2話
ダイエットを始めて2週間。雛乃に怒られて運動も始めて1週間。一旦-3.2kgまで減った体重は筋肉のおかげで-2.4kgに抑えられたけど見た目は前よりシュッとした。
始めに変わったのは首周りだった。見えるところから痩せたから雛乃に気づかれて、事情聴取を受け怒られ運動を進められ、現在に至る。怖かったです雛乃様、だけどおかげで健康的に痩せてます。ありがとうございます。
今となっては鍛え始めた足と二の腕が細くなってる気がしている。雛乃やふみちゃんに比べたらまだまだだけど、いつか2人みたいに短めのスカートを履いて、あの栗色のイケメンに「かわいいね」って…………
「あーっだめだめ、乃亜起きてー」
「あうっ」
「アイシャドウ乗せづらいでしょ、顔は真っ直ぐにしてて!」
「ごめんなさーい」
あぁ、そうでした。雛乃様にメイクしてもらってました。うっかり寝ちゃった。
私達は3人で久々のプリクラを取りに行く。少し傾いた太陽の光が差し込む放課後の教室、誰もいない中で3人で近くに座って、髪の毛を真っ直ぐにしたりクルクルにしたり、そしてメイクを楽しむ。これぞ女子高生の放課後。楽しすぎて寝ちゃったけど。
「寝不足なの?」
既に雛乃にメイクしてもらったふみちゃんが尋ねた。あなた可愛いわね。
「そうなんですよ、昨日は少し寝るのが遅くなっちゃった。昨日私が好きな恋愛リアリティーショーの第2弾の初放送だったんだよ。よかったぁあ」
「乃亜は恋愛の番組好きだよね。それどこでやってるの?」
「インターネットテレビなの!若者向けの番組いっぱいあるよー」
「そうなんだ!また今度見てみるかな。あ、そういえばその栗色のイケメンくんがどこの人なのかとか分かった?」
「んーそれがね……いつ外出てても会わないからわかんないんだよね。放課後同じ時間に帰ってるけどやっぱり見当たんなくてっさぁ」
「あらら…誰なんだろうねぇ」
うーん、と2人で肩を落としていたら廊下で男子の話し声がしてきた。あ。この声は。
予想通り凛太郎とその友達が現れた。
あ、こっち見た…。……凛太郎はなんて思うんだろう、いやもう私達は関係ないってのは分かってるけど、やっぱりお前はメイクしても変わんないじゃん、とか思うかな。あの温厚な凛太郎だけど、やっぱり凛太郎には憎まれててもしょうがないと思っている。私が話しかけなくなったけど、凛太郎もあの時から目を合わせないようになった。
「よし、OK!」
メイクが終わって、雛乃が鏡を見せてくれた。そこに写った私の顔はなんだかぱっと明るくなって華やかだった。案外マシな顔をしているじゃないか私!
「わーお。凄い。私ってメイクしたらこんな顔になるのかぁ」
「ふみも乃亜ももともとパーツがいいんだって何回私が言ったことか。乃亜は最近痩せたからシュッとしてなお可愛くなったよ」
「嬉しいこと言うね、雛乃ちゃん。メイクしてくれてありがとう!」
「ふふん、まあね。んじゃ出発しようか!」
ん?無い。スマホがない。あーーー。
「ふみちゃん雛乃、ごめん私のスマホ教室かも。先駐輪場行っててくれない?」
「あ、はーい」
「早くねー」
2人と別れて急いで教室に戻る。3人で楽しみにしてた放課後なのに待たせちゃって悪いなぁ。駆け足で廊下を進む。
教室の目の前まで来て、急に男子生徒の制服が見えた。ふわっと香る甘い匂い。
「うわっ!……ご、ごめんなさい……って、…え?」
目に映る光景が信じられないかった。綺麗な目が私を見つめる。
「あ、えっと、大丈夫ですか?」
綺麗な栗色の髪の毛。整った顔立ち。真っ白な肌。少し長かった髪が短くスッキリしている。髪型こそ違えどあの彼だった。ネクタイはネイビー。同じ学年だ。同じ学校同じ学年だったんだ…。
「大、丈夫です。あの、すみません急に角飛び出しちゃって…」
「ん、俺怪我してないし大丈夫ですけど、危ないんで気をつけてくださいね」
曲がったネクタイを直して、少し微笑んだ。さすがに私の事気づくわけないよね。私、あなたに見てほしくて痩せたんです。可愛いって言ってくれたらどんなに幸せだろうって思ってて…。
「はい、すみません…」
「……えっと、あの、前に会ったことあります?」
え……覚えてくれてた…?
「あ、はい、前にぼーっとして歩いてたら、その、轢かれそうになるのを助けて貰って…」
「あ、やっぱり。そうですよね、ぶつかる瞬間に思ったんですよ。同じ学年だったんですね。タメでいいですか?」
にっこり笑う彼は以外にも少し幼くて、可愛かった。話を続けよう、私は前より痩せたし今は雛乃のメイクもある。鏡で見たんだ、前よりマシだ。頑張れ私。
「あ、う、うん。えっと、私も今びっくりして!あの、髪の毛切りまし…切ったよね、すっきりしてるから、あれ?って、思ってて…」
「あ、そっか。あれは髪切る前だった。そういえばこんな時間に1人で走ってどうしたの?」
あっ!ふみちゃん雛乃を待たせてるんだった!
「あ、スマホを教室に忘れてて、今友達待たせてるから走ってたんだ!」
「あぁ、じゃあ急がなきゃだね。文系?」
「うんそうなの。えっと…」
「あ、俺は志恩。理系だからきっとお互いあんまり見た事ないんだね」
「理系なんだ!きっとそうだね」
「あ、急がなきゃなんだよね。それじゃ」
「あ、うん、それじゃあ」
志恩くんは廊下を理系棟の方に歩き始めた。話しやすい人だ…。
「あ、きみ名前なんての?」
振り向いて志恩くんが尋ねた。
「えっ、の、乃亜!」
「乃亜ちゃんか。そかそか」
再び歩き始めてしまった。あの一瞬、助けてくれたことで私の事覚えてるなんて信じられない。同じ学校同じ学年。なんだか全部ウソみたいだった。




