳ぐ力どころか浮く力すら残っていない子供たちにとってこれ以上水深が深くなるのはあまりに危険だった。


「おれがみんなを護る。それに、おれがあいつらにとって特別なこと知ってるだろ?あいつらはおれを殺せない。おれが死なない限りみんなも傷つかない」


 エースケの知らないカブトの自信。そこに秘められた事実をエウディたちは知っているが、危険な賭けであることは変わらない。

 ここで


「わたしは行きたい」


 フォグナトゥスがカブトに賛成した。


「こんなところ、早く出たい」

 

「でも、上にはこわい人たちが…」


 手を繋ぐヤノルニスは不安を拭いきれていなかった。戦力はカブトだけ、カブト一人で五人を護ることができるか。

 だがカブトには自信があった。

 

「地下がこんなことになってるのに降りてきたのがDr.だけなんて、上でなにかあったんだよ」


 フォグナトゥスの言うことにカブトは「おれもそう思う」と返した。

 カブトにとって障壁だったのはDr.で、戦士たちは特に危険視していない。故に戦士がいないこの状況を好奇と捉えていた。

 

「行こう。もうDr.はいないんだ。閉じ込められる理由なんて何一つ残ってない」


 地下二階から地下一階へはエースケに背中を押された。

 地下一階から地上へは子供たちが自分の意思で進んでいく。

 カブトは右手を見た。

 手のひらの中央に開いた小さな穴から黒い種が現れ、発芽し茎が伸び、葉が生える。

 カブトは成長途中で茎を千切り、葉をとって矢印を作った。


「おれたちはもう、自由なんだ」


 子供たちは自由を渇望していた。日々、人が殺されていく環境の中で、それでも諦めずに生きた。そしてついにエースケが現れ、救われた。

 Dr.は倒れ、目は見えないが、それでも生きていると実感している。

 自由。 カブトの言葉はエウディやアンニ、ヤノルニスの不安に問いかけるようだった。

 恐怖を乗り越えて、自由を掴み取れ。


「行こう、アンニ」


 エウディはエースケが言っていたことを真似るように、握った手からパワーを送った。


「ヤノルニス。わたしがあなたを支えるから、あなたはわたしを支えて」


 フォグナトゥスはヤノルニスを抱きしめた。

 それぞれにそれぞれの強さと弱さがあり、支えかたがある。

 恐怖も不安もある。それでも立ち止まるわけにはいかない。

 アンニとヤノルニスは小さく頷いた。


「…スズ。…帰ろう」


「…うん。カブトといっしょなら、もう、こわくない」


 子供たちが階段を上っていく。

 自由のため、生きるために、彼らは水流に抗っていく。


「……おや、一番乗りはあなたたちですか」


 地下一階への階段は研究所の正面口入ってすぐ左の広い空間にある。

 その空間の中央に立っていたベルーサの声にエウディたちは驚き、止まった。


「そこで立ち止まっては危険でしょう。どうぞこちらまで」


 長身の男。カブトはこの男を見たことがあった。

 一歩前に出ると、


「エウディ、真っ直ぐ歩けば壁がある。そこまで歩いてみんなで固まってくれ」


 まずは壁になる。エウディたちに危険が及ぶ可能性は全て潰していく。

 長身でありながら鞘の先端が地面に着くか着かないかの長剣をベルーサは携えている。間合いの広さは凄まじい。エウディたちが部屋の角に集まっても、数歩踏み込まれれば間合に入ってしまう。


「貴方は確か…」


「それ以上喋るな」


 左手を前に、手の平を向けたカブトにベルーサは少し微笑んだ。


「貴方の能力は知っていますよ」


「喋るなと言ったんだ」


 子供でありながらその声は威圧的で凄みがあった。

 エースケの知らないカブトの一面。エウディたちもこんなカブトの声は聞いたことないと驚いている。

 ベルーサは微笑むことをやめて、ただじっとカブトを見ている。左手の平中央にある穴。Dr.から能力は聞いていたが、それがどのようにして戦闘に活かされるのかは不明だった。

 カブトの目論見はただ一つ。エースケを待つこと。地下とは違い、足首ほどの水深のため行動が制限されることもない。


「お?やぁっとクソ虫どもが上がってきたか」


 後ろから聞こえたその声にベルーサは心底ため息を吐きたくなった。

 あまりに最悪のタイミング。

 濡れるのが嫌なら自室にいてくださいと言ったのは、このような事態が発生しないためだったというのに。


「動くな!」


 ベルーサの後ろから現れたモナにカブトは強く叫んだ。

 しかしそれで止まるはずもなく、むしろモナは一気に不機嫌な表情となって、


「てめぇ、モナに指図なんてガキだろうと殺すぞ。あ?」


 偉そうに殺意を剥き出しながらモナはカブトを睨みつけた。

 自分より歳下に見えるモナの幼さにカブトは内心驚いていた。声が時々地下に響いて、罵詈雑言の嵐を起こしていた女がまさかこんなにも幼いとは。

 しかし驚いたのも束の間、カブトは左手の平をモナへ向ける。


「モナ様」


 前へ出たモナに声をかけても、モナはそれを無視した。


「おいてめぇ、何の真似だゴラ」


 そしてモナはミスを犯した。

 位置。本人が気づかず、ベルーサとカブトが即座に気づいた状況を一変させる位置にモナは立っていた。

 ベルーサが驚異的な反射速度で踏み込む、しかしそれと同時にモナが胸を押されたように体を曲げていた。


「ッ!」


 ベルーサが抜剣したが既にカブトの放った種はモナの胸へ着弾していた。

 

「動くな!」


 鋒はあと一歩のところまで迫ったが、カブトの言葉にベルーサは動きを止めた。

 尻もちをついたモナは胸を押さえながら怒り全開で


「殺せ!」


 そう叫んだがベルーサは動かなかった。

 

「種を植えた。いつでも殺せる」


 服を貫通して胸元に撃ち込まれた謎の種。ベルーサはそういうことかと、カブトの能力を確信した。


「ベルーサ!」


「モナ様。決して動かないでください。下手に動けば、本当に死にます」

 

 真剣な表情のベルーサに言われればさすがのモナも早々に動いたりしない。

 戦闘経験の差はこう言った場面で説得力を生む。


「…剣を向けた身で言うのも滑稽ですが、随分と物騒ですね」


「おれを殺しても自動で心臓に根を張る。そうなれば救う方法はない」


「…てめぇ」


「剣士、お前だけ下がれ」


 これがカブトの本性。エースケに見せていないカブト本来の気迫にベルーサは内心驚いていた。

 護る意思よりも殺意が先行している。子供なりの精神性もそうだが、カブトの目は殺害が状況を収束させる最速の手段だと理解していた。


「モナ様の命の保証は」


「俺たち全員の安全をもって約束される」


 カブトは左親指の先を噛み切ると、返した右腕の手首から下方向へ血でなぞり、右手の平の中央に血を押し付けた。


「指切りの誓いだ。『フタバの民』に嘘はない」


 久しく聞いたその名。十代弱の少年が血で誓いを立てる強烈な光景にモナを言葉を失っている。

 スズを背負っているというのに、あと一歩踏み込めば首を飛ばせるというのにベルーサはゆっくりと剣を収めた。


「ベル…てめぇ」


「モナ様いてこその、わたしの命ですから」


 ふっと微笑んだベルーサが背を向け、部屋から出ていく。離れていくのは水音が証拠となって、足音はやがて聞こえなくなった。

 ベルーサは研究所からすら出ると雨に打たれながら


「少し弱まりましたか」


 と呟き、石壁を見た。

 強烈な豪雨が弱まったとて土砂降りと大差ないが、ベルーサは濡れることお構いなしで再び剣を抜いた。

 支えの鍔が無く、長い刃の付け根から深青色の輪が四つ埋め込まれている両刃の直剣。

 名を水利剣。

 ベルーサは鋒を石壁に向けた。石壁の向こうにはカブトたちがいる。


「水門解放」


 四つの輪が発光し、鋒にかけて螺旋状の水流が放たれる。

 螺旋状の水流は鋒に球状となって集まり、小さな水の塊となった。 

 水の砲弾を作り出したベルーサの照準はカブトたちにある。

 もちろん石壁の向こうにいるカブトたちは気づいていないが、モナはベルーサが何かしてくるだろうと反撃の準備はできていた。

 

「!」


 瞬間、攻撃意思に割り込むように落ちた一発の閃光の槍が轟音ともにベルーサを照らした。

 臓器を揺らす残響。どこかで木がへし折れる音がした。

 ベルーサは後方に意識を向けた。目線を横に、雷鳴は彼を思い出させる。

 瞬時の方向転換。砲撃の照準は真後ろへ。直径三十センチほどの水球は螺旋状の水流が集まることで急速に巨大化し、約三倍の大きさに膨張した。

 刃は地面と並行、重力を無視して水球は鋒に固定される。ベルーサは突きの構えをとり腕を引き、鋒からは螺旋状の水流が伸びて水球が空中に浮いている。


「ーー砲水!!」


 水球に強烈な突きと螺旋状の水流がぶつかり、ベルーサという大砲から水球という砲弾が発射される。

 水球は石壁ではなく森へ。視界にはいないが確かにいるそれに向けて、雨粒を砕きながら水球は猛スピードで飛んでいった。

 


 *******************

 


 一発の落雷。

 ロキの能力人格であるローゲはこれをラッキーと言った。

 アルーゼと視力が回復したメイはテントの中から、雨に打たれるローゲを見ている。


「おねぇちゃん。 あの人、なにしてるの?」


「さぁ。…男ってのはふと雨に打たれたくなる日があるって母さんが言ってたけど、そんな日なんだろ」


「ちっげぇよ! それにメイちゃん!あの人じゃなくてローゲお兄ちゃん! もしくはロキおじさんだからね!」

 

 ローゲがびしびしと指差すのをアルーゼは興味なさそうに見ている。


「んでよぉ、お前何してんだよ」


「はぁ。お嬢さんよぉ、見たでしょうよあの雷を」


「おん」


「まさに恵みの雷。恵まれているのなら享受するのが礼儀ってもんだろ?」


 ローゲは剣を抜いた。


「アルーゼ。吸収の水晶と雷の水晶の違いが分かるか?」


「違い?」


「操れるか、操れないかだ。吸収の水晶は吸い取って放出するだけだが、雷の水晶は雷をものにできる」


 突然始まった水晶セミナーにアルーゼは「ふーん」と頬杖をついている。

 

「今後、そういった水晶を見たら注意しろよ。結構厄介だからな」


 雷晶の剣グラントール。恐竜化という爪と牙を失ったロキを支える愛剣をローゲは真っ直ぐ天に向けた。


「次会う時まで死なぬなよ、アルーゼ」


 ローゲは笑った。

 その言い方と笑顔にアルーゼは瞬間的に理解した。

 ロキの命を繋ぐためにローゲは出てくる。当然、命が繋がればローゲは再びロキの中に戻るということだ。

 彼の肉体にもう致命傷はない。

 次会う時まで。その言葉にアルーゼは拳を突き出した。


「おうよ!また会おうぜ、ローゲ!」


 グラントールに天から落ちた閃光が突き刺さる。

 その眩さにメイは目を手で押さえ、アルーゼがメイの耳を塞いだ。

 森に轟音が鳴り響く。

 草木が焼け焦げた臭いがして、アルーゼはゆっくりと目を開けた。目も耳も塞げなかったディモンがひっくり返って動けなくなっているが、ローゲは閃光と轟音のど真ん中にいたため、そっちのけでアルーゼはテントから飛び出した。


「ロキ!」


 重なる戦闘でエネルギーを使い果たしていた雷の水晶に青白い光が灯っている。

 ーー雷刃。

 彼は曇天に走る稲妻のように、この窮地を切り裂くだろう。


「…初めてだな」


 低く落ち着いた声。睨まれているような鋭い目。そこには確かに、雷刃の姿があった。


「その名で呼ばれるのは」


 いつもはビリビリと呼んでいるが、突発的な状況によってはロキと呼んでしまう。無意識だったが、恥ずかしさはなかった。


「もっと喜んでいいんだぜ?」


 雷の水晶が輝くグラントールを鞘に収めると、ロキはほんの僅かに口角を上げた。


「今更だと思うがな。…悪くない」

 

「なーにが、悪くない、だよ。 死にかけてたくせにもういつも通りか」


「…手間をかけさせたな」


「手間ってほどでもねぇよ。メイもディモンも無事だしな」


 気絶する寸前に聞こえたアルーゼの叫び声を確かに覚えている。あの時感じたのはまごうことなき安堵だった。

 

「だが闘いきれなかったことは事実だ。俺の実力不足他ならない」


「堅いね〜。みんな無事なんだから笑ってりゃいいんだよ。…それに」


 アルーゼはテントを親指で指した。

 ちょこんと座っているメイと目が合う。

 

「!?」


「なははは!驚いてる驚いてる!やったなメイ!」


「…視力が回復したのか」


「突然で私もビビったけどな。ちゃんと見えてるってよ」


 ロキは足早にテントに駆け寄ると、メイの前で膝をついた。

 白く濁っていた瞳は黒色を取り戻している。

 メイは両手でロキの頬をそっと触れた。


「青色だね」


 髪の色、瞳の色。それが今のメイには見えている。

 暗闇から解放されたメイの表情は明るい。彼女に対してロキは喜びと同時に、視力が回復した理由を考えていた。

 騎士だけでなく医者としての一面も持つロキだが、回復早々にいつも通りの立ち振る舞いをしている。


「おいおい。もう考え事かよ」


 しかしほとんど答えは出ていた。

 元々あった点と点が繋がっていく感覚。職業病に相応しいロキの真面目さが早速発動した。


「アルーゼ。俺が入れ替わってる間、治療はしていないか」


「あぁ、メイは眠ってた…って、入れ替わってる感覚あんのかよ」


「感覚はない。約束を破った記憶がはっきりあるだけだ。…今はローゲのことは後回しでいい」


 ロキの能力人格ローゲ。入れ替わっている間の記憶はなく、ロキにあるのはローゲを呼んだ記憶だけだ。

 彼と入れ替わった証拠は全ての傷が治っていることで、それはかつてベロニカたちとの約束を破った証拠でもある。


「メイに使われた毒が分かった」


「まじか!」


「症状から予想はしていたが、メイに使われたものは間違いなく毒沼の森の毒だ」


「…毒沼の、森? なんか聞いたことあるな」


「ルゼアチノへのルート中にある危険地帯の一つだ。毒性の強い沼から放出されるガスで満ちた、冒険者おろか野生生物のほとんどが近づかない」


「あー、そういやエースケたちが通ったって言ってたな。…撮れ高がなくてがっかりしたみたいなことも言ってた気がする」


 かつてアルーゼがゼアルに連れ去られた時、救出の旅に出たエースケ一向に訪れた撮れ高チャンス。それが毒沼の森で、何か面白いことが、旅にスパイスが生まれるんじゃないかとビビりながらも期待して飛び込んだそこは、期待に反してただの森だった。


「ラプトル騎士団も森を通過したが、本来大量にあるはずの毒沼が全て森から消失していた。しかし我々もルゼアチノ到着が優先事項だったため、調査は後回しにしたんだ」


「消失って…。じゃあつまり…」


「Dr.シノルが過去にティルルでどんなことをしたのか覚えているか」


「毒をばら撒いて大勢の人を苦しめた」


「そう。その時に撒かれた毒の一つが毒沼の森のものだった」


「…まじか」


「症状は視力の著しい低下。しかし顕著な症状はそれだけで、そこから別名"盲目毒"と呼ばれている。そして盲目毒には生療草が有効だ」


「生療草…。だから治ったのか!」


 エースケからすれば周知の事実だが、アルーゼには大きな衝撃だった。

 メイが絶叫するほどのトラウマを与えた張本人。毒医者、Dr.シノル。

 過去の犯罪もさることながら、メイへの悪逆非道を許すわけにはいかない。

 

「あ!!」


 突然アルーゼが何かを思い出し、声を上げた。


「Dr.ってさっき締め落としたクソ戦士が言ってたぞ!本部に戻るとか迎えが遅れるとか色々話してた!」


「そんな重要な会話を忘れてたのか」


「思い出したんだからセーフだろ」


「だが間違いなく吉報だ。迎えが遅れるということはエースケを助ける余裕ができた」


「それにDr.が島にいるってことは、ぶちのめせるってこったな」


「あぁ。竜滅会幹部二名を制圧できるのはかなり大きな成果になる」


 アルーゼとロキの声だけでも安心感があった。頼りがいのある力強い説得力を持った声。ゆえに生きることを諦めたメイは賭けに出た。託すことで救ってくれるかもしれないと。

 そして視力が回復した今、彼らの表情を、姿を見れば、僅かだった希望がみるみる大きくなっていった。

 ジョーリア戦で絶望のどん底に落ちたが、希望の芽は再び根を張った。


「私は攻め時だと思うが、ロキ、お前はどうだ?」


「様子見は完了したのか」


「おうよ。クソ戦士も二十四人ぶっ倒しておいた。多分もう残ってねぇよ」


「それのどこが様子見なんだ!」


「約束通り正面突破はしなかったろ?残ってるとすりゃあピアスっ娘と黒髪長身とDr.だろうし、で、どうすんだ。行くのか、行かないのか」


 敵戦力、地形、状況の把握は敵地突撃前の基本準備だ。しかしアルーゼは敵戦力のほとんどを状況把握段階で削いだ。

 戦士の王の血を引く者だからこそ成せる技だが、無論馬鹿にはできない。事実、アルーゼの言う通り攻め時だった。

 エースケを人質に取られたが、ベルーサは転移者を利用する発言をしていたため、無闇に殺害することはないだろう。

 

「……」


 メイに目を向ける。視力は回復し、ある程度は動きやすくなった。

 傷は完治し、雷の水晶は光を取り戻した。

 アルーゼに目を向ける。

 ロキの答えは決まっていた。


「今すぐに制圧だ」


 吹いた追い風にアルーゼは笑った。

 指の関節を豪快に鳴らし、


「おう!」


 最終決戦を知らせる雷がカルデラへ落ちた。

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